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逆噴射小説大賞2018

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逆噴射小説大賞の投稿作品です。
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記事一覧

逆噴射小説感想戦(続編)

 ウワーッ!一次選考五作通った!マジかよ!嬉しい!えっ五作!?マジで?十一作投稿して五作…

歯抜けの犬は肉を噛めない/禿げ猫は昔の夢を見る#1

〈禿げ猫〉について覚えていること。全身無毛。爪に毒。妖猫のような瞳。女。本名不詳。  三…

逆噴射小説大賞感想戦(後編)

 いやー大盛況の内に終わりましたね逆噴射小説大賞! あと二日ある? 残り二日分の投稿作を書…

温泉街の怪人

 痛みで熱を帯びた呼気は、足湯から立ち上る湯気よりも白かった。  踏み抜く雪に腹から垂れ…

緋色の改竄

「対象はこのメスね。遺失?私有?」 「遺失ですね。第二種小型遺器物・遺失二十五号」 「あー…

完璧なディストピアの作り方

 地上を舐め尽す警報音に追われ、僕は廃棄場の底にいた。  〈オルダ〉の多脚刺肢に貫かれ、…

歯抜けの犬は肉を噛めない

〈禿げ猫〉について覚えていること。全身無毛。爪に毒。妖猫のような瞳。女。本名不詳。  三十分。絞め殺すのにそれだけの時間を費やした。可愛らしい、小柄な老婆だった。爪に垢が詰まっている。老眼鏡の奥で白内障の瞳が濁っている。ずり落ちた鬘の下には綿毛のような白髪。表の名札には、当然〈禿げ猫〉ではなく桜井葉子という名が書かれていた。  復讐の必要はない。五十年前、そう告げて死んだ依頼人の名は思い出せない。無数の仕事の中に埋もれた失敗をなぜ今更思い出したかもわからない。理由が追い付

二人の寸刻みシアター:邦画編

「ジャズ大名って映画わかるかな」  僕の問いにコグレは首をぶるぶる横にふった。 「貧乏藩…

さよならエニグマまたいつか

四人の編集者と組んで暗号を解いてもらいたい。見事解き明かした組には遺作の出版権と日本最高…

逆噴射小説大賞感想戦(前編)

 作者のあとがきは蛇足だという説がまことしやかに語られる昨今ですが私は作者のあとがきを読…

泥斬り稼業

 ドブ長屋のクズ共が死んだ理由は三つある。五日続いた豪雨と、役人が積み上げた鉄屑と、貧乏…

空色グルメ

 アルカリ電池単三20本入り3つ 3600円。  マンガン電池単一2本入り5つ 1000円。  コイン…

アルキメデスの詭弁

「現実とはある程度自由に改変できる代物だ。たとえば今、私は私の性別を女だと認識しているが…

マリッジブルーと沼の城

 生暖かい吐息が顔に吹きかかり目を覚ます。まず聞こえたのは天幕が引き破れ支柱が折れる音。続いて見えたのは産毛のはえた老木のような肌だった。  沼すすりだ。  手垢が擦りこまれた猟銃を掴み、轢き潰されつつあるテントから慌てて逃げ出す。温厚な生物ではあるが人を食うことに躊躇いはない。充分に離れた後、木の根に腰を下ろしてその捕食の様子を見守る。沼ごと屍肉と魂を啜るその生態は強く忌避感を呼び起こす。頭部の噴出口から木々に吹きつけられた未消化の魂が森の緑を生前の視界に変換し、その色