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【小説】恋恋蓮歩の調理法

 森博嗣の小説に衣をつけて揚げて食べるのならば文庫版『恋恋蓮歩の演習』が最適である。ただし書籍は筋が多いので事前に水に漬けておく必要がある。また、特製しおりは刻んでのせればいいアクセントになる。昨夜の夢の中で私が出した結論であり、夢の中で実際に試してみたところ絶妙な厚さとしっとりとした触感が大変美味であり、その結論が間違っていなかったと証明されました。他人の夢の話はこの世で一番つまらない話だという噂もありますが、つまらない話をしてはならないという決まりはないのでたまにはつまらない話をするのもよいでしょう。You May Die in My Show……

■恋恋蓮歩の演習 A Sea of Deceits
 文庫: 456ページ
 出版社: 講談社
 梱包サイズ: 14.8 x 10.6 x 2 cm

 同書のノベルス版はサイズが大きい割にページ数が少なく、歯触りという点で文庫版に劣るでしょう。何より色味が白く旨味が少ない。講談社ノベルスという媒体のスパイスで補うにしてもやはりどこか物足りない。同シリーズの他の作品はどうでしょう。文庫版『黒猫の三角』は揚げるときに油断するとバラバラにほぐれてしまいます。人工味の強い味もあまり好みではありません。漫画版? 漫画は食べ物ではありません。S&Mシリーズはどうでしょう。ノベルス版に関しては恋恋蓮歩と同様。たとえば旧文庫版の『有限と微小のパン』は分厚く、脂身も多く、揚げるよりもじっくり時間をかけて煮込んだ方がよいでしょう。新文庫版は、何というか、味がしなさそう……。具材ではなくすり潰して衣に混ぜるとよいかもしれません。Xシリーズの『タカイ×タカイ』は食感のよさでは恋恋蓮歩に勝るものの、油を吸い過ぎるので揚げ物には向きません。Gシリーズは食べるには硬いですね。細かく刻んでしがむと『τになるまで待って』からは心地よい冷感を得られます。口臭の防止によいかもしれません。

 ハードカバー版『スカル・ブレーカ』は高級食材ですので自分で揚げるのではなくプロに調理を任せたいところ。文庫版『的を射る言葉』は軽い歯ごたえの割には味付けがスパイシーなので衣揚げではなく素揚げにしてつまみにしたいですね。『森博嗣の 浮遊 研究室 5 望郷編』は高温で溶けるため調理は難しいですが限りなく正解に近いと思います。しかしできれば適当なサイズにカットして串に刺して頂きたいですね。味は十分についているのでソースは必要ないでしょう。『ペガサスの解は虚栄か?』は揚げてしまうとその魅力である香りが飛んでしまいますし、背表紙の苦味だけが口に残り燦々たる有様です。ハードカバー版『奥様はネットワーカ』は既に調理が終了しています。しかもお菓子の部類ですのでこれ以上の調理は必要ないでしょう。講談社文庫版『女王の百年密室』は毒があるので食べられません。以上より、しっとりとした触感に優れ、脂分も少なく、分厚さも手ごろで、クリーミーな旨味を持つ文庫版『恋恋蓮歩の演習』こそが衣揚げに最適と考えられます。砕いた『有限と微小のパン』を衣に、ハードカバー版『ゾラ・一撃・さようなら』で仕立てたソースをかけて食べるとより美味しく頂けるかもしれません。皆さまの食レポをお待ちしています。