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【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(2020.10.06)

 ニンジャスレイヤーの第一部を再読し始めたら記憶よりもはるかにおもしろくてぶったまげ、今年の忍殺の再読もあるというのについつい再読感想文行為に走ってしまったり、今更ながらスカイリムとウィッチャー3を同時に遊び初めてこの二つを同時に始めるのはさすがに自殺行為だったのではと反省したり、酔った勢いで買ってしまったニンテンドーラボを組み立てるのが案外楽しかったりで大変忙しく、今年は逆噴射小説大賞に投稿予定のない私です。色々やりすぎてて、この前段で焦点を当てるイベントが特にないですね。あ、ジャンプ41号巻末のジャンプ漫画読者にミステリを紹介するコーナーがおもしろかったです。チェンソーマン読者へのおすすめが殊能作品なのは、あまりにもしっくりきすぎていて爆笑してしまった。あとジャンプの話で思い出しましたけど、電子版限定の『ブンキテン』がすげーおもしろかったですね。単行本出して欲しい。ジャンプの恋愛漫画というくくりにおいて、自分が読んだ中では一番おもしろかったです。びっくりした。

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探偵AIのリアル・ディープラーニング/早坂吝

 続編の『犯人IA』を読むために再読。AIと本格探偵小説を絡めた連作短編集。とにもかくにも「フレーム問題と後期クイーン問題って同じなのか!?」という第一話のアイデアがすんごい。革命的な気づきだし、大発明だと思う。そのド級のスタートダッシュを前に、再読である今回ですらも、うおおおお!これはやっべえチャレンジをしているぞ!とついつい身を乗り出してしまったのですが……第二話以降は割と普通にAIネタの特殊設定ミステリをやってるんですよね。AI問題を通じて、本格探偵小説を現実に適用する上で生じる様々な問題点の解決策を探り出す小説ではなかったのか……。完全に方向性の読み違えであり、『とんかつDJアゲ太郎』が私にかけた呪いが悪い方向に作用してしまいました。とんかつかと思ったら白身魚フライだったみたいな。いや~でも、推理小説をリアルディープラーニングした結果、AIの推理が外れ始めて、そこを補うのに何が必要か?みたいな問答が読みたかったな~。くそ~。


犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー/早坂吝

 探偵AI第二段。前作が探偵側に趣向を凝らした作品ならば、今回は犯人側に趣向を凝らした作品。探偵、犯人、いずれもAIであることもあり、「最適解をとる探偵に対して、犯人はどうやったら勝利することができるのか?」という思考実験のシミュレーションのような味わいのある長編です(実際は、本作に登場するAI探偵は、理想の探偵」ではなく、色々と問題があるわけですが)。前作は不幸にも楽しみ切れなかったのですが、こちらはかなり好き。「謎」に対して、解決に必要な情報の収集が可能であり、かつ、収集した情報の処理能力も十分に足りている探偵を封じうる「謎」はありえず、では、その「謎」を「不条理」の領域に拡張していくならば、どの時点で、「謎」は「探偵」の上位に立てるのか。また、些細な殺人事件を発端に、最終的には首相官邸を巻き込んだ陰謀にまで風呂敷が広がる本作の話運びは、どこか『逆転裁判』を思い起こさせるものがありました。官邸捜査パートとか、ゲーム画面が目に見えるようだった。


こっくりマジョ裁判/中山敦支・amphibian

 こんなん絶対おもしろくなるでしょと思ってた『ギャンブラーズパレード』が、スン……という感じに終わってしまい、傷心になった私でしたが、この一冊を読むことで完全に癒され、「これこれ!こういうのが読みたかったんだよ!」とずっと小躍りしてました。「中山漫画のシナリオと演出の両輪が噛み合った時、今は亡き『新青春エンタ』が蘇る」というのは、私の村に伝わる伝説なのですが、この漫画はまさにその好例であり……出版社も異なるというのに……ここにはどうしようもなくあのパイプをくわえた犬の臭いが……かの二段組みのノベルスの血脈が……強く感じとれるのです。私だけですかね? 馬鹿馬鹿しいほどに誇張された感情表現は、ドラマの全てをジャンクでチープなB級エンターテイメントに叩き落とし、しかし、その異常な拡大率でなければ決して画面に描画することができない繊細で強靭な一線を執拗に叩きつけてくる。ひたすらに奇を衒い尽くす馬鹿踊りは、内実を伴わない空虚な作劇のようでいて、そのがらんどうの奥底に、それを馬鹿踊りとして出力せざるを得なかった、抑えきれない衝動の存在を予感させてくる。


鬼滅の刃(16巻~21巻)/吾峠呼世晴

 ぼちぼち最終巻が出るようなので、上弦①②③戦をまとめて読み直すなど。ゴリ押し気味の能力攻略ロジックと反するように、悲劇の組み立ての精緻さがとんでもない領域に達してゆく三連戦だなあと改めて。鬼滅、見事なフィニッシング・ストロークを決めた半天狗戦などに顕著なように、能力攻略・戦闘描写を通じて鬼のドラマを解題し、その正体を解き明かすという、ある種ミステリめいた作りをしたバトル漫画なわけですが……この①②③戦は、その路線の極地と言えるものでしょう。言動の全てが真相暴露によって別の意味に裏返るパズルのような猗窩座戦、これまでの鬼に対しての「応用問題」とでも言うべきひねくれた作問をかましてきた童磨戦。いずれもが素晴らしいのですが、やはり白眉は黒死牟戦(と、ある種その前ふりである獪岳戦)だと思います。とにかく徹底して黒死牟側のドラマが鬼殺隊たちと断絶しているのが、えげつない。彼のお話の全てが踏みにじられ、無為に還るよう、破綻が丁寧に丁寧に組み上げられている。彼を仇として特別視し、彼を殺すためにその言動を読み解こう(推理しよう)とするものすらそこには配置されていない。そして、第一話から引き継がれ、黒死牟戦で一つの頂点をみたその無為の死=「残酷」は、産屋敷家の底のない憎悪や、子供すらもが躊躇なく自分の命をBETする異常性と合わせて、ついには、鬼を食らい殺すもう一頭の怪物・「鬼殺隊」の正体を解き明かす手がかりとして昇華されることになるのです。……しかし、この漫画においてただ一人だけ解題される余地を持たない無惨様はやはりいいですね。最高のラスボスだし、この漫画の鬼としての「強さ」の極地だと思います。


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