見出し画像

「文にあたる」

  「文にあたる」を読んでいる。

 人気校正者が、校正について、言葉との向き合い方、本についてなどをまとめたエッセイだ。
 私がこの校正という仕事について知ったのは、この作者の牟田郁子さんがきっかけだった。Twitterで見つけて、イベントなどで話されているのを聞き、新潮社の校正講座も受講した。
 知るにつれて、こういう仕事がしたかったな、と思う。実際はとても大変だと思うし、表になかなか出ない仕事だ。

 校正を入れることの意義は目に見えにくい。なぜならなにも問題がないといえるのが校正が十全に機能した結果だからです。
「文にあたる」P.098

 自分はこういう1人でコツコツ調べたり作業する系の仕事が向いているのではないかな、とぼんやり思っている。個人的には憧れの仕事の一つだ。
 実際やるとうんざりするのかもしれないし、高度な判断が必要になることもこの本を読んで知れるのだけれど、調べることや、作品に携われるということは、とても楽しそうに見える。
 それは作者の牟田さんがこの仕事を楽しんでおられるからなのかな、と思ったりする。

 読み進めると、自分が向いているかも、と思ったことが恥ずかしくなるくらい、牟田さんの仕事への真摯な向き合いや謙虚さが際立つ。
 鉛筆を入れるか入れないかのせめぎ合いなど、ただ間違いを見つけるだけでなく、より良い本を作る工程の一つが、校正であるとひしひしと感じる。
 私たちが読んでいる本はすでにその工程を経た結果であって、どういうやりとりがそこで行われて、今手元にある本に至ったのかはわからない。でもその校正を経て手元にある本に対して、一言一句安心して読めることの大切さというか、変わらず信頼に応えてくれる本という存在に魅了される。

 本好きな人にはぜひ勧めたい一冊です。表に出ることのない仕事かもしれないけれど、校正があるからこそ、安心して本に触れられる。
 本の信頼を支えている校正は私にはやっぱり魅力的だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?