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【2018忍殺再読】「ライフ・アフター・デス」

死後、痛苦、生

 AOMシーズン2、第2話。スーサイドの再起を主軸に据えつつ、シトカで蠢く各勢力・各人物をザッピングしてゆく群像劇めいた回。スーサイドのエピソードとしては一つの結末に辿り着いてるものの、前話から引き付いだ要素、後話に引き継ぐ要素も多く、第四部の「連続ドラマらしさ」がよく出たエピソードだと思います。今回以降、ソウカイヤvs過冬がサブプロットとして挿入されてゆくわけですが、その内容が各エピソードのテーマとどうリンクしていっているのかは私の読解力では読み取れなかったので、重篤ヘッズに是非解説をお願いしたいところ。

 「ライフ・アフター・デス」というタイトルはシーズン1の第1話、「トーメント・イーブン・アフター・デス」を想起させられます。死後も続く痛苦の果てにニンジャスレイヤーが得た火を、死者であるスーサイドが受け取り蘇る。生きることは動くことであり、動くことは世界との間に摩擦を起こすことであり、それは当然皮膚を擦る痛苦と摩擦熱を発生させうる……。ニンジャスレイヤーで脈々と語られてきた「蘇り」(作品の根幹でもあるニンジャソウル憑依という設定からして、重点されてますよね。)を、既存キャラクターのスーサイドに担わせるのは実に贅沢で、何よりフジキドトリロジー10年後という舞台でしかできないエピソードであるところが素敵ですよね。シンウィンターが築いた真冬の王国が象徴するもの。低温、無変化、すなわち死。物語が終わり、何も変化することのない土地、シトカ。それらをひっくるめて「日常」と称するのは、日常に生きる我々小市民にとっては抵抗がありますし、何より暴論が過ぎるでしょう。しかし無変化は安定と言い換えることもでき(それはやはり日常と似ている)「エリミネイト・アナイアレイター」のエピローグのスーサイドが、本人の感情とは別に、安定した日々を獲得していたことも間違いないところ。それを受け入れることがトリロジーで語られた「黄金時代」に反するもの、その輝きを台無しにするものだとしても、スーサイドがその安定の中に納得を見出し、クソッタレな日常を肯定した死んだ犬として己を確立するのも十分にアリだと思っていたのですが……やはり彼はパンク・ニンジャの憑依者なんですよね。

自殺の再定義

 蘇った死者は決して生前と同じ存在ではない(作品の根幹でもあるニンジャソウル憑依という設定からして(以下略))ということは、ニンジャスレイヤーでなくなったフジキドや、オリガミアーティストでなくなったマスラダ、アマクダリの再定義等を通じて語られてきたことですが、それを「スーサイド」というニンジャネームの再解釈として表したのは大変おもしろいところ。「自殺してニンジャになった男」は、「我が身を捨ててきみを守る男」となり、10年の内に「自分を殺して諦念の中に生きる男」に転落し、「生を取り戻すために自殺同然の戦いに身を投じる男」に変わった。「自殺」という単語をめぐる解釈の流れ自体が、彼のたどった人生そのものになっている。ニンジャが虚構の怪物であるならば、ニンジャネームはそこに冠されたタイトルそのもの。それはある意味呪いにも似ており、フジオに刻まれた漢字に等しいのですが、そこに己自身の解釈を乗せることで、あるいは名前を変えてしまうことで、誰もが物語の「続編」、すなわちライフ・アフター・デスを紡ぎうるんだなあと。

 いやあ、それにしてもアマクダリとの抗戦を黄金時代呼ばわりしてるスーサイドはほんとろくでもないですね! お前どれだけたくさんの人間とニンジャが死んだと思ってるんだよ。我々読者はアマクダリ側(敗者側)の視点もよく知っているので、シマナガシの連中があの戦いを「想い出」に昇華させていることは、なかなかにクるものがあります。カラテのイクサというものは、どれほど勝者と敗者を残酷に分かつのか。チリングブレードさんにぶっ殺されても文句言えないですよ本当に。このような「かつて強烈なエゴとカラテの火を持っていながら、シンウィンターにそれを吹き消され諦めてしまったニンジャ」、勝ちえない相手を前に妥協を選んだ「賢明なニンジャ」というしょぼくれスーサイドの造形は、次話以降に登場するワイズマンたちの紹介にもなっているんですよね。そして、スーサイドは、ワイズマンたちと違い、最終的に賢明とは言えない「自殺行為」に飛び込めるニンジャなんですよね。パンク!

雪兎ポンコツ四人組好き

 前話の感想でも書きましたが、シーズン2序盤は過冬の末端ニンジャが滋味深いんですよね。その中でも特に好きなのが、次話に登場してモータルニンジャレジスターられるあいつらと、本エピソードで登場するホテル雪兎の四人組です。ホワイトアウトやレックメイカー、ゼレズニーイもかっちょよい戦士でいいんですが、好きなのはこいつらの方なんですよね。業務成績がよろしくない、うだつの上がらない連中が、愚痴を言いあいながらもなんだかんだ楽しく邪悪行為に励んでいるのは癒される……。ザルニーツァを罵ったり、ゾーイをシバこうとしたりするのも「見えてない」度が高すぎてたまりません。過冬、シンウィンターのスタンスがあんな感じなので、不真面目な奴はとことん不真面目でいい加減な仕事をしてるっぽいのいいんですよね。逆に、その中でも真面目に仕事をやってる連中は、根っこが優等生なんだなあとほほえまくしく思ったり。愚痴に話を合わせながらも、精一杯他三人のまとめ役をやっているブルハウンドさんは応援したいサンシタですよ。

 それにしても、改めて読み返すと、本編と全く関係ないにも関わらず異様な存在感を放っているアイアングリルさんにビビりるな……。何なんだお前は。

■note版で再読
■10月14日