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子連れ狼vs発狂頭巾:解説

子連れ狼、発狂頭巾を知らない人向きに、用語や固有名詞を説明しました。
本文ネタバレを大いに含みますので、読んでみて分からなかったら見てみて下さい。
なお本解説はあくまで筆者の持っているミームを整理したもので、史実とは異なることをご了承ください。




公儀介錯人
拝一刀のかつての職。将軍直下の重職であり、大名家など身分の高い武士が切腹を申し付けられた際に介錯を担当する。名誉のため心技体すべてを兼ね備えた当代最高の武士が務めることになっている。なお原作者:小池一夫氏の創作で実在しない。

六道四生順逆の境に立ち
六道は仏教用語で天道・人(間)道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道を指し、四生も同じく仏教用語で六道における生まれ方である胎生・卵生・湿生・化生を指す。
輪廻の中で天道を目指し、四生では胎生が一番良いため、これを順逆するので、要は「地獄に落ち、人でなくなる覚悟」を決めていることを指す。

三十路余りか、いくらか皺のある角張った顔、くっきりと一文字の眉
若い頃の緒形拳。発狂頭巾の演者の一人とされる。

アサシン・マッサージャーの藤枝梅安も演じている(史実)

旗本
徳川将軍家に直接仕える直参の中で、一定の石高があり階級が高いのが旗本。
旗本級が家格的に北町奉行の部下にあたるかというと不明なので、「出仕」ということで直接ではない感じにしておいた。御家人という表現にしておけば多少安全性は増すものの、鎌倉幕府を想起しそうなので避けた。

刺客引受、五百両
時代によって貨幣価値は変わるが、筆者は大体3000~5000万円ぐらいでイメージしている。

発狂頭巾
昭和のマイナー時代劇に登場したダークヒーロー。何かしらの事情で発狂した浪人(シリーズによっては仏師なども)が事件に巻き込まれる中で暴れ、最終的に世間の腐った理屈に狂人の人道(ヒューマニティ)が牙をむくプロットが定番。発狂頭巾の狂気に震撼した悪党が「狂うておる」と言った所に、「何ぃ、狂うておるのは…貴様らの方ではないか!」と喝破する決め台詞が印象的。仕事人シリーズ同様、江戸時代のいつなのかはボカされているが、マッドサイエンティスト平賀源内が出ることが多く、化政期が多いと見られる。
なおこれらの設定は全てTwitterの時代劇好きの間で共同幻覚として成立したものでそんな作品は存在しないのだが、さも存在するかのように語られる中でファンアートなども生まれた。

旗本奴
不良化した旗本の次男・三男坊らのこと。江戸時代、武家の給与は米で規定されていた(石高制)が、戦がない時代に額面は基本的に上がらず、平和な中での新田開発などもあって一石あたりの金銭価値は下落が続いていた。江戸時代の半ば以降、旗本や御家人の生活は厳しく、嫡子ではない旗本子息の将来は暗く、モラルの劣化から刹那的なヤンキー行為に及ぶものも少なくなかった。

こうはならんやろ(衛府の七忍より)

神々の使者
ニンジャスレイヤーに登場するヤクザ天狗の自称の一つであり、発狂頭巾とは関係がない。子連れ狼がニンジャスレイヤーに大きな影響を与えている作品なのは間違いなく、フジキド・ケンジのキャラクターイメージは拝一刀とかなり共通している。

公式のあらすじでも「冥府魔道カラテ戦士」と称されているフジキド

北町奉行
当時三つあった江戸の町奉行の一つ。遠山の金さんや大岡越前で有名なように、行政だけでなく訴訟などの司法も扱っている。三権分立みたいなのは江戸時代の日本には概念が無いので、だいたい全部やっている。

