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都立の雄は揺らがない―小山台高校試合ルポ―

【2021年秋季東京大会】

2回戦 小山台8-0東大和南 於江戸川区球場

 高校野球界で「都立の雄」と言えば、挙がる名はほぼ決まっている。西東京であればかつて甲子園に出た国立、2013年夏の決勝で日大三とぶつかった日野。東東京であれば、これも甲子園出場歴を持つ城東や雪谷など。だが、中でも近年の筆頭は何と言っても小山台高校だろう。

 伊藤優輔(現・巨人)を擁して2014年のセンバツに初出場を果たし、一躍その名を轟かせた。その後も2015年夏は準々決勝、2018、19年は2年連続で決勝まで駒を進め、この2021年夏も準々決勝まで戦い続けるなど、毎年のように上位に進み、私学に引けを取らない試合を見せている。

 その小山台は、秋にはどんな戦いを見せてくれるのだろう。この秋を首尾よく勝ち上がればセンバツが見えてくる、というだけではない。夏が終わって2ヶ月強を過ごし、どんな新チームが仕上がり、どんな試合運びを見せられるか。
それによって、一冬越えた先にある来年の夏にも台風の目となれるかの期待値も変わってくる。
 今日の相手は、同じく都立の東大和南高校だった。


 東大和南がマウンドに上げたのは、エースではなく背番号3の福田だった。目を張るような球ではないが、左のサイドハンドという変則派で初見では打ちづらそうだ。
小山台でも、捉えるのに苦労するだろう。エースをショートに回してまでも変則左腕に先発マウンドを託したのは、そんな意図があったのかもしれない。

 実際、小山台打線は苦戦した。ゆるい球に身体が泳いでいる。初回はチャンスを作り出すも、結局無得点に終わり、そのまま1巡目はほぼ誰もまともに東大和南の左腕を捉えられなかった。

 潮目が変わったのは、4回表だった。小山台の5番・岩佐がチーム初、この試合唯一となるツーベースを放って無死2塁とすると次打者はすかさず送りバントを決め、1死3塁。
 四球を挟んで1死1、3塁となったところで8番打者が初球スクイズ、これも一発で決まって悪送球も絡み、ようやく小山台が2点を先制した。
 さらに次打者もセーフティスクイズを決め、オールセーフで3点目が入る。

 投げる方では、夏を経験しているというエース・松川が序盤こそ制球に苦しんだものの、中盤以降は調子を上げてテンポよく東大和南打線を抑えていく。結局、得点どころか長打1本許さないピッチングを見せつけた。

 そして、打順が3巡目になればもう変則左腕も関係はなかった。6回表はこれも夏を知るメンバーの4番・新井のタイムリーを含む連打で5得点を挙げ、コールドをほぼ確定。

小山台 新井2

↑小山台高校・新井(打者)

 その後を松川に代わった左腕・栗林がきっちり抑え、終わってみれば7回コールド8-0で小山台が3回戦進出を決めた。

小山台8-0東大和南 スコアボード

 結果的に小山台は2投手による完封リレーに失策も1と安定した守備力と、硬軟織り交ぜた14安打8得点の攻撃力を見せつけた。特に攻撃面では、バントやスクイズを一発で決める正確さと堅実さを見せたかと思えば、リードを奪えば一転して連打で大量得点に成功している。
 この引出しの多さは今後私学とぶつかる際にも小山台の大きな武器になると予感させる。

 エースに4番という、夏を知るチームの柱がおり、彼らが投打それぞれの役割を全うできているのも心強い材料だ。
 次戦は帝京とのマッチアップが決まり、大きなハードルとなることが予想される。しかし、強豪に引けを取らないチーム力があることは示している。
 この秋、どこまでいけるか。そして、冬のトレーニング期間を終えて心身ともに仕上がれば、どんな完成型のチームを見せてくれるのか。期待が膨らむ。

 都立の雄の座は、当面揺らぎそうにはない。

小山台 東大和南 整列2


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