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【漫画】渋いぜキャッキャッ

 ワールドトリガーの連載再開に狂喜乱舞し、B級ランク戦を読み返してたんですけど、やはりめちゃくちゃおもしろく、ビビる。こんなにも「俺の好きな漫画」を描いてもらっていいのか、こんなにもらってしまっては天罰がくだるんじゃないかと不安にかられて空を見上げてしまうくらいドツボ。「汎用武器を用いた戦術重視チーム戦」っていうコンセプトが最高だし、それを主人公の所属団体の中堅どころだけで行っているのが最高なんですよB級ランク戦……。試合自体もクソおもしろいんですけど、試合準備までの各チームの詰めっぷりも超楽しい。とことん理詰めのようでいて、人間であるがゆえのゆらぎを戦いに盛り込んでいるのも熱い。

 ひたすらえげつない主人公チームのハメ殺し新戦術に対して、「新戦術お披露目のためのかませチーム」がメタ視点からキレて自分たちの作中の扱いに反駁してくる香取隊・柿崎隊戦もすばらしいんですが、私的ベスト試合は二宮隊・影浦隊・東隊戦ですね。アンチ・ジャンプ系少年漫画を極めたみたいな修行後主人公の処理、降雪による屋内外の環境差をどう利用するかというコンセプト、膠着状態を動かす適当メテオラとおもしろい要素を豪華に盛り込みながら、十名を越える四つ巴多人数戦闘をエース同士の決戦に向けて裁いてゆく手腕には美しさすら感じます。

 なんというか、心の中の小学生がときめくんですよね。ワクワクしてしまう。幼い頃の私は、パワー対パワー!個対個!強力異能対強力異能!みたいな派手なバトル漫画がどうにも苦手で、むしろ表層的には地味な、こつこつと戦術を組んで集団の力で戦りあう「渋さ」に目を輝かせる少年でした(パワー対パワーな作品も大人になってから読むと大体おもしろかったので、単にそれを楽しめるだけの土壌が育っていなかったのでしょう)。かっこよさよりも、渋さ……いや、むしろ渋さに「かっこよさ」を見出していたんでしょうね。かわいらしい。

 その源流が何かと言えば、やはり『伊賀の影丸』だったように思います。忍者同士が派手に術を打ちあうあの漫画を「渋い」でくくっていいのかは疑問ですが……。何しろ主人公の必殺技が風上から睡眠薬をバラまく術ですからね。主人公チームが敵に渡す巻物に毒針を仕込んで敵の七人衆の一人を何もさせないまま毒殺したり、中距離戦闘ほぼ無敵の強敵を火で囲んで遠距離から削り殺したり、ラスボスの術をめちゃくちゃ丁寧に事前調査してバッキバキに対策たててハメ殺したり、シリーズボス兼主人公のライバルで不老不死体質という格の高そうな忍者のメイン戦術が前線に飛び込んでサンドバックにされることで味方に敵の術の情報を持ち帰ることだったり……渋い!かっこいい!最高だぜ伊賀の影丸! 自分で書いてて興奮してきましたがやっぱ伊賀の影丸すげーおもしろいんだよな。また個別記事書こうかな。影の一族の巻の海老とか、土蜘蛛五人衆の巻の金目とかヘッズ(ニンジャスレイヤー読者)におすすめしたいキャラクターもいますし。

 渋かっこいい少年漫画ならば、『結界師』とかも印象に残っています。細部は忘れちゃったんですが、同条件の環境下で同じ能力をひたすら応用し続けて戦う(途中からその条件は緩くなってきますが)のがとても好きだった記憶が。接触可能な六面体の結界を作成するという能力で、読者の発想を飛び越える使い方をガンガン出してきて楽しかったんですよね~。連載中のジャンプ漫画ならば、ワールドトリガーを除けば『ハイキュー!!』がピカイチだと思います。あのクオリティの多人数戦闘(スポーツですけども、まあ広義の多人数戦闘ということで)と、それに乗っかる情のドラマを週刊で構築し続けてるのはちょっと恐怖すら覚える仕事ですよ。クレバーすぎる。白鳥沢戦は読んでて腰が抜けました。