北町奉行所にも乗り入り、咎人を放って逃げだす始末
発狂頭巾シーズン3・6話より。賄賂で罪を逃れた商家の番頭によって無実の罪を着せられた下女を発狂頭巾が助け出したが、店に迷惑を掛けることを望まなかった下女は自決した。その後、下女を口封じするために現れた番頭とその手先は発狂頭巾も始末にかかるが、返り討ちにあったという話を今考えた。

御家人名簿
公儀介錯人の拝一刀は職務熱心なため、自分が介錯する可能性がある武士のプロフィールは敬意を持って記憶している……んじゃないかな、と筆者が思って加えたもので、少なくとも原作にはない。

深川の河川敷
最終的に子連れ狼が宿敵・柳生家と三度に渡って死闘を繰り広げる決戦場。原作読んだ人には多分イメージしやすいのでそのまま使った。現在の江東区で、富岡八幡宮などがある。鬼平犯科帳で鬼平が贔屓にしている軍鶏鍋屋「五鉄」もこの辺りで、意外と時代劇によく出る。

弥助・弥彦
オリジナルのモブ。弟の方を弥助ということにして、兄だけ名前がないのも収まりが悪かったので弥彦という感じで安直に命名した。

11歳ぐらい、としたのはるろうに剣心の弥彦の影響

何より男は紫の頭巾を被り
発狂頭巾が頭巾を被るのは仕事の時が多く、普段は浪人の吉貝京四郎として長屋暮らしをしているため、オフに頭巾をかぶっていることは違和感があるが、話の展開を優先して最初から頭巾を被っていた。この辺は狂人なので不規則である。

鞍馬天狗風の宗十郎頭巾が集団幻覚の多数派

子の黒目がちな眼
乳幼児の頃から目の前で父の刺客稼業を見ている大五郎は、既に長年戦場で人の生死を見てきた人間と同じ据わった眼(死生眼)をしている。目の前に刃を向けられても微動だにしない。

一部の人間に対して強力な魅了効果を発揮する

腕を高く上げ、足を高く上げ
野球のピッチャーの投球フォームの一部で、いわゆるワインドアップ。そこから下手投げするのは阪急ブレーブスの山田久志の投球フォームをイメージ。

堂々たる「トルネード投法」で知られた野茂英雄

セットポジション
腕を振り上げず、体の前で腕を構えた体勢から始めるフォーム。ワインドアップに比べると球に威力は乗せづらいが安定している。

モーションが短くランナーが盗塁しにくいのも利点

少年
江戸時代の人間が子供に呼びかける際に使うにはおそらく「童(わらべ・わらし)」や「坊や」などが妥当か。漢語としての表現は古くからあるものの、一般的に使われるのは明治以降と思われるが、発狂頭巾なのであえて時代感をズラした。

大谷翔平
伝説的野球選手。日本人として初のメジャーリーグ(アメリカプロ野球)MVPを獲得することになるが、作中当時は生まれてもいない。

ダメジャー
単なる語呂の勢い。オールタイムワースト級のクソゲー、「MAJOR パーフェクトクローザー」の蔑称でもある。

"ちゃん"
大五郎が父を呼ぶときの独特の言い方。幼くてこれしか言わないというイメージがあるが、原作では普通にハキハキ喋ることも多い。

我が孫よ
子連れ狼最終話「腕(かいな)」を参照。

八相
顔の横で刀を立てて持つ構え。顔のアップを撮った際に刀が一緒に映って画が引き締まるので時代劇で人気。現代剣道では型にしか残っていないが、前後左右に対応しやすく、腕も疲れにくいため示現流などの古流剣術ではよく見られる。

暴れん坊将軍でもおなじみ

胸を開き右腕を掲げた構え
中盤以降の子連れ狼がたびたび決闘で見せる構え。

カッコいい


本当に葦に囲まれて戦えるのかなど、考証上の疑問は多いものの、なんか芒(ススキ)だと締まってない気がしたのと、葦は水辺に多いイメージなので。要は長くて柔らかい草です。

結構丈があるな。邪魔じゃね?

