論理と直感のデザインアプローチ|Awwwards Conf. Tokyo 2020からの学び
こんにちは。デザインが楽しい木村です。
先月Awwwards Digital Thinkers Conference Tokyo 2020にスポンサーとして参加してきました。
時間がたってしまったのでもうたくさんレポートを書かれている方がいますが、ずっとインハウスデザイナーとしてやってきた自分だから得られた学びもあるかもしれないと思いまとめてみました。
(セッション個別の内容にはほとんど触れないので、個別の内容が気になる方は最下部にリンクをつけたのでどうぞ!)
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デザイナーとしての望み
社会人になっている方であれば、「〇〇したい」「〇〇になりたい」「〇〇でありたい」といった人生におけるテーマのようなものがぼんやりとでもあると思います。
私は、"人を惹きつけ考え行動を促すモノをデザインし、結果的に人が幸せを見つける手伝いができる"ことが1つのテーマだったりします。
抽象的なので、だいたいのデザイナーの方に共感していただけるのではないかと思います。
私の場合、今までHCD(Human Centerd Design)やUIデザインなどいくつかの視点でこのテーマに取り組んできました。
思い返せば、小学生の頃に自由帳にキャラクターを書いてあらゆる想像を広げて友達と遊んでいたときから無意識にこのテーマに向き合いはじめていたのかもしれません。
現在でもそうですし、今後もずっと私の大きなテーマであり続けることは間違いないと思います。
今回のイベントで、このテーマにおいてとても大事なヒントを学べたように思うので、それを簡単にまとめました。
論理と直感を行き来する
結論から述べると、
人を惹きつけ考え行動を促すモノをデザインするためには、論理と直感を行き来しながらアプローチすることが大事
ということを学びました。
これはよく言われるようなことかもしれませんが、今回世界中のクリエイターの話を聞いて、さらに思考が深まった感覚がありました。
論理と直感とは
人は論理的側面と直感的側面をもっています。
■論理的側面
論理的側面は、物事の法則的なつながりを理性で捉えます。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
・オレンジの光は美しい
・夕日はオレンジに光っている
→夕日は美しい
言語的であり、意味を伝える・理解する役割です。
■直感的側面
それに対し、直感的側面は、物事を感覚的にただちに捉えます。
例えば、以下のようなもの。
非言語的であり、感覚や感情を刺激する・受け入れる役割です。
これらは個人でバランスの違いはあれど、誰もが2つの側面を兼ね備えていて、両面を補い合っています。
このような人の仕組みをうまく使い、世界の素晴らしいクリエイティブは人々を惹きつけ考え行動を促しているのです。
論理的アプローチと直感的アプローチ
今回のイベントの登壇者たちは以下のような趣旨のことを言われていました。
Smashing MagazineのVitaly Friedman氏
「機能性だけを追い求めると、UIは無機質なただのツールになってしまう。そうならないためにサイトにパーソナリティーを与えることが大事。」
「左脳と右脳どちらもバランスよく使った表現にしていく。」
UenoのDavid Navarro氏
「クリエイティブはカオスでありダークサイドである。」
「デザインはOrder(秩序)とChaos(混沌) に分けられ、Orderはトレンドやベストプラクティスなど合理的な側面。一方Chaosは壁にぶつかり失敗をしても何度もチャレンジしアウトプットし続ける泥臭い不屈の精神のような側面。」
SHIFTBRAINの鈴木慶太朗氏
「"人を惹きつけるデザイン"とは、見る人と作品の間に感情的な繋がりを作る必要がある。」
「日本では"個人"が尊重され、Creativity(独創性)の文化なのに対し、海外では"チーム"で作品を作り上げる傾向があり、Universality(多様性)の文化である。どちらも重要な要素でそのバランスを保つべき。」
ここではすべてを紹介しませんが、このような今回のイベントで出てきたデザインアプローチのポイントをキーワードとして抽出し、この"論理"と"直感"の2軸で分けて自分なりに整理するとこのようになりました。
■論理的アプローチ
論理的アプローチには、言語、整理、秩序、制限、多様、意味、コミュニケーション、現実・事実、チーム、シリアス、システム、ローコンテクストといったキーワードを集めました。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
・問題をチームの共通言語で論理的に整理してコミュニケーションを促す
・多様なチームでできるだけ同じ認識を持てるように事実に基づいて考える
・一定のパフォーマンスを発揮するためにシステム化する
・合理的に進めるために無駄を削ぎ落として制限する
論理的アプローチに寄りすぎると理論上の問題は解決できても、均一化した全く面白みのないモノを生み出してしまうかもしれません。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
・一般的なテンプレートでつくられたWebサービス
・大量生産された誰もが座れる椅子
・すべて言葉の説明がついた画面
・誰もが遊べる公園
こうなると、人を直感的に惹きつけることができないでしょう。
■直感的アプローチ
直感的アプローチには、イメージ、乱雑、カオス、解放、独創、無駄、内省、理想・想像、個人、ユーモア、信念、ハイコンテクストといったキーワードを集めました。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
・整理されてないイメージ的でカオスなものを感覚的に捉える
・理想や想像のアイデアを拡散する
・外をみるのではなく、内省して信念を明確に持つ
・無駄と思えるユーモアのある独創的なアイデアを生む
直感的アプローチに寄り過ぎると一見独創的で面白いアイデアのようでも、全く問題を解決できないモノを生み出してしまうかもしれません。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
・UIが個性的すぎて操作方法のわからないWebサービス
・ゼリー状の椅子
・すべて画像だけの画面
・ライオンのいる公園
こうなると、人を問題解決に導くことはできないでしょう。
論理と直感を行き来するアプローチ
このことから、やはり論理と直感をバランスよく行き来するアプローチが重要であると感じました。
例えば、以下のようなことをしていくことが良いかもしれません。
・論理で組み上げたアイデアが行き詰まったら、一度放棄して全然違うことをやってみる
・個人でイメージしていたものをチームでわかるように言語化する
・多くの情報で何をやっているかわからなくなったら、目的にかえって情報を取捨選択する
・無駄だと思っているものの意味を考えてみる
・面白みのないものを、一度背景を断ち切って面白くすることだけ考えてみる
・あえてルールを破ってみる
・集団ではなく、個人に焦点を当ててみる
・理想や想像を実現させる方法を考えてみる
・大事なものをあえて捨ててみる
・議論をやめて、一度自分でじっくり考えてみる
それぞれの行き来するときに翻訳しきれずに失われるものがあることは理解しておく必要がありそうです。
自分に必要なもの
私はずっとインハウスデザイナーだったので、組織やプロダクトの課題に対して、チームや組織でデザインに取り組んできました。
そのことから、論理的アプローチ(直感→論理)に寄りがちになっていたように思います。
今回のイベントでそれを再度自覚できただけでも有意義だったように思います。
より直感的アプローチを取り入れていくことで、さらに人を惹きつけ魅了するモノをつくれるかもしれないとワクワクしています!
みなさんにとってもなにかのヒントになれば嬉しいです。
ではまた!
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