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誤振込に関連した民法判例

緊急アップ=誤振込に関連した民法判例
先に、誤振込に関する刑法判例をアップしたが、その続きで民法判例を載せます。
最判平成20年10月10日
【キーワード】
 東京都多摩地方で起きた事案。銀行通帳が盗まれたら、大変。でも、盗難通帳による振込金を受取人が払戻請求しても権利の濫用にならないとされた事案
(最高裁判旨ポイント)
1、誤振込の払戻しを受けることが金員を不正に取得するための行為であって、詐欺罪等の犯行の一環を成す場合であるなど、これを認めることが著しく正義に反するような特段の事情があるとき→権利の濫用にあたる。
2、受取人が振込依頼人に対して不当利得返還義務を負担しているというだけのとき→濫用にあたらない。
3、本事案では、誤振込された金員の払い戻しを受けただけなので、権利の濫用ではないとされた。
【事案】
(経過)
1、東京都内の銀行を舞台にした事案。女性X(1審原告、2審控訴人=被控訴人、上告人)は、Y銀行(1審被告、2審被控訴人=控訴人、被上告人)に普通預金口座を開設していた。
2、Xの夫Zは、別のα銀行に1100万円の定期預金を持っていた。
3、ところが、X宅に侵入した者が2000年(平成12年)6月、X、Zの預金通帳、銀行印などをごっそりと盗んだ。
4、そして、この窃盗犯人らに依頼を受けた者βらが、Xの口座から106万円の支払いを受けたほか、Zの定期預金の解約し、その払い戻し・解約金金を、盗んだ銀行通帳のXの普通口座に送金した。
5、この後、Xは、通帳は盗まれたが、銀行には口座が残っており、この口座から、送金された1100万円と自己の預金債権の払い戻しを求めた。
6、そこで、XとY銀行との間で紛争となり、Xが2004年(平成16年)11月、Y銀行に対し、預金債権払い戻しの請求訴訟を提訴。
(裁判経過)
1審は、βへの弁済につき、Y銀行にに過失があるとして免責を否定し、1100万円の請求を認容した。X自身の預金債権の支払いは認めず、X、Y双方が控訴。
2審は、1100万円はX固有の利益に基づくものではなく、払戻しを受けるべき正当な利益を欠き、権利の濫用に該当する、として請求を棄却した。
そこでXが上告。
最高裁は、上告人が本件普通預金について本件振込みに係る預金の払戻しを請求することが権利の濫用に当たるということはできない。
【文献番号】 28142080
【文献種別】 判決/最高裁判所第二小法廷(上告審)
【裁判年月日】 平成20年10月10日
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
 受取人の普通預金口座への振込みを依頼した振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合において、受取人が当該振込みに係る預金の払戻しを請求することについては、払戻しを受けることが当該振込みに係る金員を不正に取得するための行為であって、詐欺罪等の犯行の一環を成す場合であるなど、これを認めることが著しく正義に反するような特段の事情があるときは、権利の濫用に当たるとしても、受取人が振込依頼人に対して不当利得返還義務を負担しているというだけでは、権利の濫用に当たるということはできない。

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