波切の太刀
水鷗流には水場での戦闘を有利に進める型があり、波切の太刀は本来腰丈の水につかり、水面下で刀を構えることで相手に間合いを読めなくする奥義。作中で実際に水場で使われたことは二度で、よく別のものを波に見立てて使われる。原作ではラスボス・柳生烈堂以外には直撃している技で、今作では二度も見切られているが、吉貝の格の高さを示したかった。

水で足さばきを封じてから択を迫るため、回避困難

「気だ」「気か…」
原作110話「天と地と」において、なぜ襲撃を察したかという柳生烈堂からの問いに拝一刀が「気」と答え、烈堂が「気か…」とつぶやくシーンから。

気なら仕方ないな

無門関
原作13話「無門関」より。生き仏と称される高僧を斬るため、拝一刀がたどり着いた無念無想の境地。仏に逢えば仏を斬る。

狂うておるのは俺かお前か
発狂頭巾の次回予告でたびたび使われるフレーズ。

俺とお前と大五郎
大型ボトル焼酎「大五郎」のCMソングのフレーズ「昔の友は今も友、俺とお前と大五郎」より。なお子連れ狼は敵対する昔の友を斬り伏せ、鬼哭しながら冥府魔道を歩んでいるし、酒も一切飲まない。

無拍子
いわゆるノーモーション。技の起こりを見せない高速の攻撃。発狂頭巾の斬撃の発生Fが速すぎるので、さすがの拝一刀もカウンターが入れられない。

鍔迫り合い
刀同士をぶつけて押し合う状況。拝一刀はとにかく強く、一般侍やモブ忍者の技量では時間を稼ぐことすらできずに一撃で無双されるため、原作中でこの状態になることは滅多に無い。

真剣勝負の雰囲気が出やすく、頻出する構図

怪異
この世ならぬ物の怪を指す。原作後半の暗黒全裸中年男性・阿部怪異を想起させてしまう表現だが、それはそれで面白いのであえて残した。

とにかく汚い。大人気ヴィラン。不浄王キュクレイン。

星辰悉悍流
架空の流派。あっても困る。北辰一刀流とは一切関係ない。たぶんSAN値をコストにダメージを上げるタイプの剣術。

戦にありての頭巾は我が流儀によりて、許されよ
原作71話「筑紫路」にて、子連れ狼に対峙する黒田藩士が言ったセリフから。その際は面皰(メンポ)だった。

九頭龍
発音はクトゥルー。九頭龍の滝にちなんだ唐竹割り(真っ向上段からの打ち下ろし)の高速連続攻撃。示現流の初太刀みたいな威力の奴が9連打される感じ。

投げられた脇差
拝一刀はよく武器を投擲しており、炭治郎よりも高頻度で、キルスコアも多い。刀は武士の魂でホイホイ投げるものではないため、拝一刀の武士としての格の高さを解する人ほど引っかかりがち。

射線に重なる突き
イメージ元はるろうに剣心の四乃森蒼紫の技、陰陽撥止。飛ばした刀の影に本命の突きを隠すことで起こりを見えづらくする工夫がある。発狂頭巾の心眼(真)にフェイントは通じない。子連れ狼には決まった型がなく、殺せれば何でもいいスタイルなので色々な技を使わせられる。動かしてて楽しい。

ニンジャのイアイドー。ありそうでまだ出てない

胴田貫
同田貫とも。同田貫正国という刀工が作った刀で、子連れ狼の愛刀。戦国時代に戦場で使う刀として設計されており、とにかくメチャクチャ頑丈で、この刀でなければ九頭龍には耐えていなかっただろう。風来のシレンでは初代からシリーズを通じて出ており、普通のカタナより一回り高性能。多くのプレイヤーを「どこがどうタヌキなんだ?」と困らせた。

