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【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(2020.4.26)

 一ヶ月も何サボってんだてめーという感じですが、どうぶつの森で忙しかったので勘弁してください。残り一つの化石が全然引けなくてもがき苦しんだり、ブルースくんから採取したノミを彼の自宅の前に並べて己が畜生であることをわからせてやったり、ツネキチの船で私が半生をかけて愛して追ってきたセザンヌに私が用意してきた最後の4980ベルで橋をかけたり、忙しい日々を送っています。ちなみに私の森は、現実時間で一日すぎる間に三日過ぎるので、時間の速度が三倍ですね。これはクッキングパパの作中時間と現実時間の関係と同じ比率です。つまり、クッキングパパの世界と私の森の時間の速度には九倍の差があるわけですね。あー、あと、ニンジャスレイヤー「ザ・ホーリイ・ブラッド」の副読本として、九十九十九の関連書籍をパラパラ眺めたりしてます。ジョジョのノベライズに九十九十九が出てくるのは流石にどうかしてると思う。JDCと舞城作品は全部持っているのですが、『妹はラノベの女神ちゃん』と『魔界探偵 冥王星O ジャンクションのJ』は引っ越しの時に捨てちゃったので、わざわざアマゾンで取り寄せることに……。


妹はラノベの女神ちゃん/酒井直行

 そんなわけでアマゾンで取り寄せたので再読。今は亡びし古の魔術書房、『スマッシュ文庫』が遺した現代に潜む怪奇の一つ。本と帯をパラパラ捲るだけでも「スマッシュ文庫妹組」「ひめキュンフルーツ缶の酒井Pが描く奇想天外メタ小説」「好評発売中!イモート・オブ・ザ・リング」など明かに正気を失った怪文書に脳を焼かれ、震えつつもページをめくると主人公のイラストに「九十九十九」という名が書いてあることに悲鳴が上がる。異様である。迫力がただごとではない。本作は、講談社ノベルスの『ジョーカー』(著・清涼院流水)の型式を倣いつつ、同出版社の『九十九十九』(著・舞城王太郎)をオマージュした作品です。それをなぜ講談社ではない出版社で(スマッシュ文庫の母体はPHP研究所です)、読者層も全く被ってなさそうなラノベレーベルでやろうとしたのか。全ては謎であり、「スマッシュ文庫だから」以外の説明を我々は持ちえません。「原典の劣化コピー」という題材を傑作に仕上げたオマージュ元とは異なり、本作は純粋に「原典の劣化コピー」として組まれた作品であり、一言で言うならおもしろくないのですが、そもそもがそういう基準で使用すべきレリックではないと私は思います。


地球平面委員会/浦賀宏之

 平成初期を感じさせる表紙のセンスが強烈な、浦賀和宏の幻冬舎文庫デビュー作。「名探偵エラリー・クイーンの子孫が、大学で地球平面説を信じるサークルに勧誘される」という奇妙奇天烈なあらすじの一冊ですが、そのあらすじにふさわしく、その結末にはとんでもない真相が待ち受けます。どれくらいとんでもないかと言うと、これは最早悪ふざけではないか?と若干腹が立ってくるレベルでとんでもないです。放火・盗難・殺人・凍害と言った事件の全てが、真相を表す「たった一言」で解き明かされる、恐ろしく鮮やかな作品でもあるのですが、何度も言う通り真相が突拍子もなさすぎて「鮮やかだからなんだってたんだよ!」とやさぐれてしまいます。酔っぱらった勢いで思いついたような冗談を、商業レベルにまで高めてしまう浦賀先生の筆力と、その筆力を何故かこんなことに使用してしまう茶目っ毛に乾杯。真直ぐな賛辞ではなく、「偏愛すべき一冊」とでも呼びたくなる。


ゴールデンカムイ(15~21巻)/野田サトル

 19巻以降の新刊を読み逃していたので、樺太編をまとめて再読。網走監獄編までのお話は、杉元佐一という主人公を、ひたすら怪物(刺青囚人)とマッチメイクさせることで、「怪物に片足を踏み込んだ人間」として描いてくものだったと思います。そして、樺太編において、彼の比較対象として……もう一人の主人公として大舞台に立ったのは、「人間に片足を踏み込んだ怪物」である尾形百之助というキャラクターでした。二頭の怪物未満・人間未満は、人間そのもの・怪物そのものとでも呼ぶべき大きな意思に導かれ、交錯し、衝突し、各々が各々の回答を相手の肉から千切り喰らおうと殺し合う。しかし、尾形の他者の共感を求めるサイコパスとでも言うべき、矛盾を内包した造詣の秀逸さには舌を巻きますね。生きているだけで周囲の人間を地獄行き心中に巻き込み続ける害獣。グロテスクで粘着質な有害性。身の危険を感じるがゆえに一刻も早く死んで欲しいキャラクターであり、それは彼がこの上なく魅力的である証明です。


ニンジャスレイヤー・キョート・ヘル・オン・アース(5巻)/田畑由秋・余湖裕輝、ブラッドレー・ボンド・フィリップ・N・モーゼズ

 タイトルと著者が長すぎて圧迫感が……。第一部までは「宿敵」という記号でしかなかったダークニンジャに、理由の血肉が通い、ドラマのエンジンが駆動する。長編漫画として再構成により、エジプト探訪パートが超圧縮された結果、ものすごい密度でニンジャ真実が詰め込まれた悪い夢みたいな仕上がりになっており、凄い。視神経からインストールした瞬間、大々容量の情報が脳内で展開し、ばくはつし、死ぬ。この調子でゆくと、第二部最終章はかなりとんでもないことになるのではなかろうか。読んで大丈夫なのだろうか。あと、本編において未だ謎を残しているラオモト懐刀時代のダークニンジャの心情について、過去回想に結びつける形で保管がなされていたのがとてもおもしろかったです。無印、第二部に入って原作からやや逸脱した部分を見せ始めたことで、おもしろさがぐっと上がったと思うんですよね。漫画に血肉が通ったような……まさにこのダークニンジャのように……。