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【2018忍殺再読】「ショーグン・アンド・ニンジャ」

情報密度と残酷密度が高い

 待ちに待ったサムライニンジャスレイヤーの続き……ですが、主人公キルジマの登場しない幕間的な一話。侍忍殺、今のところ年一更新ペースですけども個人的に大好きなので月一ペースくらいでやって欲しいぜ……。敵幹部の派遣要請、悪の組織の親玉と僕の会話、凶暴動物に殺されるモータルと凶暴動物を威圧するニンジャと、「ネオヤクザ・フォー・セル」を思い出す要素の多いエピソードですね。サラリマンが人喰いズワイガニプールに落ちてアババーッというパルプ的コミカルさのある描写と比し(よく考えると何もコミカルじゃないですけど)、オイランがワニに食いちぎられ絶命する様がじっとりと描かれる残酷味は何ともこのシリーズらしい。

 それにしても情報密度よ! 名鑑や本編地の文の語りの上で聞いた古のニンジャたちがポンポン出演するわ、プロトタイプ版を思い出すザイバツ所属ヘルカイト(旧版)が登場するわ、エド徳川のエドが江戸ではなくエドワードだわ、鷲の翼の由来が古代ローマであることが示されるわ(スパルタカスがアマクダリ配下にいたのもそういうことだったんですかね)、歴史の闇にみだりに触れるのはやめるがよかろうという気持ちになりますね。頭がパンクするぜ。特に興味深いのは元祖ザイバツがエド徳川と敵対関係にあること。我々の知るザイバツの主であるロードは、後のショーグン・エド徳川の直系を名乗っているんですよね。あの「ザイバツ」がいかに砂上の楼閣であったのか、妄想の上に築かれたごっこ遊びのパッチワークであったかがよくわかる。それとも、ロードが言うショーグンはアケチの方を指していたのか?

将軍と忍者

 それにしても『将軍と忍者』というタイトルから通常想起させられるのは「将軍に仕える一人の忍者の物語」なわけですが、忍殺においては立場が逆、将軍側がニンジャに頭を垂れているというのが何とも奇妙でおもしろい。それにしてもオヤカタサマは思想が先進的で凄いですよね。テックもない、ネットワークもない、純カラテでモータルを表から圧倒できる時代において、エーテルの減衰や銃の発明から、表立ってのカラテ支配をやめようと判断し、その方針を組織レベルで実行している優秀さ。彼は、トリロジー時代のニンジャの立ち位置(言うなれば、小説『ニンジャスレイヤー』におけるニンジャのベーシックスタイル)である「モータルたちの社会を裏から操る陰謀論の住民」を作り上げたニンジャであるわけで、そう考えると大変重要なポジションにいますよねえ。そして現在時系列であるAOMでは、ニンジャは陰謀論の闇から姿を現し、暗黒メガコーポと共に表立って世界の各地を支配している……。ニンジャスレイヤーの殺戮と共に、歴史はリフレインしているのだ。

■note版で再読
■12月23日