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現場力ってなんだろう。

国際協力ではよく聞かれる言葉「現場力」。これって一体どんな能力なのでしょうか。わかったようで、実際人によってイメージする現場力というのはさまざまではないでしょうか。例えば、問題が発生している現地に赴き、自身の技術力で現状把握、打ち手の検討・実施を行い、解決する力。あるいは、相手国政府等、カウンターパートの意見を直に聞き、伝える力。現場力を代替できる言葉はないとは思いつつも、自分なりの言葉にそれを落とし込み、目標設定を行い、自己研鑽していくことが重要となるのかと思います。

個人の目標設定としてはこれで良いのですが、果たして組織はその現場力とやらをどのように評価し、あるいは活用しようとしているのでしょうか。「現場力」をマジカルワードのように使い、従業員に求める課題解決スキルを提示しないまま、運用しているような気がしています。

というのも、働いているとそのような場面にしばしば出会うからです。例えば、私の場合だと、下水処理場の運営管理状況の確認のため視察した際、処理水の排出基準をギリギリ満たしているか微妙なところである事例がありました。実際の処理場をみてみると、設計どおりに運転がされていないことは明らかでした。下水処理場はラグーン処理といって、大きな池を掘って生物学的な活動に処理を委ねる原始的な下水処理方式です。2つの池が連結されており、最初の池が嫌気池、その後酸化池の順に並んでいます。嫌気池からの流出水を見るとかなりの濁りがありました。確認時は灰色でしたが、カウンターパートのモニタリング結果を見るとピンクになる時もあるようです。色と溶存酸素濃度の関係に着目すると溶存酸素が少ない時にピンク、少し増えるとグレーになっています。さらに聞き込みを行うと、溶存酸素が増えているときは、機械的に曝気をした結果であるとのことでした。これらの状況から、栄養塩が十分除去できておらず、また、曝気量も足りていない、濁度が高いため日光が届かず光合成が起きない、といった原因がわかってきました。
上記の課題に対して、より微生物活性が上がる簡易な機材の導入と曝気を組み合わせる方法を提案しましたが、結局は本部(東京)の理解が得られずに資金をつけることができませんでした。

つまり、現場で課題がわかり、解決策が分かったとしても、お金をつける人が、現場で起きていることを技術的な観点で理解できない限り、問題は解決できないのです。これだと、いくら個人が現場力なるものを身につけたとしても状況は良くなりません。組織は一体現場の事務所に何を求めたのでしょうか。そして、求めたものが返ってきたにも関わらずそれが理解できていない、という何とも言えない状況になっています。

このような例は枚挙にいとまがありません。本部は中身がわからないのならば、分かっている人をつけるか育てるか。それができないのならば現地に権限を委譲してほしいのですが、面子を守るにはそれはできません。返ってきた答えは「意義は認めるが予算はつかない」というものでした。
組織としてどこに向かっていきたいのかを明確に示し、その達成を評価する仕組みの構築が重要ではないかと感じると同時に、このような組織の判断力の無さに辟易した人たちは、自分の許される範囲内でだけ、囲い込むようにして仕事をするようになるのだろうと思います。そうすると、部署間の連携はなくなりますし、予算の取り合いといった、内線状態になり、本来の組織の目的を見失ってしまうような気がします。


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