地歴うんちく判例学習・民法4

地歴うんちく判例学習・民法4=94条2項(通謀虚偽表示)の類推適用
最判昭和45年9月22日
【キーワード】
男女の愛憎が生んだ判例。元夫が勝手に書き換えた登記を放置したばかりに、民法94条2項によって大切な料理店の不動産は他の女に。
【地歴うんちく】
1審、2審によると、経過は次の通り
(経過)
1、戦後復興が著しい昭和27年の新潟市のお話。頑張り屋の女性・スズ(仮名)は、新潟の繁華街の土地と建物を買って料理店を開店させた。
2、スズは、この開店を手伝ってくれたほか、店舗の改築資金の一部も出してくれた建築業・次郎(仮名)と交際していた。
3、ところが、次郎は、スズと売買を装って、この店の土地、建物の所有権登記を勝手に自己所有に移転させてしまう。
4、これに気付いたスズは、一度は、登記名義を元に戻そうとし、次郎も了承したが、スズはゆくゆく、二人は結婚することになることから、放置してしまった。スズは、料理店の不動産を担保に銀行から融資を受ける際も、登記は放置した。
5、しかし、男女の仲は分からぬもの。その後、二人は離婚することに。そこで、次郎を離婚と財産分与訴訟を起こし、スズも所有権移転登記請求訴訟で対抗。
6、次郎は、裁判費用をねん出しようと、所有権登記が自己にあることをいいことに、料理店の不動産の一部をノブ(仮名)に売却してしまう。
7、そこで、本件訴訟が始まる。1審、2審はスズが勝訴するが、最高裁は逆転判決。さて、その訳は?
【最高裁の判断】
1、不実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によってされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していたときは、
2、民法94条2項を類推適用し、所有者は、その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至った善意の第三者に対して、
4、登記名義人が所有権を取得していないことをもって対抗することをえないものと解するのが相当である。
【文献種別】 判決/最高裁判所第三小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和45年 9月22日
【事件番号】 昭和43年(オ)第91号
【事件名】 占有妨害排除家屋明渡等請求上告事件
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
 不動産の所有者甲が、その不知の間に甲から乙に対する不実の所有権移転登記の経由されたことを知りながら、経費の都合や、のちに乙と結婚して同居するようになつた関係から、抹消登記手続を4年余にわたつて見送り、その間に甲において他から金融を受けた際にもその債務を担保するため乙所有名義のまま右不動産に対する根抵当権設定登記が経由されたような事情がある場合には、民法94条2項を類推適用し、甲は、不動産の所有権が乙に移転していないことをもつて、その後にこれを乙から買受けた善意の第三者丙に対抗することができないものと解すべきである。

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