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無味無臭の老人

我々が食べているあらゆる食材は、歴史上、誰かが最初に食べて安全性を確認した。それを積み重ね、人類は食べられるものと食べられないものを判別してきた。

ある男がキノコを採りに山に入った。すると松の木の周囲に老人が群生しているのを見つけた。見たことのない種類の老人だった。男は一本の老人を根っこごと抜き取り、臭いを嗅いだ。臭いはしなかった。次に男は老人を一口かじってみた。味はしなかった。体調に変化がないかしばらく様子を見ていたが、何も起こらなかった。男は安心し、他にも数本老人を抜き取り、村に持ち帰ることにした。

男は森の探索を続けた。すると杉の木の周囲に老人が群生しているのを見つけた。先ほどとは違う種類の老人のようだ。男は一本の老人を根っこごと抜き取り、臭いを嗅いだ。臭いはしなかった。男は老人を一口かじってみた。すると男は死んでしまった。

夜になると、死体を嗅ぎつけた夜行性の老人の群れが男の亡骸を食い散らかし、その後どこかへ行ってしまった。

男の家では家族が帰りを待っていた。


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