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フィット延期と手間ひま

前回から少し間が空いてフィッティングしに高円寺。
通常、予約いただいてフィット実施当日までにWebアンケート形式で事前にインタビュー(予備調査)をおこなっています。

身体各部の状態や傷病履歴、スポーツ自転車歴などを聞き取りしている。これはメソッドに則ったものだけど、これ以外に愛車の横位置写真の提出もお願いしています。なので、かなりの情報を事前に把握して当日に臨んでいるのだけど、開けてビックリということも多いんです。

よくあるパターンはサイズの不一致。大きすぎたり、小さすぎたり、両方あります。付属のシートポストやステムで調整しきれない場合は交換すればよいのですが、最近は車体専用設計が多く、メーカーで必要な部材をラインナップしていないこともあります。

もしくはハンドルステムが一体型だったり、ステアリングコラムを切り落としてしまった場合などは最悪で、提案できるポジションがその人の可動域から逸脱したものになりかねません。

今回はステムが長く、オフセットの大きい純正シートポストでサドル後退角も大きめ。アスリートの骨格というか可動域を完全に逸脱した状態でポジションが出来上がっていました。購入以来、このポジションで乗っていらしたというから驚きです。

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写真の状態で良さげなポジションですが、じつはグリップ位置がハンドルの肩部にあります。上体を倒す余地はありますが、骨盤を立てたリラックスフォームでブラケットが握れないのはバイク操作にも股関節出力にも致命的です。

これはアセスメント(身体評価)後にフィッティングへ入る際の現フォームを観察した際の写真です。この段階で現ポジションは破綻していると判断したので、バイク側に調整の余地があるかどうかを確認します。

その際のポイントはハンドルとシートポストの自由度です。
ー ブレーキ種類(ディスクorリム)によるケーブル処理
ー ケーブル内蔵の有無
ー 専用ステム、またはステム一体ハンドルがどうか
ー 検討されるステムの長さ・角度と、店頭在庫含めた市場製品との適合
ー シートポストの選択肢(専用品かどうか)

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今回はフレームサイズがアスリートに対して大きめなのでスタック位置(ヘッドチューブ上端の高さ)が高く、アスリートの可動域制限(柔軟性が低い)に対して対応しやすいというメリットがありました。簡単にいうとグリップ位置=ブラケットを高く設定できるということです。

ステムは専用品でしたが、汎用品も取り付けが可能な車体なのでこちらは問題なし。一方、シートポストは専用品ですが前寄りのサドル位置を設定できるゼロオフセットがあるのでバイク調整の自由度を確保できました。

フォームチェックの時点で大掛かりな部品変更が前提となったので、フィッティングは部品が調達できてから実施する方向でアスリートに相談します。承諾をいただいて、フィット本編はリスケということに。可動域が小さいことはアセスメントで把握していたので、クランク長の変更の余地も探ります。

サドルから上のフォームが見た目にきれいでも、ペダリングすると股関節が安定していなかったり、クランクの踏みポイントが遅いということはよくあります。せっかくのチャンスなので、MUVE(可変機構のついたバイクもどきw)で簡易にポジションを再現して165mmを試してみます。

反応は良好で、この機会にクランクも変更することに。変更はアセスメントをもとに仮説をたてているのですが、アセスメント結果だけではアスリートが納得できる説得力に欠けます。いきおいフィッターのトークによる説得となり、アスリートにとっては購入のプッシュにしか聞こえないこともあります。

これが、フィッターのトークではなくアスリートの体感に基づいて状況がわかれば、納得ずくで交換=購入、効率的なペダリングへとつながります。フィッターは”売らんかな”でパーツ交換を勧めているのではないのです。

もし過剰な販売プッシュに基づいてパーツ交換を勧めたり、フィッターの直感や経験値だけでパーツを交換=販売すれば、その場でのコミュニケーションは良好でも、結果としてアスリートのペダリングは破綻しますし、バックファイアは必ずフィッターに返ってきます。もちろん、対価も価値も崩壊しますし、信用も無くなります。

だから、フィッターは、たとえ日々の売り上げがほしくてもそれは出来ないのです。ある意味これは、店頭でのセールスとは相反するかもしれませんし、アセスメントで散見された箇所をチャンスとばかりにパーツ交換ばかりすすめるフィッターもどうかと思います。

部材によるアライメント修正が必要であっても、それらによる変化がアスリートにとって負荷となる場合は修正の時期を分散させたり、修正箇所を限定して後日違和感が出たら再調整という方法を僕はとっています。

よくあるのはシューズウェッジとシム関連、ペダリング左右差。
アセスメントでは「要」と出ていても、じつは身体側で代償行為してたり、あるいは部材を追加すると違和感が大きすぎて感覚が追いつかないとか、単純に部材を入れて終わり、というわけでもないのです。

左右差についてはものすごく長くなるので別途書くことにします。

たしかに、アスリートにとっては時間がとられますし、フィッターにとっては手離れが悪い。それでも、結果、アスリートにペダリング効率、快適性がもたらされるならそれが正しいと思ってます。

おっと、いつのまにかB2B的な評論野郎になってしまいましたねw

ということで手間暇かかってもアスリートのためにフィッティングをやってます。オチはない。。。

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