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最高な音楽に手を出してしまった人間の末路〈11月毎日投稿〉

今日は皆さんに真実をお伝えします。私がこれから書くことはすべて真実です。信じてください。

tofubeats氏の楽曲「陰謀論」を絶対に聴いてはいけません。「そんな怪しいタイトルの曲、誰が聴くか」って?私も最初はそう思っていました。

でも、巧妙に張り巡らされた「全く気が付かないような手口で」、踏み込んではいけない世界に入ってしまい、気付いた時には取り返しのつかないことになっていました。

私は命こそ助かったものの、この曲の影響でもう元の生活には戻れなくなってしまいました。私のような人をこれ以上増やさないために、1人でも多くの方にこの記事を読んで欲しい。私の身に起きたことを、ありのままにお話ししますね。

事の発端は5年ほど前。曲に出会う前からすでに始まっていたのかもしません。とある雑貨屋さんで、小さなミラーボールが980円で売られているのを見つけます。

ライブハウスなどの天井から吊り下がっている銀色のボールではなく、赤と緑と青のLEDが球体状についていて、コンセントに繋ぐと光って回り出す。手のひらにギリギリ乗るくらいの大きさで、床に置いて使えるものでした。

欲しいと思いましたが、1000円近くするし、一人暮らしで友達も滅多に来ないのだからと、一度は買わず帰ったのです。しかしそのあとなぜか珍しく、友人を自宅に招く約束が立て続けに決まり、せっかくならと思って、そのミラーボールを買うことにしたのです。

私は友人との自宅パーティーを楽しみ、友人たちもミラーボールを面白がってくれました。ただ、狭い部屋でずっと点灯させていると目が回ってくるのが欠点で、しばらく電源を入れずに置物になっている時期がありました。

久しぶりにミラーボールの電源をつけたのは、コロナ禍での外出自粛が始まってしばらくした頃。それまではライブや音楽イベントに月1回程度は出かけていて、それが私にとって大切なストレス発散方法になっていました。

ライブに行くことができず、音楽を楽しみながら体を動かす機会が減り、それがだんだん苦痛になってきました。そのとき目に入ったのが半年前に買ったミラーボール。これでライブ気分を味わえる!なんて思ったのが運の尽きだったのです。

休みの日の夜は、お酒を飲みながら音楽をかけてミラーボールを回す。ここはライブハウスだ、クラブだ。ステージに立つミュージシャンや、一緒に踊るお客さんを想像しながら、音楽に合わせて体を動かすのが週に1回の楽しみになりました。

始めは羞恥心がありました。「1人でなにしてるんだろう……寂しい人みたいじゃん……人に見られたらめちゃくちゃ恥ずかしいよな」。そんな自分の気持ちに素直に従っていれば、そこで引き返すことができたかもしれません。

それでもやめることができませんでした。仕事のストレスを忘れて音楽に没入できる時間は、なににも代えがたいものでした。そしてこの行為への依存性を高めたのが、まさにこの曲だったのです。

ある日、私が普段使っている某音楽サブスクアプリに、おすすめとしてこの曲が表示されます。あまりにもストレートなタイトルなので一瞬ひるみましたが、そのアプリのおすすめ機能に全幅の信頼を置いていた私は、聴いてみることにしました。

それに、本当に怪しかったら自分から「陰謀論」とは言わないはず。しかしそれこそ向こうのやり口なのです。裏の裏をかくような手口に、私はまんまと引っかかってしまいました。

美しい花のジャケットのアートワークも、引き込むためのワナだったのかもしれません。程よいレトロ感と新しさのバランス、落ち着いているけれど存在感のある色使い、背景のグラデーションの美しさにひとめぼれしてしまいました。

再生ボタンを押してしまったら、もう戻ることはできませんでした。私の休日のプレイリストの1曲目に、あっという間に鎮座してしまいました。まず心を始めに心を掴まれたのは歌詞。

今夜は仕組まれていた!誰かに!
さまよう人々を怪しい電波で集めた
全く気がつかないような手口で永遠に踊らされていた!

「陰謀論」tofubeats

この歌詞によって「1人で部屋で踊るなんて、何やっているんだろう」という自意識は跡形もなく消え去りました。こうなることは全部仕組まれていたんだ、私の意思で踊ってるんじゃない。恥ずかしいとかそんなの知らん知らん。そう思うようになっていました。この時点で思考停止の状態に陥っていたのです。

トラックとメロディー、ボーカルのエフェクトが絶妙に絡み合って、脳に直接働きかけてくるような気持ちよさも感じます。こんな危険なことはありません。

イントロからずっと鳴っているハンドクラップの音が一体感を演出し「私は1人ではない、ここはライブ会場だ」と錯覚させます。テクニカルかつキャッチ―なベースやギターが心地よくて、自然に体が動いてしまいます。

いろいろな音が多彩に差し込まれ、曲調のバリエーションが豊かに変化することで、飽きずに踊り続けることができるのも、依存性が高まってしまった大きな原因でした。

さらには、ちょうど疲れてくる2分半あたりで少しクールダウンさせるような曲調になるのも良くありません。一旦クールダウンさせたあと、もう一度盛り上げる展開も見事で、運動不足の私のような人間でも1曲無理なく踊れてしまうではありませんか。

さらには、これは今考えればどう考えてもおかしいと思うのですが、曲の中に人の奇妙な叫び声が数回出てくるのです。どうして私はそこでおかしいと気付けなかったのでしょうか。

日常生活ではまず絶対に耳にしない、それはそれは奇妙な、滑稽にすら思えるような叫び声です。しかしそのときの私にとっては、むしろ自分の想いを代弁してくれるものに聴こえました。

最高な音楽に囲まれてめちゃくちゃテンションが上がっているのに!仕事のストレスを思いっきり発散したいのに!アパートの壁が薄いから、あまり大きな声は出せない。音源の奇声が代わりに叫んでくれているように感じたのです。

この曲はそうした心の隙間にするりと入って、あっという間に私たちの生活を彩る忘れられない1曲になってしまいます。ふとしたときに無性に聴きたくなって、電車だろうと公道だろうと、狭くて薄い壁のアパートだろうと、所かまわず踊りたくなってしまいます。絶対に聴いてはなりません。

みなさんが今後遭遇した際に間違って聴いてしまわないよう、参考のためにリンクを載せているだけです。決してこの下のリンクをクリックしたり、再生ボタンを押して聴くことはしないでください。

MVのサムネイルのおじさんがいくら気になっても、絶対にYoutubeのリンクへ飛んではいけません。動画内でのこのおじさんのチャーミングなダンスに親近感を覚えてしまったりしたら大変です。

他にもツッコミどころ満載のMVなので、一度見てそれきりというわけにはいかず、絶対にまた見返したいという気持ちになってしまうはずです。そんなことは絶対にあってはなりません。

このピンクの花と水色の背景、ひょうきんなダンスを踊るスーツのおじさん、「あ~~~~~~~~」という奇妙な叫び声、これを見かけたら要注意。絶対に近づいてはいけません。私からみなさんへのお願いです。

「陰謀論」は、本当にとんでもない曲です。絶対に聴いてはいけません。


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