見出し画像

もう時効なので書くよ #029 それ、シメてくれるかな? David Sanborn

 1999年にアルバム”Inside”をリリースしたタイミングで来日したデビッド・サンボーン。当時はエレクトラ・レーベル所属だったので、ブルーノート東京の公演を観に行かせてもらった。「へへ、役得」と思っていたら、好事魔多し。ワーナーの営業関連の招待客がいるのでアテンドして終演後デビッド本人に会わせてやってくれと営業セクションから頼まれました。

息子さんが一緒かぁ?(チョット嫌な予感)

 ライブの前にその招待客と名刺交換すると、某卸店の部長さんでサックスを習っているという中学生くらいの息子さんが一緒でした。
 ライブ(素晴らしかった!)が終了し、あらかじめ決めていた待ち合わせ場所で親子と合流し、そこで待っていてもらい楽屋の様子を見に行くと担当ディレクターから「今、OKですよ」と。当時のブルーノート東京の楽屋は確か厨房の横を抜けて行くような作りになっていて、調理人にぶつからないように気をつけながら親子を案内しました。

ジャズ系の人は気さく?

 ところで、ジャズ・ミュージシャンには気さくな人が多いような気がします。ライブが終わると平気で客席をうろついて知人を探したり、そこでリクエストに応じ気軽にサインしてくれたりする。以前訪れたニューヨークのブルーノートは楽屋が二階のトイレの隣で終演後トイレから出た人が皆、楽屋前にいたチック・コリアに握手を求めていて(手ぇ洗ったか?)、笑顔で次々に握手するチックにフランクな人だなぁと思ったものです。

狂喜乱舞からの阿鼻叫喚

 さて、デビッド・サンボーンの楽屋に親子を通すと、まさに狂喜乱舞。挨拶もそこそこに息子さんはマジックペンを取り出し…

「こ、このサックスケースにサインして下さい!ああ英語でなんて言えばいいんだろ?」
「David,Autograph,please」と簡単に通訳しながら、見守っていると
「あ、このストラップにもサインお願いします。ありがとうございます!感激です!」とフルエテいる息子さん。
父親もテンパっていて「お前、せっかくの機会だから他にもサインしてもらうものないのか?」
「ええっ、どうしよう?もう無いや…。そうだ!写真撮ってもらっていいですか!?」
「Why don’t you take a picture with them?」 と私。
するとデビッドは笑顔で...「Sure! Before that,why don’t you close the cover of the pen.It smells.」
「デビッドさん、な、何て言ったんですか?」息子さん英語がわからず尋ねてきた。
「いや、そのマジックペンのフタを閉めてくれと。匂うから」
「うわぁああ、すみません!すみません!お父さんフタどこ?どこ?」
「え?フタ?あぁっ、私が持っていた。これだ!閉めなさい、閉めなさい!も、もうしわけありません!」

 阿鼻叫喚とはこのこと…。

 やっと記念撮影できて、何度もお礼を言う親子を送り出してから、デビッドに「Thank you very much and sorry about that pen.(ペンの件ごめんね)」と言うと「No problem,but I‘m week in that smell.(あの匂い苦手なんだわ)」と苦笑していました。

次回 特別編02 史上最高のDIVAは誰だ?① Barbra Streisand はこちら

*今回は音楽だけです。歌っているのはエリック・ベネイとカサンドラ・ウィルソン。オリジナルのアレサ・フランクリンも良いのですが、私はこのバージョンにもグっときます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?