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令和元年司法試験・民法・設問1・解答に挑戦

令和元年司法試験・民法・設問1・解答に挑戦
第1 設問1
1 本件事故が発生した時点における甲建物の所有者
(1)本件事故が発生した平成30年6月7日には,甲建物は引き渡されていなかった。請負契約(632条)において、請負人が完成させたが、まだ、注文者に引渡しをしていない場合、当該建物の所有権は請負人か、注文者のいずれに帰属するか。
(2)請負人が材料の全部又は主要部分を提供した場合は、請負人に原始的に帰属するのが原則である。しかし、注文者が請負代金の大部分を既に支払っている場合には、注文者に帰属する特約が推認され、注文者に帰属すると考える。
(3)本件契約では,請負代金について甲建物の完成時には、注文者Aは請負人Bに対し、80パーセント%もの請負代金を支払っていることになる。このような事情からすれば、甲建物の完成時には、そのほとんどの建築費用をAが負担しているものといえ、Aに帰属する特約が推認され、Aに帰属する。
2、土地工作物責任について
(1)Cは,Aに対し,所有者の土地工作物の責任(民法717条1項た
だし書)に基づき、本件事故による損害賠償請求をしている。この請求が認められるかについて,以下検討する。
(2)所有者に対する土地工作物責任が肯定されるためには,以下の
要件がみたされなければならない。すなわち,①「土地の工作物」であること、②その「設置又は保存に瑕疵」があること、③工作物の瑕疵によって損害が生じたこと、④占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしなかったことである。
(3)甲建物はA所有の土地上に建てられた鉄骨鉄筋コンクリート造9階建ての建物であり、①「土地の工作物」である。また、工作物の「瑕疵」とは,その工作物の設置、保存において、通常備えるべき安全性を欠いていることをいう。本件事故は地震の際に起きたが、この地震は震度5弱の地震という、建物であれば通常想定し耐えるべき程度の地震だった。そして損傷の原因は強度不足の建築資材強度不足の建築資材(以下、本件資材)にあったことが判明している。甲建物にはその設置における「瑕疵」があったといえ、要件②を充足する。さらに、Cは本件事故により負傷し、治療費の支出を余儀なくされて損害が発生し(差額説)、要件③を充たす。
 また、事故発生時、甲建物の占有者はBであった。Bは損害の発生を防止するのに必要な注意をしなかったか。損傷の原因となった本件資材は製造業者において、たまたま検査漏れの欠陥品であった。この資材一般は強度不足の建築資材は定評があり、多くの新築建物に用いられており、Bがそれを信用して甲建物に使用したことは「必要な注意をしなかった」と言えず、要件④を充たす。
よって,CのAに対する前記請求は認められる。
(令和元年司法試験・民法・設問2の基礎知識へ)

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