斬馬刀
水鷗流の技の一つである「斬馬刀」であり、急にドラゴンころしやバスターソードを持ち出したわけではない。低い姿勢からの切り払いで迫りくる軍馬の脚を薙ぎ払って断つ技で、波切の太刀よりも人間やめてる度は高い。

登場時点では普通の長巻で斬馬してたが、中盤以降は胴田貫の異称になった

松平周防守
原作17話「二川白道」参照。幕府の諜報網を一手に担い権力を私する柳生家を警戒しており、幕府の公文書に偽装した柳生家の暗号文書の存在を察知していたが、拝一刀と柳生烈堂の試合中に、烈堂がわざとすっぽ抜けさせた武器が直撃し、その傷がもととなって死亡した。

柳生烈堂
公儀介錯人・拝一刀を陰謀によって追放し、妻を殺した怨敵であり、原作のラスボス。幕府の諜報を一手に担う「裏柳生」の棟梁であり、外道クソジジイとも真の武士とも言える難解な敵役だが、とにかくタフで強い。
史実には柳生但馬守宗矩の六男として列道義仙の名があり、山田風太郎バースでおなじみ柳生十兵衛の異母弟にあたる。

だいたい全部自業自得ではある

"草"の神経毒
オリジナル。柳生忍軍は毒薬にも精通しており、毒吹矢や「いぶきぼうふう」などの万能解毒薬が作中にある。

三文字割腹の法
切腹スタイルの一つ。一回でもビビって切れない武士も多い中、三回も腹を切るのはマジで天晴。マナー本にあるだけでやった人はいないとされていたが、FGOでおなじみの土佐勤王党の武市半平太が実践したとされる。

平溪寺
実在しないはずだが、していたら申し訳ない。命名理由は特に無い。

瓦版
江戸時代の新聞みたいなものだが、時期的には木版が庶民の間でも盛んになった江戸中期(18世紀)以降に現れているので、子連れ狼の時代(17世紀前半)には無い。けど何か「新聞を奪い取ってギッと睨むシーン」がやりたかったし、あることにした。

古い洋画とかに出るタブロイド紙みたいな位置づけ

血の痕が薄くなっている箇所
考証放棄ポイントの一つ。そこから死人のプロファイリングまで出来るのか、そもそも少なくとも2年放置された血に臭いが残るのかなどはミステリに詳しい読者諸兄の見解を仰ぎたい。

目釘
刀の柄と刃を繋ぐ釘のこと。吉貝の強烈な剣撃には、頑丈な胴田貫も無傷ではなかった。

間合いは再び一足一刀
「一足一刀の間合い」は、一歩踏み込んで刀を振れば相手に当たる程度の距離で、だいたい2m(6尺~7尺)くらい。

剣道では今でも使われる用語

「勘だ」
1回目は「気だ」だったが、2回目の拝一刀はより決断的になり、頭巾の狂気に打ち克っているため、「気」が消えている。

大五郎が拝一刀の肩に乗り、ひしとその頭を抱えていた
原作79話「鞘香」より。「子供を盾にするのはNOT士道だろ」というツッコミには「俺と大五郎は冥府魔道」「そもそもお前も俺だけ殺して大五郎を生かすつもりがあるのか。無いだろ。じゃあ同じだろ」などのレスでカウンターを取れる。子供への良心がある相手に有効な冥府魔道技。

通称大五郎バリアー

罪を負い死ぬるほか無い
原作123話「奔草記之一 小山田主馬の場合」より。公儀里入り忍は潜伏先に忠臣面して勤めつつ、何かあれば裏切って出ていかなければならないし、そうなると現地での家族も当然処刑されるほかない。厳しい仕事なのだ。

ビッチシのバッチシ
やたら現代語で喋る若者が出てくる「衛府の七忍」のオマージュ。

同心らしき男
発狂頭巾シリーズのレギュラーである助手役・女房役のハチ。同心はザックリいえば警官。吉貝のことを気に入っており、何かと気にかけてくれるというか、半ば保護者みたいな感覚で接している。


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