見出し画像

MAINAMINDの「FUNKY BIG SLOPE 」と関西カルチャーとブラック・ミュージックの相性についての考察。

少し経ってしまいましたが僕がプロデュースしたMAINAMINDの新曲「BIG SLOPE FUNK」の制作意図をまず書こうと思います。
デビューから割とチルな曲が続いたので、そういう曲をやるアーティストというイメージはついてしまうのは違うと思ったので次作はアップテンポと思っていました。
彼女は時間さえあれば曲を作って送ってくれるのですが、その中からこの曲のデモを聞いていたら、これはプリンス風にすれば面白いと思いアレンジャーの大林君に相談したら「イメージ湧きます」との事で進める事にしました。
聞いていただいた方は分かると思いますが、歌詞は大阪弁になっています。元のデモでは標準語だったのですが彼女に大阪弁でやろうと提案しました。

ちなみに「FUNKY BIG SLOPE」タイトルはファンキーな大(きい)阪という意味ですね(すいません)

何故、大阪弁にしようと思ったかというと彼女が大阪ネイティブであるという事。それと大阪弁とファンク、R&B(以下、ブラック・ミュージック)は相性が良いと常々思っているからです。

70年代なぜか関西出身でブラック・ミュージックを志向するミュージシャンが多いんです。
上田正樹とサウス・トゥ・サウス,ソー・バット・レビュー、憂歌団、スターキング・デリシャス、ウェスト・ロード・ブルース・バンド、花伸。どれも関西出身です。
関東でここまではっきりブラック・ミュージックを志向しているアーティストは和製E,W&FIREとも呼ばれたスペクトラムくらいでしょうか。
1979年、山下達郎がこれで売れなかったらアーティストを止めようと思っていた時、シングルのカップリングだったファンク・ナンバー「ボンバー」が大阪のディスコから火がつきヒットし彼のアーティスト活動を助けました。
ちなみこの曲のリズム・セクションは関西出身でそれが、この曲が大阪で売れた理由の一つなのではないかと音楽評論家のスージー鈴木さんが分析していて慧眼だと思います。

80年代は久保田利伸、岡村靖幸、オリジナル・ラブの登場などがありブラック・ミュージックの西高東低というほどでは無くなりますが、ですが1988年にウルフルズが登場します。彼らはソウルフルから”ソ”を取ったのが名前の由来です。ボーカルのトータス松本のサム・クック好き(彼にはサム・クック好き度は誰にも負けたくないという名言があります)
上京して方言を封印してしまうミュージシャンは少なくないですが、彼らは関西弁で歌う事を貫きました。特に白眉なのは大瀧詠一の「福生ストラットPart2」(何故かPart2しかない)を本人の了解も得て「大阪ストラット」という替え歌にした作品です。
特に関西弁を軽妙なやりとりをラップというより河内音頭のようなスタイルのパートです。

また当時の彼らの派手でギラギラのファッションはE,W&F, パーラメントといったブラック・ミュージックをお手本にしていて、これも音楽性と絶妙にマッチしていました。

なぜ関西とブラック・ミュージックと相性が良いのでしょうか、まずは関西弁のイントネーションがリズミカルで英語に近いという事があると思います。

例えば「どないしたん」は「Do Night She tang」と空耳ができますか標準語で「どうしたのですか」は発音にアクセントがなく英語的には聞こえないです 。関西弁は標準語よりアクセントが強いので英語に近いと思います。

偏見もありますが関西人 熱い、東京人、冷静、クールというよなイメージがあると思いますが、これも方言の聞こえ方が違うからのようにも思います。
例えば「君が本当に好きだ」より「お前がほんまに好きやねん」の方が熱量が高く感じますよね。
つまり熱量の高さを指向するブラック・ミュージックには熱量の高い関西弁の方があうのだと思います。

関西弁は攻撃的な言葉でも、どこかユーモアがあるように思います。例えば「お前はバカか」と「お前はアホか」では後者は、どこか愛嬌があります。昭和の人はご存知でしょうが「アホの坂田」というニック・ネームは成立しても「バカの坂田」は成立しないと思います。
これはラップで他人を攻撃する事が文化でもあるヒップホップが、それをどこかユーモラスにしてしまうのに通底しているかもしれません。

音楽的にブラック・ミュージックではありませんが生活の悲哀や哀愁をユーモアを持って表現するクリトリック・リスの歌詞の世界観は彼が「テクノの憂歌団」と言われたようにブルースの歌詞の世界観に近く、関西弁でなければ成り立たないと思います。

ドリーム・カム・ツルーに「大阪ラバー」という曲がありますがこれは遠距離恋愛の歌ですがブラック・ミュージックをルーツに持つ彼らが大阪弁で歌う事に挑戦してみたかったから作ったのではないかとも邪推しています。

逆におしゃれな世界観は大阪弁だと表現しにくいという事もあります。例えばユーミンのDESTINYのキラー・フレーズ「どうしてなの」というの大阪弁にすると「なんでやねん」になってしまい曲が台無しですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?