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空區若中の力学その75.ハレとケ。

古来、日本人は日常を「ケ」、お祭りや年中行事を行なう日を「ハレ」と呼び、日常と非日常を使い分けていました。

ここ神戸市東灘区に住む者にとって、お正月やお盆、節供などの節目となる儀礼以上に特別な「ハレ」の日は「本住吉神社例大祭」です。

ちなみに地車の方向修正の時の掛け声は「ハレ(張れ)」です。意味合いは「張れ!張れ!張れ!」の掛け声で、地車を引く若中全員に力が入り、ハンドルの無い地車はコマの軋み音と共に方向転換します。
「ハレとケ」のハレとは意味合いは異なりますが、「ハレ」の語源である「晴ればれ」は「ハレ」の気持ちを表した言葉であり、地車が音を立てて方向転換する時の若中の気持ちにも準ずると私は思っています。
またかなりのこじ付けですが、日常の「ケ」から「ハレ」への方向転換の意味合いから「張れ!張れ!張れ!」と掛け声をかけているとも思うのです。

「張れ!張れ!張れ!」の掛け声で、ハンドルの無い地車は方向転換する

だんじり祭りにより「ハレとケ」が明確に区別されています。
日常生活の「ケ」がなくなり、日々の生活が順調に送ることができなくなることを「ケが枯れる」、すなわち「ケ枯れ(ケガレ)」といいますが、祭りの前日祭である「宵宮」(5月4日)や当日の「本宮」(5月5日)では、ケ枯れが無きようお清めやお祓い等が行なわれれます。

巡行前にはお祓いが行なわれれる

現代では毎日が御馳走で、毎日が晴れ着なので「ハレ」と「ケ」の区別がどんどん曖昧になっています。
ですがだんじり祭りがあるお陰で、祭り前には食事を整えたり、祭りが始まると4つ脚の動物(豚や牛などの肉食)は避け、衣装もさらしに法被、腰巻という「ハレ」の日にふさわしい神聖な衣装「晴れ着」を纏います。

「ケ枯れ」を落とし、日常生活に「ケジメ」をつけ、「ハレ」の日を迎える。だんじり祭りの日を境にして、「ハレとケ」を繰り返すことで、仮に悪いことが起こっても「明日は大丈夫!」と己を励まし、良いことが起こっても「良いことばかり続かない!」と己を戒めることができるのです。

祭りがある街では「ハレとケ」を身近に感じ、とかく単調になる日常に対しても「感謝」する気持ちが芽生えると私は思っています。

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