宇野昌磨選手応援記【番外編】ありがとうNowVoice「リクエストに答えていきます」

今回は宇野昌磨選手の応援記【番外編】として、各界のトップランナーの声が聴き放題の音声サービス「NowVoice(ナウボイス)」が1月末に終了するということで、宇野選手の3年半分の投稿を振り返ろう。

といっても有料なので、ここでは日付とタイトルをまとめるだけで、各投稿の内容に関しては心の中に刻むべく個人的に聞き返して、感慨深い気持ちになっている。

今のこの時代は、芸能人やトップアスリートの言葉をインターネットやSNSを通して誰もが簡単に入手できる、本当に恵まれた環境にあると思う。
私はリルケの『若き詩人への手紙 若き女性への手紙』という本が好きなのだけれど、こんなふうに憧れの人物との奇跡のような文通が、あらゆるところで実現しているのが今の時代なんじゃないかと宇野選手のナウボイスを聞きながら感じていた。

大好きな人の、今の声が届くのは当たり前なんかじゃない。ましてや頻繁にリクエストに答えてくれたことは感謝しかなく、コメントについた宇野選手のアイコンのいいねを見るたびに負担になってはいないだろうかと心配になることもあったので、今回の終了は寂しさとともに、ひとつの文通の終わりのような思い出としての清々しさもある。

どんな場所でも、本名を名乗って顔を出して発信している人を私は尊敬する。気楽な場所で、ペンネームで身を隠して言いたいことを言っている私みたいな人間には、決して理解できない苦労と哀しみと深い内省が、それでも表に立ち続ける勇気と覚悟が、彼らをトップランナーにしたのだと思う。

リルケの本の中にこんな文章があった。
「芸術作品は無限に孤独なものであって、批評によってほど、これに達することの不可能なことはありません。ただ愛だけがこれを捉え引き止めることができ、これに対して公平であり得るのです」

私はせめて批評する人にはならないように、(批評のうちの特に批判を、なるべく賞賛もしないように)ただ愛をもって捉えられる人になりたい。noteの文章はその修行のために書いているところがある。

ナウボイスの中からひとつだけ、宇野選手の『最近のアップデートと思いきや』という投稿の、大切な言葉を抜き出させてください。問題があれば後ほど削除します。

「本心を言うっていうのがまず一つあって、思っていること、感じていること、で例えばこのことを言ったら誰かの迷惑になるなってなったら、わざわざそれを、いや僕は本心を言うんだ!みたいな感じではないですけど、でも基本的に僕が今思っていること、一番優先したいこと、本心を喋りたいって思っていて、だいたい自分のことだったらどんだけ悪く言っても別に自分のことだからいいじゃないですか。だからいいんですけど、他の人のことを喋るってなると、例えばもちろん悪く言うのは論外だと思うし、なんで良いところもたくさんあるのに悪いところをわざわざ言うのって思うし、あとはそうだな、自分のことを聞かれているのに違う人の名前を出すのは、時と場合によりますけど、なんか失礼かなって思っちゃう。なんかその人を利用してるみたいに捉えられたくないなって。考えすぎかもしれないけど」

(1月8日にある文章を読んで、これは暗にともだちとして否定しているのでは…?どんな人間かも何が事実かもわからないのに…と感じて、長年の愛読者、愛用者だったアプリをアンインストールするくらいには、私は器が小さくて人間ができてないと反省中です。被害妄想かもしれないのに…ごめんなさい。その方は私にとってのリルケでした。長い間ありがとうございました)

それでは、宇野選手のナウボイスを、勝手に第1期から第4期に分けてまとめよう!

【第1期】

喋ることが好きという気づきがあったであろうこの時期に、ナウボイスが始まって意欲的に投稿してくれたことは宇野選手にとってもファンにとっても幸運だったかもしれない。上手に語ることや好かれることではなく素直に伝えようとすることが、今に至る宇野選手らしさになっていったんじゃないかな。

[2020年]
7/10 はじめまして宇野昌磨です
7/17 練習と本番の関係性について
7/20 自動車学校の思い出
7/26 スケート靴
7/29 自動車学校卒業しました

8/3 抜歯
8/10 グランプリシリーズ開催
8/13 新しい家族が増えました!(エマちゃん)
8/17 兄弟の好みの分かれ 
8/24 暑い方が好き? 寒い方が好き?
8/31 スポーツへの関心

9/9 将来やりたいこと
9/18 修学旅行の思い出
9/25 スイス生活

10/5 競技面で欠かさないものを考える
10/9 自分と自分以外
10/16 スマブラで強くなる方法
10/23 気持ちの切り替え方
10/31 朝起きたら1番に何するか?

