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令和3年司法試験・民法設問1関連の基礎知識と条文語呂合わせ

令和3年司法試験・民法の解答挑戦1
設問1関連の基礎知識と条文語呂合わせ
【所有権に基づく返還請求権としての引渡請求権】
要件事実→請求原因事実
1、所有権(請求権者の所有権)
2、占有(他者の占有)
【不当利得返還請求権】
703条=「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下、この章において『受益者』という)は、
その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」
704条=「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
→703条と704条はワンセット
語呂→
703条=不当利得は生身(なまみ、703)をはがれる
704条=悪意の不当利得は損得のやり直し(704)
要件
①他人の財産や労務による受益(受益)
②他人に損失を与えたこと(損失)
③受益と損失との因果関係(因果関係)
④①の受益に法律上が原因に基づかないこと(法律上の原因の不存在)
⑤利得が現存していること。
→要件事実は①から④まで。
【即時取得関係】
192条=即時取得(192条)
→「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産について占有を始めた者は、
善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
語呂→動産の所有権は相手に、いくに(192)
→この条文から、次の実体的要件が導き出される。
①前主の無権利
②目的物が動産
③有効な取引の存在
④占有の取得が平穏、公然、善意、無過失でされたこと
⑤取引行為により占有を開始したこと。
以下は説明
①前主の無権利という要件は、即時取得の趣旨が、無権利者の占有を信頼した者を保護する制度であるから、即時取得の前提となる要件となる。
②目的物が動産は、登記・登録制度がない動産が対象。
③有効な取引は、即時取引は、取引行為における前主の無権利という瑕疵を治癒する制度→有効な取引の存在が前提になる。
④占有の取得が平穏、公然、善意、無過失でされたこと←条文
⑤取引行為により占有を開始したことは、動産取引に基づく取引であることが前提であるから。
以下は、要件事実
①取引行為
②①に基づく引渡
理由は
1、186条1項が、占有者の「善意」「平穏かつ公然」が推定されることから、反対事実の主張・立証がない限り、要件にはならない。これを「暫定真実」と言われる。
2、188条=占有者が占有物について行使する適法に有すると推定されるから、「無過失」も推定される。
3、したがって、即時取得の要件事実は①取引行為②取引行為による引渡で十分となる。
語呂→
186条=一夜で無(186)にする「善意」と「平穏かつ公然」
188条=イヤヤ(188)と言わなかったので「無過失」
【引渡しの種類】
現実の引渡し=182条1項、簡易の引渡し=182条2項、
占有改定=183条、指図による占有移転=184条を一緒に覚えるのが得策
語呂→
182条1項、182条2項
現実の引渡し、簡易の引き渡し=嫌な荷(182)でも引き渡された
183条(占有改定)=自分の手にあるのに引渡しなんて嫌味(183)だ。
184条(指図による占有移転)=わざわざ、引渡しを指図してくれて癒し(184)になった。

【代物弁済】
482条の略=他の給付することで弁済する
語呂→代物弁済は芝生(482)の代わりに人工芝で払うことだ。
【即時取得と占有改定】
1、占有移転が外部から認識できない占有改定によっては、即時取得の「占有」を始めたとは言えない。
2、判例=最判昭和35年2月11日
 岡山県真庭市の住民らが所有する水力発電機売買をめぐる事案。
【即時取得と指図による占有移転】
1、物の占有の移転が外部から認識できるケース→即時取得肯定
判例=最判昭和57年9月7日
→横浜市内の倉庫に保管中の豚肉売買事例。米国から豚肉を輸入したS商店が倉庫会社に寄託していたが、M畜産(原告)に売却。S商店は倉庫会社に指図書を交付し、倉庫会社は保管台帳をS商店からM畜産に書換。ところが、輸出会社(被告)が所有権を主張した事案。指図による占有移転であるが、指図書や保管台帳の書換が外部から認識できたことから、即時取得を肯定。
2、物の占有の移転が外部から認識できないケース→即時取得否定
【使用貸借】
使用貸借=593条
語呂→使用貸借するのは国産品(593)に限る。
1、民法改正で要物契約から諾成契約に変更
2、賃貸借(601条)と違う点は、使用貸借には第三者対抗要件がないこと。
語呂→賃貸借した部屋を用意するなんて無礼(601)な
【盗品又は遺失物の回復】
193条=盗品・遺失物の回復請求権
被害者又は遺失者は、盗難、遺失の時から2年間、占有者に対して回復を請求できる。
語呂→盗品や遺失物は、戦(いくさ)で無くしたものばかりだ。2年のうちに返してもらおう
194条=盗品又は遺失品の回復請求と代価弁償
→盗品又は遺失品を、商人などから、善意で買ったときは、盗難の被害者又は遺失物は、占有者が支払った代価を弁償しなければならない。
【代価弁償の法的性質】
回復請求権に対する単なる抗弁権ではなく、積極的に行使できる独立の給付請求権である。
【代価弁償を受けるまでの占有者の使用収益権】
1、回復者から代価の弁償を受けるまで、占有者は盗品又は遺失品を使用収益できる権利がある。理由は、代価弁償にの額に利息が含まれないこととの均衡を図る。
2、占有者は使用収益した利益を不当利得として返還しなくてもよい。理由は、
被害者又は遺失者が回復請求するかどうか、占有者は分からないことから、占有者は不安定な地位に置かれることを防ぐため。
判例=最判平成12年6月27日
 長野県泰阜村で起きたバックホー(大型ショベルカー、1000万円相当)盗難事件。所有者と、業者から購入した被告との争いで上記2点を判示
【善意占有者の果実取得権】
189条
1項=善意の占有者は、占有物からの果実を取得する。
2項=善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
→189条は善意占有者に果実の取得を認める特則である。このため、不当利得の規定は排除されると考えられる
→判例=最判昭和42年11月9日・判時506-46)。
 京都府内の貸し布団屋A店と、その貸し布団屋から布団を騙取した者から善意で取得した者Bとの間の争い。騙取事件であることから、警察はBから、証拠品として、Bから当該布団の任意提出を受けた後、当該布団を元所有者のA店に還付し、A店は当該布団を他に賃貸し賃料を得た。これに対して、Bはその賃料について不当利得返還請求をしたが、最高裁は貸し布団屋は善意の占有者と認定し、不当利得返還請求を退けた。
語呂→秘薬(189)の果実は返す必要はない
【悪意の占有者による果実の返還等】
190条
1項=悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2項=前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
語呂→悪意の占有者は日暮れ(190)には果実を返さねばならない。
以上

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