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平成28年司法試験・民法・設問2・基礎知識

平成28年司法試験・民法・設問2・基礎知識
587条
(消費貸借)=要物契約
消費貸借は、消費者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
587条の2
(書面でする消費貸借)=諾成契約
第五百八十七条の二 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
語呂→住む小屋すらなく(587)金を借りた
466条
(債権譲渡)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
語呂→自己の債権が譲渡されて目をしろくろ(466)
【不法原因給付】
708条
(不法原因給付)
第七百八条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
語呂→不法原因は慣れや(708)
解説
本条は、不法な原因で給付をした者に対して、その給付物の返還請求を否定した規定。
具体例は、賭博で負けた者(A)が、勝った者(B)に対してお金を支払った場合に、負けた者から勝った者に対する返還請求を認めない。
もともと賭博の勝ち負けでお金を払うという賭博契約は第90条の公序良俗に反して無効です。しかし、賭博契約が無効だからといって、AからBに対して不当利得の返還請求を認めることは、反社会的・反道徳的な行為を理由として法の保護を受けることになり不当。
本条は90条の規定と表裏をなす規定。90条は公序良俗違反の契約の内容の実現を禁止するものです。つまり、B(勝った者)からA(負けた者)に対する金銭の請求を否定するものである。それに対して、本条は公序良俗違反の契約が履行された場合に、その結果の回復を否定するものである。つまり、AからBへの返還請求を否定する。
本条の「不法」の意義について、広く強行法規違反を含むという説と、90条の公序良俗違反に限るとする説の対立がある。近時の判例・学説は公序良俗違反に限っている。
さて、この不法原因給付の規定の効果として「返還請求できない」の意味について争いがある。不法な原因で相手方に給付したことによって、所有権は相手方に移転するのか、所有権は給付者に残り、単に返還請求できないだけなのか、ということである。
判例は、給付者が不当利得に基づく返還請求のみならず、所有権に基づく返還請求も否定した(最判昭45.10.21)。そして、その反射的効力によって引渡しを受けた者が所有権を取得することになる。
【注意】本条但書の規定で、「不法な原因が受益者についてのみ存したとき」は、不当利得による返還請求を認めているが、これは当然の規定。この場合は、給付者の方に反社会性がないわけですから、非難できない。
具体例としては、判例に現れた事例として、祖父(給付者)が孫娘の私通関係を止めさせるために、相手の男(受益者)に贈与した金員の返還請求など。
【判例1】最判昭和27年3月18日
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
債務者が強制執行を免れるためにした財産の仮装譲渡が、刑法第96条ノ2の施行前まだ公序良俗に反しないと認められていたときになされた場合は、民法第708条の不法原因給付といえない。
【判例2】
最大判昭和45年10月21日
事案
東京・日本橋の経営者、R・Kが、長野県の高等女学校を卒業した後、日本橋の理髪店に勤務していたK・Kと不倫関係に。そこで、R・Kは無登記の古屋の一軒家を改築して喜美子に与えた。ところが、その後、二人は不仲になり、R・KがK・Kに家を返せと訴えた。
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
1. 不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法708条にいう給付にあたる。
2. 建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない。
3. 建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。
4. 未登記建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合において、贈与者が右建物につき所有権保存登記を経由したときは、受贈者が贈与者に対し建物の所有権に基づいて右所有権保存登記の抹消登記手続を請求することは、不動産物権に関する法制の建前からいつて許されるものと解すべきである。
【不当利得】
703条
 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において受益者という)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
語呂→不当利得に慣れさ(703)
704条
 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う
1、要件
①他人の財産又は労務によって利益を得たこと。
②他人に損失を与えたこと
③受益と損失との間に因果関係があること
④法律上の原因がないこと
【判例1】最判昭和49年9月26日
→受益と損失の間に第三者の介在がある場合
事案
[1]事実関係
 Y(国)の事務官 A は、X(茨城県農業共済組合連合会)の経理課長
B らと共謀して、各農業協同団体に交付されるべき国庫金を詐取したので、
国庫金に不足が生じ、また、農協連合会への交付金が未交付のままであっ
た。
(1)A は、犯行の発覚の隠蔽を、B に依頼したので、B は、X の経理課
長であることを利用して、X 名義で、銀行から資金を借り受け、その銀
行から振り出された小切手を、Y から X へ交付された国庫金の過払分の
返還金という名目で、Yの事務官 H に交付した。H は、小切手受領の際、