11/7 樹(弟)に勝てないこと
11/14 遠征での環境変化
11/21 今年やりたいこと
11/28 強さについて

12/5 自分の性格
12/17 沢山のお祝いのお言葉ありがとうございます。来週の全日本選手権に向けての意気込み。
12/31 2020を振り返る

[2021年]
1/4 年末の過ごし方
1/15 今年やりたい事
1/23 よく観る映画、機内食について

2/1 海外選手との連絡、目標の持ち方
2/7 わんちゃんに1番懐かれているのは?
2/14 好きになれないもの、行ってみたい国
2/23 練習スケジュールと後輩スケーター

3/6 自分の短所と4ループ

4/2 世界選手権
4/14 国別対抗戦
4/23 新プログラムについてとSOI

【第2期】

ステイホームの時期に、YouTubeの公式チャンネルや樹くんのUno1ワンチャンネルも含めて、ファンとの交流の場所をたくさん作ってくれたこと。そして宇野選手自身にも本田圭佑さんやいろんなゲーマーさんとの交流が生まれたことも本当に嬉しかった。
私は勝手にだけど、居場所を作るのが得意ではなさそうな宇野選手にとって、ナウボイスやおじけーみんぐが居場所であるようにという祈りにも似た気持ちを持っていたので、今はそばに大切な居場所があると信じられることに心からホッとしているんだ。

5/1 触れあいタイムがないので、代わりとまではいきませんが。
5/2 PIW横浜&ふれあいタイム2日目
5/3 PIW横浜公演・ふれあいタイム3日目
5/5 PIW横浜公演4日目(いよいよ明日が最後になりました。。。)
5/5 PIW横浜公演、本当に有り難うございました!

5/9 米さんとリハーサル 5月9日のライブ配信
5/9 本田圭佑さんと米将軍さんと対談(入るの1分待ってね) 5月9日のライブ配信
5/19 オフシーズンの過ごし方と現状

6/1 質問答えます 好きなアニメ ボレロのステップ
6/14 アイスショーの選曲、構成の違い
6/20 質問に答えます。
6/26 3A4Tについて
6/27 本田圭佑さんと米将軍さんと第2回対談 6月27日のライブ配信

7/11 質問に答えていきます
7/23 新プロをザ・アイスでやります(生放送☓→生配信◯、訂正させてくださいー)
7/28 オリンピック
7/31 The ICE初日の感想+ちょっとだけ告知もさせてくだしい(夜分遅くにすみません、、)

8/11 PIW大分公演お疲れ様でした。
8/20 質問に答えます!
8/22 本田さんと米さんときおきおさんと対談! 8月22日のライブ配信
8/27 フレンズオンアイス(初日)
8/28 フレンズ2日目の感想&質問答えます
8/29 フレンズ2021最終日(夜分遅くにすみません)

9/16 質問に答えます!
9/23 本田圭佑さんと、きおきおさんと、米将軍さんと対談! 9月23日のライブ配信
9/26 ジャパンオープン シーズン初戦

10/2 ジャパンオープン終了、頬の事など
10/24 スケートアメリカ終わりに
10/29 隔離生活や大会に向けての練習

11/5 ワルシャワ大会につきまして
11/14 NHK杯について(夜分遅くにすみません。。)

12/6 グランプリファイナル、全日本
12/12 本田さんと、米さんと話す! 12月12日のライブ配信
12/17 24歳になりました
12/30 全日本選手権について

【第3期】

ナウボイスでプライベートの話をすることやおじけーみんぐでスケートの話をすることに批判的な意見が多かったこの時期。発信することは本来自由なコンテンツで+αの情報だから、ファンが制限する権利もすべてを把握する義務もないんじゃないかな。
発信を制限してほしい派とは逆に、有料コンテンツに関しては月額に対してのサービスを求める意見もあった。個人的には応援の意味合いが強いものだと感じているので、発信するほうも受け取るほうも余裕があって自分が必要とする時にのんびりと向き合えたらそれでいいし、こうやって終わりを迎えることも貴重な学びと歴史なんだと思う。

[2022年]
3/10 お久しぶりです。リクエストにお答えしていきます。

4/3 SOI雑談 友野田中宇野③
4/9 SOI東京 雑談 田中宇野友野②
4/23 スイス合宿&新プログラム振り付け
4/26 来季の振り付けについて&リクエストにお答えします

