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「自殺の思想史」

 友人達の死をきっかけとして、自殺を社会や宗教、哲学などがどう捉えてきたかをまとめたという本。

 ギリシャ神話から歴史上の出来事、宗教の宗派によっての違いなどを歴史に沿って取り上げていて、どのように自殺に関する価値観が変化してきたのか、と言うことがとてもわかりやすくまとめてある。
 そして自殺というものはかなり古くから存在することもわかる。

 私は、こう言う歴史を遡ってその時の価値観に合わせて、物事の変遷を見ていく、みたいな本が好きなようだ。昔、卒論で言葉の変遷について調べていたけれど、それを取り巻く社会の状況や価値観まで広げることができなかったことが後悔として残り続けている。

 古代からの様々な自殺に関する議論を取り上げ、それに反対する主張を知っておくことが大事であり、生き続けるよう励ます議論もまた古代から続いていることも知って欲しい、という意図もあるとのこと。 

 このような知的なアプローチが、希死念慮に苛まれる人々にとってどれだけ助けになるかは正直分からないし、本を読める状態ではないことすら多いと思うので、机上の空論のようにも感じる。しかし、この本は本人ではなく、周辺にいる人たちにとって力になる可能性はあると思う。
 希死念慮のある人がどこにいるのかほぼ分からないし、いつ誰がそうなるかわからない中で、多くの人がこの本に触れることによって、遠回しでも当事者の助けになる可能性はあると思う。

 個人的には第6章以降か比較的説得力があるのでは、と思った。近代に近づいてくるので、より理解しやすいところなのかと思う。

 正直そんなことはわかっているけど、そう思えないから辛いんじゃないか、と思うこともなきにしもあらずなのだが、淡々と明示しつつも、どこでどう何が、その気持ちを押し留めるのか分からないので、全てを提示して見せようとするかのような、熱量も感じる。
 まったくこの自分のことをしらない人が、ここまで真剣に真摯に自殺を止めようとするその気持ちに、救われることはあるのかもしれない。

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