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アイドル・プロデューサーほど楽しい仕事はない、Vol2.

前回は構造としての女性アイドル(以下アイドル)の魅力を書きましたが、今回はクリエイティブにおいてのアイドルの魅力を書いて見たいと思います。

アイドルは自分で、そのグループのコンセプト、方向性、音楽性を決める事は基本的にありません。作詞、作曲、アレンジもしません。用意された衣装を着て、決められた歌を歌い、パフォーマンスをします。クリエイティブには関わらないという事です。これは構造として素晴らしいと思います。なぜなら歌がうまくて、ルックスも良く、天才的な歌詞と曲をかけてダンスも上手い人しかアイドルや芸能人になれなかったら、世の中のエンタテインメントは存在出来ません。何か一つでもずば抜けた才能があればスターになれる可能性があるという事です。

例えばバンドやSSW(以下、アーティスト)が曲を外部の作家に発注したり、演奏をスタジオ・ミュージシャンに依頼している事が伝われば、作品が仮にどんなに素晴らしいものであっても批判されたり、ファンが失望すると思います。クリエィテイブを全て自分で出来るのが偉いとされているからですね。この理論だと逆に作品のクオリティーは落ちでも自分達だけでやっているから素晴らしいという理論も成りたってしまい、どこか本末転倒になってしまいます。

僕は出来上がった作品が良ければ誰がどう作ったかは関係ないと思っています。(もちろん後付けで創作の経緯や文脈を知る事は作品をより楽しめまさせくれる事は言うまでも有りません)

ちなみになぜ、このような価値観が蔓延したかというと、与えれた作品を歌う歌謡曲と自作自演のSSWの2極構造に70年代になってしまった事と、80年代まで洋楽の情報は音源よりも活字で先に入って来ていた事が理由かと思います。

話を戻します。ですがアイドルは、そんな事はありません。そもそも自分がクリエイティブに関わらないという設定になってるから、作品が素晴らしければ制作のプロセスは関係ありません。アイドルも関わるクリエイター達も自分の持っている一番の武器や強みを集めて作品作りをするわけですから相対的にではなく絶対的に最高のものが作れるシステムになってるわけです。

アイドルだけではなくアイドル楽曲制作においては作詞、作曲の素晴らしい才能はあっても、歌う、あるいはパフォーマンスを行うという才能には恵まれてない人にも大きなチャンスが与えられるわけです。

そこで大切になってくるのはプロデューサーのビジョンと志しです。

酒井政利(キャンディーズ、山口百恵)若松宗雄(松田聖子)飯田久彦(ピンク・レディー)秋元康、つんく♂、川上アキラ、コバメタル、もふくちゃん、渡辺淳之介までブレイクしたアイドルには必ずと言って良いほどキャラの強いプロデューサーがついています。

でんぱ組.incのプロデューサーのもふくちゃんはクラシック、ブラック・ミュージック、ノイズ・ミュージックを渡り歩いた結果、秋葉原で電波ソングと出会い、日本のオリジナリティーとして世界に通用する、電波ソングを歌うアイドルを作りたいと思ったそうです。さすが東京芸術大学卒業ですね。

僕の場合は最初のプロデューサーとしてフィロソフィーのダンスで思い描いたビジョンは。曲のクオリティをあげるために歌の上手いメンバーを集める。歌ふりという日本独特の歌唱を更新させる。振り付けと親和性が高いコンテンポラリーなダンス・ミュージックを音楽的なベースにする。アイドル・ソングの歌詞の多くはティーンの淡い恋心がテーマになっているものが多く20代中盤以降は歌いづらくなるのでエージレスなテーマにしたい。日本の芸能界の若さ重視の価値観が好きではないので年齢は非公開にするといったものです。ひいてはアイドルというジャンルの壁を越えるという物でした。

そして音楽的にはマーク・ロンソンのワークスの狙い所やクオリティーに魅了されました。これが世界的なトレンドなら、これをアイドルに取り入れたら最強なのではと思ったわけです。

アーティストの場合は音源だけではなく、ビジュアル等のクリエィティブやプロモーションの戦略にアーティスト納得する事が一番です。意見がぶつかってもアーティストに客観的に説明出きる理由がなければ意見は通せません。アーティストは自分の人生なので自分が納得づくでやったのなら成功しなくれも悔いは少ないですが、やりたくない事をやらされて成功しなかったら後悔しか残りません。デビュー前にナンバーガールの向井君と話していて「納得いかない事やらされるなら翌日に荷物まとめて福岡に帰る」と言われた事があるんですが、彼らしいエピソードです。

ですが、問題はアーティストが全てにおいて音楽以外の事についてセンスと判断力があるかという事です。いわゆるセルフ・プロデュース能力というものですが、全てのアーティストに備わっている訳ではないです。

アイドルのプロデューサは全ての決定権を持っています。なので音楽以外のクリエイティブにおいても自分が信じるセンスやアイディアが試せるのです。

僕の仕事の最大のモティベーションは自分が最高だと思う、諸々の新しいクリエィテイブやアイデアを考え、実行し成功させる事です。そういう意味でアイディア次第で様々な可能性(なんでも有り、とも言えます)アイドルのプロデュースは最高に楽しいです。

そう言えば氣志團の綾小路翔は音楽的には天才ではない(失礼)ですが、それ以外のセルフ・プロデュース能力は天才だと思っています。彼に男女問わずアイドルのプロデュースをさせたら相当に面白いかと思うのですが、どなたかいかがでしょうか。












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