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もう時効なので書くよ #027 まさかここでそれ忘れる!?早く言ってよぉ! Billy Sheehan(MR.BIG)

 以前も書きましたが、MR.BIGは私がワーナーに在籍していた際に最も長く深く関わったバンドでした。

アメリカでは一発屋扱い?

 そもそも彼らは本国アメリカでは1991年にビルボードHOT100で4週連続1位になった”To Be With You”のみの一発屋と思われている節がありましたが、日本や韓国などアジア圏の人気が高いことから親レーベルのAtlanticは契約を継続していて、そこに応えるべく日本は頑張り、1996年のアルバム”Hey Man”と”Big,Bigger,Biggest! The Best Of Mr. Big”はオリコン1位を獲得しましたし、ベスト盤の方はミリオン・セールスも達成しました。私は宣伝課長として宣伝プランを全て作り、更に制作ディレクターと共に渡米してレコーディングに立ち会ったり、ジャケットの打ち合わせをしたりして日本市場向きに売れるモノを作っていました。

ミュージックステーション出演の条件は?


 “Hey Man”のプロモーションの時、ミュージックステーションに出演オファーをしていました。洋楽アーティストの出演はかなりハードルが高く、局側から新曲の”Take Cover”だけではインパクトが弱いので、有名な「ドリル奏法」を披露してくれるなら出演を検討するという話になりました。これはMakitaという名古屋の工業メーカーのドリルにプロペラのように三枚のピックを取り付けてギターとベースが回転弾きでユニゾンするというもので、ステージでも人気の高いコーナーにもなっていました。早速メンバーに相談しOKをもらい、晴れて出演決定!

ビリーだけ放送当日入りだった

 そして放送当日になりました。他のメンバーは前日に日本に入りましたが、ビリー・シーン(B.)だけは別件があり当日の、しかもリハーサル直前になるということでしたので、やきもきしながら待っているとスタッフからビリーが到着しました!と連絡が。よし!と迎えに行きました。

ビリー到着!...ところが!?

「ビリー、こっちだよ。ここが控室、もうみんなスタジオに行っているから着替えて着替えて!そうそうドリル用のピック出しておいてくれるかな?ドリルにつけておくから…。」
「ピック?…あ!忘れた!」
「え!?何言ってんの?またぁ、ピック出してよ」
「いや多分、昨日家出るときに入れておかなきゃ、とは思ったんだけれど…(ガサゴソ鞄をかき回す)。やっぱ無いや。ワリイ,Shuji」
「……分かった、何とかする」

爆怒られる!の巻

 何とかできるわけ無いのですが、もうしょうがないですよね。因みにギターのポール・ギルバートはちゃんと持って来ていましたがそれも一個しかない。このプロペラピックはかなり作り込まれており、急場で作れるようなものでもない。肚を決めて番組ディレクターのところに行きました。

「あのぉ、すみません。ベースがドリルで弾く用のピックを忘れまして…」
「え!?何言ってんの?何とかしてよ!」
「特殊仕様なので、どうしようもなくて」
「こっちは遊びでやってんじゃねぇんだ!」
それまでの生涯で経験していないほどの大声で怒鳴られました...。 

リハーサル、そして本番は!?

  でもリハーサルはしなくては。するとビリーとポールが何やら相談しています。結局一台のドリルでポールが自分のギターを弾いた後ビリーのベースも弾くパフォーマンスをしてくれ、それはそれでカッコ良かったのですが番組ディレクターはむっつりしたまま。
 そして迎えた本番生放送。一台のドリル奏法でも、初めて見たタモリさんはじめ出演者には大受けでメチャクチャ盛り上がりました。良かったぁ〜!
 番組終了後、改めてディレクターにお詫びに行くと「いやぁ、良かったよ!バカ受けだったね!さっきは怒っちゃってごめんねぇ!ありがとう!」とお礼まで言われちゃいました。

 以来、事前持ち物チェックを徹底するようになったのは言うまでもありません。

次回 #028 きみはTOO SHY! Jewel はこちら



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