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「文学は予言する」

 泣く泣く「ケアの倫理とエンパワメント」を返却し、予約が回ってきたのが、この「文学は予言する」。比較的新しい本。

 著者の方がお正月の「100分で名著」に出ていたこともあり、少し話題になっているのかもしれない。私もテレビを見て気になって予約を入れた。このお正月の番組はとても面白かったのだけど、1時間ではちょっと時間が短くて勿体無いな、と思った。でも良い番組だったと思う。

 いまは、コンディション最悪ではないけれど、あまり良くはないのでまた返却までに読み切れるか心配ではあったが、読み始めた。

 第1章はディストピア小説について。私はあまり知らなかったのだけど、ディストピア小説って結構出ているのだなー、と思いました。桐野夏生さんの「日没」だったかな、あれもディストピア小説で面白かった。個人的には割と好きだ。
 ディストピア小説をさまざまなあげながら、物語の持つ力、なぜ小説を禁止するディストピアがあるのか、叙事詩から散文への変化など、話題は多岐に渡り、飽きない。そして文章から著者の熱量みたいなものも伝わってくる。

 第2章のウーマンフッドは簡単に言うと、フェミニズムのお話。そのほかにも日本の女性作家の海外での活躍なども書かれていて、最近の小説ももっと読まないとな、と思う。小川洋子と、川上未映子は必ず読もうとおもった。
 小川洋子は「薬指の標本」が大好きだったけど、それ以来読んでいなかった。この本に出てくる「密やかな結晶」を早速予約した。
 川上未映子は、村上春樹との対談を読んでからまだ手に取れていなかったので、同じくこの本に出ていた「夏物語」と、海外で評価されていると言う「真夜中の恋人たち」を予約した。少し待ちそうだ。

 第3章は「他者」。翻訳の話でもあり、古典を現代に語り直すことなど。
 私は小学生の頃にアガサ・クリスティや、シャーロック・ホームズなどの推理小説にハマり、翻訳本に関しては馴染みが深い。でも翻訳がどういうことなのか、あまり分かってなかった。今もそうですが。
 こうして片鱗に触れると、翻訳本のありがたさを感じるが、そんなに甘い話ではなく、英語一強主義の話やそれに対する抵抗など、ある種戦いのような世界。翻訳者ってもっと注目されていいんじゃないのか、と思う。
 世界の翻訳の潮流なんかも触れていて、翻訳についての少し専門的な本である「世界文学とはなにか」「翻訳地帯」「生まれつき翻訳」「翻訳のスキャンダル」も読んでみたいなと思う。
 「鴨川ランナー」も気になるところ。多和田葉子もこの本では頻出してくるが、私も知ってるもののまだ未体験だ。なんだか難しそうなイメージがあって手を出していなかったけれど、読んでみようかな、と思う。もう1人出てくる奥泉光は全く知らなかった。
 ここからまた小説論、文学論にまで話は広がり、ここではまた「これは小説ではない」など、提示される作品がたくさん。。。追いつかない。第3章は結構なボリュームだ。読むのに1番時間がかかった。第3章後半はかなり力を使う感じだったので、図書館で集中して読んだ。

 おすすめですが、これは私のコンディションのせいかもしれないけれど、気合と体力が若干いる感じでした。でも、面白い。勉強になる。なかなか力強い本でした。

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