【ゲーム】大逆転裁判クリアしたよ
大逆転裁判クリアしました。話、全然終わってねーじゃねーか! 事実上の前編ですねこれは。第四話のエピローグでホームズが「ロンドンへようこそ」とか序章終了みたいな台詞言ってたのを見て、おいおいあと一話しかないのにようこそも何もないだろ……と思ってはいたんですがそういうことか。ナンバリングよりも前編、後編と銘打った方がよかったのでは? なんかお商売的にそれでは売りにくかったんですかね……。以下、各話ごとの感想です。ネタバレしかありませんのでご注意願います。
第1話:大いなる旅立ちの冒險
チュートリアルな第一話。おなじみの主人公犯人展開に、優しいサポート役、アウチ検事と、ああ、いつもの逆転裁判だなあって感じです。第一話だからシンプルな展開にしてくるかと思いきや、小判の盗難事件をめぐる悶着等、事件外の要素が種々に絡み合うもつれた構成になっており、誘導に則ってそれを一手一手ほどいていくのが楽しいエピソードでした。あと、めちゃくちゃ亜双義くんを疑ってたんですけど普通にいい奴でしたね……。ただ顔が近いよ君。いちゃいちゃするんじゃない。そして残念ながらきみの世界の未来の司法は無茶苦茶ですよ。
最後のなんともすっきりしない結末は、きっと後の展開の布石だろうなあと飲み込んでいたのですが結局このソフト内では完全放置でしたね。それにしても、ホームズ読者であるスサトさんが被害者のワトソン博士に無関心だったのは何故なんだろう……。
第2話:友とまだらの紐の冒險
逆転裁判名物主人公の相方が死んでしまうアレ。ただ亜双義くんは幽霊にはなれず普通に退場してしまいましたね。しかし、あれだけ思わせぶりな秘密を匂わせながら、全く無関係の子どもに押されて転んで死ぬというのもものすごい。ブルタルすぎる。なんて嫌なリアリティなんだ。
本作の顔でもあるホームズの探偵造形がなかなかおもしろく、名探偵でありかつ迷探偵でもあるというグレーな存在感が絶妙。ポンコツでありながら高い格を併せ持つ、ちょっと他にない探偵像だと思います。探偵としての格が高すぎて、人間の基準で調整を加えてやらないと論理が彼岸に行き着いてしまうと言いますか……。それにより、語られずして相棒役であるワトソンの重要性が示唆されているのもおもしろいです。あと、彼の探偵劇場補佐モードはゲームとしてめちゃくちゃ楽しかったです。これ単体で一本作ってほしいくらい。
それにしても裁判をやらずにエピソードが終わったのはびっくりしました。舞台が船上なので、略式裁判とかするのかな……と思っていたのですが、まさかばっさり切り捨ててくるとは。探偵モードのチュートリアルだったのですねこれ。「まだらの紐」における有名な作者のミスが組み込まれた推理展開が興趣たっぷりですばらしい。あと、船員さんの顔の縞模様が蛇の巻きつき痕だったというビジュアルギミックがとても好き。
第3話:疾走する密室の冒險
タイトルがお洒落でいいですね。芦部拓作品みたいだ。本作初登場の要素、陪審員システムのチュートリアル的な一話だろうと油断してプレイしていたのですが、いやはや、なかなか一筋縄ではいかないエピソードでした。本作ではこの第三話が一番おもしろかったかもしれません。それにしてもヴォルテックスさんのラスボスオーラが凄すぎて登場した瞬間爆笑してしまいました。こいつがラスボスじゃなきゃ誰がラスボスなんだよ!
メグンダルさん問い詰めたらめっちゃお金くれるし絶対いい奴だと思ってたのに……そんな……というのは冗談ですが、とにかくこの守るべき被告人が胡散臭く、プレイしていて先の展開が全く読めないエピソードでした。推理ものとしての是非はともかくとして(どうでもいい)、盤外の一手によってガンガン状況が変化してゆくのがめちゃくちゃおもしろい。最後の歯切れの悪い、何一つ解決していない解決編にもしびれました。こういう挑戦的なシナリオはとても好きですね。メグンダル氏のガッツに感謝を。
検事のキャラクターが過剰装飾されているのは毎度おなじみですが、それにしてもバンジークスさんは凄い。「担当した被告人が必ず死ぬ検事」ってなんだよ。本人は「いけにえを捧げよう…」とかめっちゃノリノリでしたけど、おまえそれ普通に悪評だからな。裁判長も何で帰還を歓迎しているんだ。人が死ぬんやぞ。即刻取り押さえて詰問しろ。怪しいにもほどがある。でもこいつ、絶対終盤で主人公と協力して真実を究明するアレですよね。俺は詳しいんだ。
第4話:吾輩と霧の夜の冒險
これもまた大変好きなエピソード。まさかの夏目漱石登場というサプライズもさることながら(逆転裁判世界に現実の人間が登場するの、くらくらするものがある。この世界リアリティラインが低すぎる)、事件を通して次第に明らかになってゆく市井の人々の営みがおもしろい。事件自体に漂う怪奇色もあることながら、霧けぶる町・倫敦を歩き回る楽しさ……「冒険」の題が最もふさわしいエピソードだったと思います。
真犯人の計画によってではなく、ごく当たり前の人々の情とドラマが組み合わさり、奇っ怪な謎が現出してしまったという事件の在り様は実に京極夏彦的。物語と物語の交点において意図せず発生してしまった謎は、計画犯による人造品と異なり、一個の生命のような息遣いと温度を感じさせます。「妖怪」ってやつですね。また、推理の先にとんでもない「偶然」が立ち現われ、それがもたらした悲劇が語られるという作りは、島田荘司作品も想起させられます。ガリデブ夫妻のエピソード、とても好きですね。
ところで、捜査途中で登場したやたら派手な貴族みたいなやつは何だったんですかね……。次作への伏線か何かかな……。
第5話:語られない物語の冒險
クログレイさんいいキャラクターだけど、ラスボスとしてはあまりにも所帯じみてるなあ……と思ってたらまさかの謎をバラまいての続編展開。びっくりしました。チャレンジフルな試みで好きですこういうの。クログレイさんの動機、ベッタベタながらもちょとぐっと来てしまい悔しいです。ティンピラー兄弟とのユウジョウが実によく効いている。ところで、ウゼーの兄貴は次作への伏線なのか、彼らの戯言なのか……。
ゲーム全体を通して語られる本作のテーマが「信じること」だとすると、被告人のジーナ・レストレードは本作の裏主人公と言ってよいのではないでしょうか。真剣十代喋り場みたいないちゃもんをつけてくる彼女は、プレイしていてて大変……いや、うん、少々うっとおしかったのですが、次作の成長に期待ですね。シャーロック・ホームズにレストレードって名前の刑事が登場してた記憶があるのですが彼女のことなのかな。でもあれ男性じゃありませんでしたっけ? いや、ワトソンが幼女の時点で何でもありですけども。ともかく、彼女はプレイヤーの手間のためにも、もうちょっとすっきりと生きて頂きたい。
逆転裁判最終話おなじみの、本来の事件を離れて風呂敷がどんどん広がってゆくアレですが、今回は次作へのヒキのためにやや抑えめに展開してきた印象です。国際通信、テロリスト、万博と、劇場版コナンかなってくらいヤバそうな前ふりが多いので、次作は結構ド派手なことになるのでは。対犯人に加えて、対警察の要素も加わり、事態が複雑化してゆく展開はとても好み。グレグソン警部の心労を考えると涙が出てきますよこれ。