5/6 PIW横浜公演、ショートの感想
5/17 最近のアップデートと思いきや
5/24 来季のフリーの曲名&リクエストにお答えします

6/19 お久しぶりです!リクエストにお答えします。

7/2 友野・宇野質問お答えします@DOI
7/2 ドリーム感想や裏話
7/25 ザ・・アイス名古屋ありがとうございました。

[2023年]
1/11 お久しぶりです
1/14 リクエストに応える
1/18 インスタという現代のSNSをはじめたらしい
1/24 質問ありがとうございます
1/27 最近どんな練習をしているのか

2/2 たくさんの質問有り難うございます。
2/12 たくさん質問来ているのでどんどん答える

3/30 スターズ

【第4期】

最後のこの時期は、ナウボイスでも表現への葛藤をありのままに語ってくれたことで宇野選手という人間性にますます探究心が高まって、応援したい気持ちが募った。
簡単ではないからこそ今後も続いていくその先に、どんな演技でも結果でもそこから宇野選手が感じることや決めていくことに私は興味がある。ナウボイスで知ることができなくなっても、何らかの形で伝えてくれるものがあればずっと追いかけていたい。

5/7 お陰様で一段落
5/12 いろんなことについて話すよ

6/11 佐賀公演

7/26 7月

8/6 ザアイス有り難うございました。リクエストに答えていきます。ワンピース是非楽しみにしていてください。


9/9 ワンピースオンアイス
9/18 ワンピースオンアイス・ロス
9/24 リクエスト有り難うございます。

10/10 カーニバルお疲れ様でした、フリーの感想です。

11/4 少し時間が空いてしまいました。リクエストに答えていきます。
11/8 ショーシーズンも終わり、試合に向けて

以上が宇野選手の3年半のナウボイスです。本田圭佑さん、ナウボイス運営のみなさん、素晴らしい音声サービスを提供してくださり本当にありがとうございました。


私は宇野選手がどんな人なのかををまったく知らない頃から演技が大好きだったけれど、今ではその生き方にも強く惹かれている。
リルケの詩集よりも手紙を愛するように。

おそらくそれは、私の尊敬する自己啓発作家オグ・マンディーノさんの小説作品も好きだけど、『幸せをさがす日記』の中で世間への愚痴や自身の悩みを素直に書いている文章のほうがより親しみを感じて大好きなのと同じ理由なんだと思う。その日記に、こんな引用の言葉があった。
「わたしたちが知りたいのは、詩人が想像力で描き出した英雄ではなく、現実の英雄である詩人自身の毎日の生き方なのである」

最近で一番印象に残っている宇野選手の言葉を、誤解を恐れずに選ぶと
「自分の場合は、他の選手よりもスケートがすごく好きではないんです。スポーツとして小さい頃からやっていることだからこうやって一生懸命で。僕は性格上、やるって決めるとたぶん人よりも真剣にやってしまう性格なので、それでこういうところまで来られたのだと思います」
という正直な、でも納得しかない、愛おしい生き方を表す言葉だった。

私は文章を書くのが好きだけれど、もっともらしく何か良さそうなことを語ることができたとして、その思考はどこからか借りてきたものばかりで自分の言葉ではほとんど何も言っていないと自覚している。
それに対して、トップランナーたちは試練の中で自問自答を繰り返した先に見つけた言葉を、たとえ詰まりながらでも誠実に伝えてくれる人たちなんだと思う。

あと私はYouTubeでいろんな方の講演を見るのが好きで、プロゲーマーの梅原大吾さんに感銘を受けたのだけど、その中で話されていた、ゲームに飽きるということに対して「ゲームに飽きたんじゃない。成長しないことに飽きたんだ」という考え方に、何か宇野選手に通じるところがある気がした。

なんとなく宇野選手も10年20年とさらに経験を積んだ未来で、梅原さんみたいな話す人になるんじゃないかと想像している。
向いているというより、リクエストに何でも答えてくれそうな正直すぎるところも、自分が一線を越えると判断した質問には強い言葉で制するところも宇野選手にはあるかもしれなくて、そういう芯の強い部分や、「よく世間をメラメラさせる」と笑いをとるようなユーモア精神が、私は好きなんだ。

最近も「スケートで悩めているうちは幸せ」
「スケートなんかで悩めているうちは幸せ」だと話していた。こういう言い回しが、熱心なスケートファンの反感を買いそうなところではあるけれど、一般の方向けの講演会ならむしろ刺さるポイントだとさえ思う。まさにそのとおりだから。
今この瞬間も、水も電気もない寒い避難所で過ごしている方たちがいる中で、水も電気も使って寒いリンクを作ってもらってスケートができることは幸せだと思うし、楽しませてもらえるのは贅沢だと思う。それでも、来月地元に来てくれるプリンスアイスワールドを観に行くのを心待ちにして、私は今日という日を頑張ることができている。