上記の事情については、何も知らなかった。
(2)また、未交付になっている交付金についても、A の依頼で、B は、
X 名義で、銀行から資金を借り受け、その銀行から振り出された小切手
を、A に交付した。A は、この小切手を自己の預金口座に振り込み、その
後、何度か当該預金につき出し入れをした後、小切手にして、(X とは違う、
別の県の)農業共済組合連合会に送付した。しかし、その農業共済組合連
合会は、正規の手続きを経て送付されたものでないとしてこの受領を留保
し、結局、これを一旦 A に返し、A が詐取により Y(国)に被らせた損
害の一部賠償としてこれを Y に交付し、Y から右農業共済組合連合会に
国庫金として交付することになり、その通り、実行された。
(3)そこで、民法 110 条の表見代理の効果として、借入金の返済債務
を負う X は、B が各小切手を H 及び A に交付したのは X の損失であり、
H が(1)の小切手を受領したこと、及び、Y が(2)の小切手金額に見
合う金銭を取得したことは不当利得であるとして、利得の返還請求をした
要約
1、農林省の役人Aが茨城県農業共済連合会と結託し、国の交付金を不正に取得した。
2、上記不正を隠ぺいしようと、茨城県共済連合会の会計課長が銀行から、同連合会名義で借金し、Aの上司を通じてそれで農林省に返済。
3、ところが、茨城県共済連合会は、借金だけが残る損失が生じた。農林省は、その損失のおかげで受益をしている。
4、損失と受益の間の因果関係が争点に。
5、最高裁の判決
重要→甲がXから借金をして、その借金で、Xの債権者Yに対して返済し、Xが損失を受けたとき、Xの損失とYとの受益は社会通念上連結があったと認められる。とするならば、因果関係がある。
【判例2】転用物訴権、最判平成7年9月19日、京都市貸しビル修繕費事件
事案
1、Y(一審被告、控訴人、被上告人)は、自己所有のビル(京都市東山区)を店舗システム研究所こと高島宗雄に賃貸した。
2、店舗システム研究所ことM・TはYに権利金を支払ないことを条件に、Yは一切の修繕工事をしないことを約束。
3、店舗システム研究所ことM・Tは、Xに5100万円の修繕工事を請け負わせた。
4、店舗システム研究所ことM・Tは修繕費の半分を支払った後、トンずら。
5、XはYに対し、不当利得を根拠に残代金の支払請求
6、1審はXの請求を一部認容、2審は不当利得の成立を認めず請求棄却したためXが上告
10、最高裁は上告棄却。
理由
Yは、通常ならば、権利金を取得できたのに、あえて免除した。ここでYは負担をしていることになる。それなのに、Xから、権利金免除の負担に相当する修繕代金を負担しねければならないことは二重の負担を強いられることになる。したがって、Yが結局、ビルの改善を取得したことは受益にあたるが、上記の事情からすると、Yが法律上の原因なくして利得を得たことにはならない。
一般化
→賃貸人である建物所有者が法律上の原因なくして利益を受けたと言えるのは、賃貸借契約を全体として見て、建物所有者が対価関係なしに右利益を受けたときに限られる
→適用=Yは、店舗システム研究所こと高島宗雄に権利金を免除しており、修繕費用などには負担をしないとの契約をしていることから、対価関係を有する。この点を考慮すると、対価関係なしに利益を得たとはいえない。
【保証】
446条
1、主たる債務者がその債務を履行しないときに、履行責任を負う
2、書面の必要
3、電磁的記録
語呂→大金の保証をした人は紳士録(446)に掲載される
【保証委託契約における求償権】
【委託を受けた場合】
459条(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
2 第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

459条の2
(委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権)
第四百五十九条の二 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2 前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
3 第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない。
語呂→保証を予告(よこく)した場合の求償権
注意
1、一部弁済でも求償OK
2、弁済期前に保証人が弁済しても求償権が成立。ただし、主債務者の承諾がない場合は弁済期後しか求償できない。
3、求償権につき、保証人・主債務者間で特約可能。
【委託をうけない場合】
462条
(委託を受けない保証人の求償権)
第四百六十二条 第四百五十九条の二第一項の規定≪その当時利益を受けた限度において≫は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。
2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
3 第四百五十九条の二第三項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。
語呂→白地(462)で委託した場合、現に利益だけ求償できる。
【通知義務を怠った保証人の求償制限】
463条
(通知を怠った保証人の求償の制限等)
第四百六十三条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
3 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
語呂→嫁さん(463)が保証を先払いしても、主人は言い分を主張できる
(平成28年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦)

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