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地味な私に元暴走族の友達ができた話

私は目立たない人生を送ってきた。30人のクラスだったら28番目くらいに思い出してもらえるくらいの人。
そんな私に元暴走族の友達ができて、かれこれ10年くらい仲良くしている話。

元暴走族の友達とは職場で出会った。私の職場は国家資格が必要であり、試験に合格すれば入れるところである。が、国家資格といっても取りやすいものであり、試験はペーパーもあるがわりと人柄重視で面接にウェイトを置いていて、多様な人が集まってくる職場である。
私が試験に合格して配属された部署には何人かの新規採用者がいた。超優等生の人、体育会系の人、この仕事の専門性が高い人、元暴走族の友達、地味な私。それぞれ育ってきた背景は違うが慣れない仕事を共にして、苦労もたくさん分け合って、仲間意識がすごく高まっていった。毎週みんなで飲み会をして、年に何回かみんなで旅行に行っていた。小中高と地味に暮らし、青春らしい青春をしていなかった自分にとって青春を取り戻しているような時間であった。
でも5年もすると全員が結婚して、家族との生活の方が大切になり、年に一度みんなで集まろうね、というくらいのペースに落ち着いた。

ただその中で地味な私と元暴走族の友達だけは、年に何回も会っているのである。お互いに家族がいるが、その家族全員で自宅に行ったり来たり、旅行に出かけたりしている。
今では妻たちや子どもたちもすっかり仲良しである。

なぜ仲間の中でも一番育ってきた背景が違う二人が仲良くなったのか考えてみた。

気が付いたのは相違点がたくさんあるというのが良かったということである。元暴走族の友達とは違いが大きく、得意分野や苦手分野が真逆なので張り合う必要がまるでなく、お互いに接していて緊張感がないのがいいところだということが分かった。得意分野が似た同士で話をするとどうしてもどちらがそれについて詳しいか、意識的にではないにしろ優劣がついてしまいなんとなく嫌な感じになることがある。

私は本をわりとよく読むがそんな話をしても元暴走族の友達は素直に感心してくれる。本なんて何年も読んでないと言いつつ。私も元暴走族の友達が始めたキックボクシングジムで出会ったヤンチャな人達の話に関して、素直に面白いなと思うことができる。お互いに純粋に違う世界が知られる機会になっているのである。
仕事に関しても、地味な私と暴走族の友達ではキャラが違い過ぎて、求められることが異なっているので比べられることがあまりない。だから仕事の話をしても、自分が職場でどれだけ必要とされてるかさりげなくアピールするというようなことにならず、素直に悩んでいることや嬉しかったことを嫌味なく言い合えるのである。
プライベートと仕事の両面において緊張感がなく、お互いにリラックスして過ごせる存在なんだということに気が付いた。

元暴走族の友達に会うまでは価値観が似ている人としか仲良くなれないと思っていた。でも今は自分と違う価値観をもった人とたくさん出会って、知らない世界を覗いてみたいと思えるようになった。

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