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【忍殺第1部再読】「トレジャー・エヴリー・ミーティング」感想

合縁死縁

 物理書籍限定エピソード。ほんの一瞬交錯する、死と絶滅の奇縁。「一期一会」と題されながらも、今後、長く長く続くいてゆく、ヤモトとシの眷属の物語の前夜祭めいた一編となっています。登場人物が限定されていた第1部において、思わぬキャラクター同士が起こすケミストリーを描いた本作は、第1部でありながら、どこか第3部やAOMに近しい雰囲気を備えているような……。いずれにせよ、非常にスペシャルなトラックであり、ここまで第1部物理書籍を読み通してきた読者に与えられた、ご褒美めいている。あの人気キャラクターと、あの人気キャラクターが!というファンサービス的な側面が強く出ているという点で、ドラマCD用エピソード群とも、共通するアトモスフィアも感じます。

 改めてニンジャスレイヤーwikiを参照して驚いたのですが、ジェノサイドって、第1部でのこれ以外の出演が、顔見せ回の「ネクロンマンティック・フィードバック」と、チラ見せ回の「ネオサイタマ・インフレイム」だけなんですね。活躍できたのはこのエピソードのみ。ジェノサイド・ガールと、初期特有の「ヤモトを手伝う男」枠を組み合わせてみせたのは、「その手があったか!」となったものですが……そもそも、ジェノサイド・ガールの1人目がヤモトであったという。もしジェノサイドの出演が遅れていたら、ヤモトは本エピソードで発狂ベトコンの嫁枠に放り込まれていた可能性もある。スーサイドにシルバーカラスと、「手伝う男はもう居ない」第1部ヤモトにおいて、ジェノサイドは「死に分かれる前からもう死んでいる」というとんちめいた理屈(?)によりその呪いをすり抜けたわけですが……「生存」を旗に掲げたサワタリが真っ向からその呪いを打ち破るのもちょっと見てみたかったかもしれません。

未来へ…

 シ・ニンジャまわりのエピソードが展開されており、敵の得物がハッポースリケンと、絵面だけみたらAOMのエピソードみたいになっているのが、なんだかおもしろいですね。これらの部品の配置は、当時から精緻な計画をもって成されていたのか、モーゼス&ボンドのローカルコトダマ空間に本人たちも意識しないニンジャ・レコードがあったのか、それともただの偶然がもたらした「縁」なのか。いずれにせよ、さすがにグレネディアがサツガイ関係者だとは私も思いませんが……。

 グレネディアさん、本人の得物のしぶさもさることながら、クローンヤクザを非常にうまく運用していたところも好もしいニンジャです。私は、クローンヤクザをうまく動かして、強いニンジャユニットを実力を発揮させず追い詰めて殺すのが好きなんだ。なんなら古代リアルニンジャもクローンヤクザで殺したい。INWが事前にしっかりホウレンソウをし、マンティコアとの連携がとれていたならば、金星をあげることも夢ではなかったと思います。マンティコアさん、びっくりするくらい強かったし……。ネザーキョウのチェックメイトさんと並び、アマクダリ所属でなかったことが強く惜しまれるニンジャでした。

■物理書籍版で2021年12月26日に再読。