N教授の足腰
N教授の研究室は七階にある。
その日はたまたま点検でエレベーターが使えなかったため、教授は仕方なく階段で上ることにした。
七階まであと一段というところで教授は足を滑らせ、一階まで転げ落ちた。
幸いケガはなく、教授はまた階段を上り始めた。そして七階まであと一段というところでまた足を滑らせ、また一階まで転げ落ちた。
教授はまた階段を上り、また転げ落ちた。
***
教授が六十三回目に階段を転げ落ちたとき、ちょうど人と会う時間になった。来月の登山に向けて、体力作りのために毎週仲間と近所の有名なお寺の石段の登り降りをしているのだ。
山で置いていかれるのは嫌だったため、教授はその日の仕事をあきらめ、そのまま待ち合わせ場所に向かった。
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