見出し画像

調布飛行場連中 その15

今も心に残るキャッチフレーズ
 T社にはNZさんと言う名コピーライターがおられた。NZさんはT社の重役兼クリエイティブディレクターでもあった。
 下記のNZさん(T社)の手になるバイクの広告コピーは、僕がまだ学生の頃にバイク雑誌で目にして、今でも覚えているものだ。自分が広告制作に携わる遥か以前に、しっかりと心に刻み込まれた、忘れられない大好きなフレーズばかりだ。
 バイク雑誌の広告を繁々と眺めていた学生の頃には、自分がその広告を制作した会社に入る事になるなんて夢にも思わなかった。
 翻って、今まで自分が携わってきた広告の仕事が、他人や消費者からこのように見られているかと問われれば、残念ながら全くもって自信が無い。

 ・静かなる男のための500。
 ・語り合いながら、はるかに。
 ・真に激しいものは静かである。
 ・おお400、おまえは風だ。
 ・2輪感覚。/CB感覚。/CL感覚。/SL感覚。
 ・ふりむかない彼のTWIN。
(順不同 ※ディレクションのみも含む)


女優と二人乗り
 僕は女優の高部知子さん(既に芸能界を引退されている)を、バイクの後ろに乗せて走ったことがある。彼女は覚えてくれているだろうか。
 彼女は小柄で色白で初々しくて、とても可愛らしかった。まだ芸能界にデビューして、それほど経っていなかった頃だと思う。
 彼女からバイクに乗るのは、その時が初めてだと聞いた。走っている時も多分怖かったのだろう、僕の腰に両腕を回してしっかりと掴まっていた。いや、しがみ付いていたと言った方が正確かも知れない。

その実は業務案件
 なんとも思わせぶりな書き出しだが、これは歴(れっき)としたT社のNZさん案件の「仕事」なのだ。そうでなければ、僕が女優さんとバイクに二人乗りなんて出来る訳が無い。
 ある年のTBSの番組改編の目玉が、女優を起用したTVドラマが多数枠開始されるという事だった。そこで番宣用に出演女優がバイクの後ろに乗って一斉に登場するというシーンの撮影が行われた。
 そしてライダーとしてT社の社員他が駆り出され、それぞれ用意されたバイクの後ろに女優さんを乗せて走ったという訳だ。

女優さんがいっぱい
 僕の同僚は甲斐ちえみさん、城戸真亜子さん、神保美喜さん(だったと思う)を乗せて走った。他にも何人か女優さんがいたが忘れてしまった。
 特筆すべきは城戸さんの足の長さで、僕の胸の辺りに腰があるんじゃ無いかという位に足が長かった。そのスタイルは、当日いた女優さんの中でも群を抜いていた。
 その城戸さんを乗せたN君は、城戸さんがN君と身体が密着しないように腕を伸ばしてしっかり「ガード」して乗っていた、とかなり不満気だった。

不安そうだった高部さん
 一方、僕が乗せた高部さんは本当に不安そうだった。バイクのメインスタンドを立てて、ステップに女優さんが一人で立つシーンの撮影の時にも「倒れたりしませんか?」と心配していた。「大丈夫、倒れたりしませんよ。しっかり押さえていますからね」と言って、高部さんが跨がっている間、安心するように後ろからバイクを支えていた。

NZさんの一言
 その後、高部さんは人気女優になるのだが、ある事情で暫くの間、TVや映画から姿を消す事になった。
 後日、その件についてはNZさんから「あの時、お前が名刺を渡しておけば云々・・・(以下略)」と言われた。でも僕が高部さんに名刺を渡したところで、違った経緯になったなんて筈も無い。
 いずれにしても、芸能人の方を乗せてバイクで走ったのは、この時が最初で最後だった。転んで怪我をさせたりしなくて、ホントに良かった。
(つづく)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?