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平成27年司法試験・民法・設問1関連基礎知識

平成27年司法試験・民法・設問1関連基礎知識
【所有権留保】
・売買の際に、代金の完済があるまでは目的物の所有権を売主に留保する旨の特約をすることで債権担保の手段とする非典型担保。
・所有権的構成と担保的構成がある。
【所有権的構成と即時取得】
・担保的構成→買主が代金完済前に、目的物を第三者に売却→第三者は無権利者である買主からの譲受人→即時取得が成立しないかが問題になる。
・即時取得は原始取得→譲受人は制限のない所有権を取得する。
【添付】
・付合、混和、加工
・付合=所有者が異なる2つ以上の物が合成物を形成すること
・混和=所有者が異なる2つ以上の物が混合
・加工=所有者が異なる2つ以上の物が損傷しなければ分離できない状態になった場合、社機経済上の不利益を回避する観点から全体として1個の物とあつかう。
【付合】
(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
語呂→付合とは、2つの物質(242)が一つになる
【判例】最判昭和44年7月13日
 横浜市磯子区の案件。地主・S・Hが所有する土地に、A一家が借地して平屋建ての住居を所有。同居していた別賃借人が2階部分を増築した。その後相続や売買を経て、A一家の主人が2階部分を、その他の家族が1階部分をそれぞれ所有。地主・S・Hは同一の建物であるとして、全員に建物収去、土地明渡請求を行った。1階部分と2階部分の関係が争点に。
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に2階部分を増築した場合において、右2階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右2階部分につき独立の登記がされていても、右2階部分は、区分所有権の対象たる部分にはあたらない。

(動産の付合)

第二百四十三条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
第二百四十四条 付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
【混和】
(混和)
第二百四十五条 前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。
語呂→日本語(245)は漢字とひらがなの混和
【加工】
(加工)
第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。
語呂→竹を加工したら節目(246)がなくなった。
【判例】
【文献種別】 判決/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和54年 1月25日
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法246条2項の規定に基づいて決定すべきである。
【添付の効果など】
(付合、混和又は加工の効果)
第二百四十七条 第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
2 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。
(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)
第二百四十八条 第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。
【即時取得】
192条
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
語呂→物は行くに(192)
【要件】
①前主の無権利(前提条件)②目的物が動産(同)③有効な取引行為④平穏かつ公然⑤善意かつ無過失⑥占有を開始
①前主の無権利=即時取得は、無権利者の占有を信頼した者を保護する制度→実体法上の要件
②動産=登記・登録対象以外の物
③有効な取引=制限行為能力者の取消権、錯誤取消権、詐欺取消権、無権代理の対象は除外
④平穏かつ公然=強奪、侵奪ではないこと。→平穏、公然、善意は186条1項により推定
⑤善意かつ無過失=善意は権利があると信じていたこと、無過失は権利があることに疑っていたこと、PCにネームシールが張ってある。→無過失は188条で推定。
⑥占有の開始=前提、平穏、公然、善意、無過失は、占有開始時点で判断
【占有改定と即時取得】
・即時取得による利益を取得する者と、失う者との比較衡量すると、占有が移転が外部から認識できない占有改定によっては、占有を開始したといえない。
【指図による占有移転と即時取得】
・物の占有が外部から認識できる事例→即時取得
荷受票、倉庫の所有者移転記録がある場合
・物の占有が外部から認識できない場合→即時取得なし
【不動産と動産の付合】
242条本文=不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
→不動産に他人の動産が付着→分離困難→社会経済上の不利益→動産の所有権は不動産の所有者に帰属
EX1=Aさんの土地に、Bさんが樹木を植えたところ、土地から分離できなくなった→樹木の所有権を不動産の所有に帰属
EX2=Bさんが地上権を根拠に樹木を植えればOK
【強い付合】
・動産が不動産に付合した場合に、動産の独立性が完全に失われたとき(強い付合)→動産の所有権は不動産の所有者に帰属
【付合、混和、加工の効果】
添付により、動産の所有権が消滅した場合、その他の権利、例えば質権も消滅する。
【添付による償金請求権】
添付により所有権を消滅した者は、703条、704条の不当利得の規定に従い、償金を請求できる。
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