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お悩み相談室のうらがわ041(ジョナンノソウ①)

二十代後半の、ある冬のこと。
仕事を終えて23時過ぎに駅を降り、いつものbarで一杯飲んでから帰ろうかな、と思いながら歩いていました。

10メートルほど先、三井住友銀行の軒下に、「占」と書いた行燈がともっています。毎日通る道ですが、これまで見たことはありません。
横目で見つつ、通り過ぎようとしたときです。

「その、手のホクロ、…」

え、と思って足を止めると、

「ホクロは、意味があるよ」

小柄なおじいさんはそう、言いました。
私は占いに、興味がありません。白い息をついて、とりあえずたずねました。

「いくらですか?」
「500円で、いいよ」

相場がどれぐらいのものかも知りませんが、ビールを飲んだと思えばいいか。どうせ、barに言っても、同い年のタミオ(マスター)とぐだぐだしゃべるだけなのです。

おじいさんは、
私の生年月日と、家族構成を聞き、メモをとりました。それから私の両手のひらにさわりました。

私は実は、人にさわられるのがとても苦手で、妙にあたたかいこの老人のかさかさした手がたまらなく嫌だったのを覚えています。

「ジョナンノソウだね」

何かの草ですか? いや、女難の相。
(つづく)


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