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「忙しい人のための公衆衛生〜「なぜ?」から学ぶ保健・福祉・健康・感染対策」(著:平井康仁)を勧める

いよいよ明後日出版です。
そこで、導入となるような話を少しさせて下さい。

今回のnoteで取り上げたい話題は大きく2つです。
(今回私が本書を出版しようと思った経緯でもあります。)
公衆衛生という学問・教科を好きになって下さい
公衆衛生の知識を、(卒後も)自分のものにして下さい

この2つです。


公衆衛生という学問・教科を好きになって下さい

まずそもそも大事なことですが、公衆衛生は好きですか?

好きな方は、ここは必要ないので、読み飛ばして次に進んで下さい。
問題は、好きではない、とか、知らない、とかそういう方々です。
学ぶにあたって、私が最も大事にしている部分はここです。
この好きと思えるかどうか」が最も重要です。

好きと思えるまでは、私は公衆衛生に限らず、全ての学問において、
学ぶことを一旦止めて、その学問の面白さについて一度考えることが、
その学問を学ぶための近道だと考えています。

なぜか。

好きではない、ということは、その学問における核となる価値を理解していないからです。
違う言い方をすれば、何が分かる(便利になる)学問なのか、理解していない、とも言えます。
具体的に教科を例にあげながら考えてみましょう。

数学
数学は、何が便利になる学問なのか。
例えば、幾何学を学ぶときには、土地測量を想像すると良いでしょう。
三角形の土地の面積を求めたいとき、実は三辺の長ささえ分かっていれば、土地の面積を求めることができます。(ヘロンの公式)
また、整数論を学ぶときには通信領域を想像すると良いでしょう。
通信の暗号化を行うときには、ものすごく巨大な素数を用いています。
数学が実社会にどれほど役に立っているか、想像できるでしょう。

生物
では今度は、何が分かるようになる学問なのか、という視点です。
・ なぜ私達は肉・野菜を食べると自らの栄養にすることができるのか。
・ なぜ私達は酸素を必要とするのか。
・ ウィルスとは何なのか。
こういう「そもそも」の疑問を持つことができれば、学問としての面白さが見えてくると思います。


そして、もっともっと広く考えていくと、いずれ、より抽象的な概念として考えることになるでしょう。
数学の本質とは何なのか、、、
生物の本質とは何なのか、、、
あるいは、ヒトとは何なのか、、、


公衆衛生も同じです。

公衆衛生とはそもそも何なのか。
公衆衛生を細切れにした時に、そこに一体どんな価値があるのか。

こういうことがわかるように本書を作成しました。
まずは身近な話題から、そして徐々に学問の核を理解できるような構成になっています。


公衆衛生という学問を卒後も自分のものにして下さい

公衆衛生の知識を是非、卒後も、これからも、自らのものにしてほしいと願っています。

どういうことか。

「国家試験が終わったら全部何もかも忘れてしまう」のではなくて、
「国家試験が終わったら、確かに多くの知識は忘却されてしまった。でも、大事なことは覚えている
(大事なこととは、先程も申し上げた、公衆衛生の核です。)

なぜ公衆衛生の核を覚えていることが重要なのか。

ここでは、公衆衛生を「国家試験に向けて勉強すること」を「家を建てる」ことに例えて説明したいと思います。

国家試験では、立派な家が経っているかどうか、が試されます。
(「知識が十分あるかどうか、試される」ことを指します。)

大事なのは、その瞬間に、立派な家が建っているかどうか、なので、
基礎がグラグラでも構いません。
(これはまさしく「公衆衛生の核を知らない」ということです。)

核を知らないということは、わけもわからず、意味もわからず、
「保健所は地域保健法・・・保健所は地域保健法・・・」と覚えているので、試験が終わったらあっという間に忘れてしまいます。
せっかく建てた家はあっという間に崩れてしまい、再び建て直すのにも同じだけの労力がかかります。

それでは駄目なのです。

だからこそ、何よりもまず、しっかり家の基礎をつくることです。

これこそが(何度もしつこいですが)核をしっかりおさえておく、ということになります。

基礎さえしっかり作っておけば、たとえ一時的に家が崩れてしまっても、
再度建て直す時にかかる労力は極めて小さくて済むのです。


ですから、本書を読み終わった後に、皆様の中に、
「公衆衛生ってこんなに大事だったのか!」
「公衆衛生ってこういうことを考える学問だったのか!」
「行政の仕組みってよく出来てるなぁ、、、」
「衛生統計、なんて重要なんだ、、、」
こんな感想が湧き上がれば、私の意図は十分に達成されたことになります。
(もちろん「なるほど、公衆衛生はこんなに重要だったのか、それでも自分は臨床の方が重要だと思うな」という感想でも大丈夫です。公衆衛生の重要性(核)を理解してもらうことが大事だと思っています)

本書を通じて、皆様の勉強の一助となることを祈っております。


◎ 忙しい人のための公衆衛生

https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758123686/

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