私はこれまで、スケートファンは真面目で、厳しいとずっと感じてきたけれど、宇野選手は「スケートファンは優しいですよ」と言っていた。アニメやゲームは自分も含めてファンがもっと厳しいからと。

そして宇野選手が「自分は優しくない。優しい人に優しいだけ」とも言っていたように、人の心は鏡なんだど思う。
だからか、宇野選手のことをかわいいと言う人はかわいらしい性格の人なんだろうなぁと感じるし、生意気だと言う人はそういう人なのかなと思ってしまうことがある。

ただ、人の持っている心の鏡は1種類とは限らなくて、私は宇野選手を優しい人だと思っているから優しい部分がたくさん映るけど、一方で、スケートファンは厳しいと思っているから厳しい部分ばかりを映してしまうのだとわかっている。
ファンとしては宇野選手に優しい世界であってほしい。それでも身近な人たちが優しくあってくれたら充分なんだ。それは絶対に大丈夫だと信じられることが、これまで発信してくれたものから私が受け取ったすべてだと言ってもいいくらい幸せなことだったし、心の鏡を曇らせないために必要なことだったと、宇野選手には感謝している。

自らを優しくないという宇野選手の厳しさというのは、人に対してというよりも、アニメ(のアイスショー)でもゲームでも自分に対する、そしてルールに対するストイックさにあるような気がする。もしかしたら努力とも少し違う、攻略するための力。

宇野選手の公式Instagramのプロフィール欄に「ゲーマー」と書いてあるのは、何もネタとかではなくて、アスリートはみんなゲームを得意とする人たちなんだと思う。

前回の応援記で、少し触れさせてもらった「すべてのアスリートは人生の先輩である」という考え方を私に教えてくれたライターの古賀史健さんが、こんな話をされていた。

「ぼくは、ずっと前からもう『試合』という日本語を辞めてはどうかと思っている」
「球技(※おそらくすべての競技)に求められる瞬間的なひらめき、クリエイティビティは、それが『ゲーム』だからこそ発揮され、育っていくものじゃないかと思っている」
「『試合』もそうだし、『仕事』もそう。まじめになりすぎるぼくらには、ぜんぶ『ゲーム』なんだと考えるくらいがちょうどいいんじゃないのかな」

海外ではスポーツの試合をgameと表記することもあるように、真剣勝負の中にもゲームを楽しむ気持ちを持っている選手こそ、自分という唯一無二のキャラクターを成長させ、大舞台でも力を発揮できるトップアスリートになれるのかもしれない。

私もゲーマー(と言っていいのかわからないただのドラクエ好き)だけど、ゲームはプレイしている間ずっと楽しいとか、ボス戦のたびに感動するとかではなくて、日々成長を感じられることに一番の喜びがある。ひたすら淡々と地道な作業に取り組み続けて、クリアした後にだけ見える景色がある。
ゲームの評判も、実力の評価もあまり関係がない。自分が始めたこのゲームを、続けた先に感動が待っている。そのことを知っている人をゲーマーと呼ぶんだと思う。

ゲームが好きな宇野選手は、ゲームの中でも特に競技フィギュアスケートに適性があり、自ら積極的に取り組んで、仲間とともに成長することを楽しんできた。宇野選手をここまで連れてきてくれたのは、アスリートや表現者である以前に、ゲーマーの本能とも呼べるものだったんじゃないかな。
だからこそ宇野選手は、自分が決めたラストまで続けたその先に広がる景色を見て、また新たな旅へと、生来のゲーマーとして力強く歩み出せる、そう確信している。

最近の私は、世間の人たちが簡単に誤解したり好き勝手なことを言うのを見て、昔みたいに人間がちょっと嫌いになりそうだったけれど、私のこのハードモードな人間不信から人間愛へたどり着くための旅というゲームは、まだまだ続いていくんだと楽しみでもある。
クリアをめざして今日もプレイできる、この文章を書きながらそう思った。

最後にもうひとつ、私の一番好きなリルケの言葉を引用させてください。

「人間から人間への愛、これこそ私たちに課せられた最も困難なものであり、窮極のものであり、最後の試練、他のすべての仕事はただそれのための準備にすぎないところの仕事であります。だから何事にも初心者である若い人々は、まだ愛をなすことができません。彼らはそれを学ばなければなりません。その全存在を賭けて、彼らの孤独な、不安な、上に向って打つ心臓の周囲に集中せられたすべての力を賭して、彼らは愛することを学ばなければなりません」

私から宇野選手へのただひとつのリクエストは、どんな時でも愛を感じられる場所にいてほしいということだけなんだ。
だから、これまでもこれからも、リクエストに答えてくれてありがとう!