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ヴェル兄と蘭堂の異能力名について(お題箱から)

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
※お題箱に頂いたお題への返信です。

頂いたお題はこちら:
蘭堂の異能の名前についてです。

ヴェルレーヌと蘭堂は名前を交換していると小説でありましたが、蘭堂の異能の名前は『イリュミナシオン』のままです。
なぜ異能名は、文豪 ランボーの書いた本のままの名前なのか、
そして、なぜヴェルレーヌの異能名を朝霧カフカ先生は教えてくれないのか、考察してくだされば感激です。⁠


お題ありがとうございます!ストブリで名前を交換したこの二人…いいですよねっ。名前と異能名の組み合わせがなにやらややこしいので、これを機に整理してみたいと思います!

ここから先はわかりやすくするために、文ストキャラを指しているときは「ヴェル兄」「蘭堂」という呼び方にしますね。

ヴェル兄と蘭堂は名前と一緒にたぶん異能力名も交換しているのではないかなと思うのですがどうでしょう?
この辺いつも頭がこんがらがってしまうのですが、もともとのヴェル兄の名前はランボオで異能名『イリュミナシオン』、それが交換されることで蘭堂の名前がランボオになり異能名『イリュミナシオン』になる。
(ほんとにこれで合ってる?誰か間違いに気づいたらおしえてください)

名前を交換すると異能名も一緒に交換されてしまうのなら、やはり文豪の名前と作品名(異能名)の繋がりはとても強固なものなのだということかもしれません。

蘭堂の異能名になっている『イリュミナシオン』はランボオが出した数少ない詩集のひとつです。
詩人がモデルの場合、異能名はだいたい詩の題名(例:汚れっちまった悲しみに、真冬のかたみなど)から取られることが多いようですが、ランボオの場合は詩の題名ではなく詩集の題名から取られているのが少し特異な感じがしますね。

一方のヴェル兄の異能名は明かされていませんが、カフカ先生はなぜ教えてくれないのか、ですか…!
それはもうカフカ先生が秘密主義者だからということくらいしか私には理由が想像つかないのですけど、なぜなんでしょうね~?異能名くらい教えてくれたっていいじゃんって思いますよね。
ということで教えてもらえないのならいっそのこと勝手に妄想してみましょう~。

異能名も交換しているのであれば、ヴェル兄の異能名はヴェルレエヌの詩集から取られているのかなと思いますのでいくつかの側面から検討してみようと思います!

1.獣性の制御呪言
ヴェル兄が門を開くために唱える制御呪言の詩があります。

汝が憎しみ、汝が失神、汝が絶望を、
即ち嘗ていためられたるかの獣性を、
月々に流されるかの血液の過剰の如く、
汝は我等に返報ゆなり、
おゝ汝、悪意なき夜よ

文豪ストレイドッグスSTORM BRINGER P. 324

この詩はランボオの詩で、中原中也訳『ランボオ詩集』の中の「やさしい姉妹」という詩から採用されています。
制御呪言はランボオの詩なので、名前を交換する前のものをそのまま使ってるということになりますね。
ちなみに、中也の汚濁の制御呪言は『山羊の歌』に収録されている「羊の歌 - I祈り」から来ていて、異能名の『汚れっちまった悲しみに』とは特に関係がないので、制御呪言の詩の題名が必ずしも異能名になるわけではなさそうです。

2.蘭堂とヴェル兄に名前を交換させた理由
では、そもそもなぜ蘭堂とヴェル兄は名前を交換したのでしょう?
確かなことはもちろんわかりませんが、個人的な解釈として、名前の交換は二人の史実の関係性から親密さを演出するために行われたのではないかなと考えています。

この二人、史実では恋人関係でベルギーやロンドンを二人で旅行しながらずっといちゃいちゃしていたことは皆様ご存知でしょうか。いちゃいちゃといってもふたりとも過激な詩人なのでいちゃつきぶりもひどく過激なんですけど、とにかく濃密で密密なふたりなのです。
『月と太陽に背いて』という映画(レオナルドディカプリオがランボオ役)にもなっていて世間が注目するほどのやばいふたりなので、名前や異能の交換はそういった親密さの演出だったりするのかな?ストブリで最後にふたりが融合していくあたりも史実の二人の関係性を非常に美しい形で昇華させているなあと感じています。

以前に考察を書いたことがありますので、よろしければ。

3.ランボオを想うヴェルレエヌの詩
ということでこんなふたりなんだから、もしかしてもしかすると異能名も「お互いを想って書いた詩集」から取られていやしませんかね?

ランボオの『イリュミナシオン』はヴェルレエヌの提案で出版された詩集で、中に収録されている詩もヴェルレエヌとともに英国に滞在していたときに書かれた詩がほとんどだと言われています。なので『イリュミナシオン』にはヴェルレエヌの存在が色濃く反映されていることが伺えます。

ではヴェルレエヌの詩はどうか。
ヴェルレエヌの詩集の中で、ランボオと過ごした日々を想いながら書かれた詩集だとされているのが『言葉なき恋歌』です。ランボオを撃ったことで刑務所に服役していたヴェルレエヌが、友人づたいに出版した詩集であり、物憂うような悲しい詩が多く収録されています。
蘭堂を失ったヴェル兄の心情を映し出すかのような哀愁漂う詩も多いので、ヴェル兄の異能名がこの詩集の中の詩から取られたらいいなあと思ったりしてます。
個人的に気になっているのは、この一編。

巷に雨のふるごとく
我が心にも涙ふる
かくも心に滲み入る
この悲しみは何ならん?

やるせなき心のためには
おお、雨の歌よ!
やさしい雨のひびきは
地上にも屋上にも!

消えも入りなん心のうちに
故もなく雨は涙す。
何事ぞ!裏切りもなきにあらずや?
この喪その故を知らず。

故知れぬかなしみぞ
げにこよなくも堪えがたし
恋もなく恨みもなきに
わが心かくもかなし!

ポールヴェルレーヌ『言葉なき恋歌』(堀口大學訳)

世界で一番大切なものを失ってしまったヴェル兄の心にいかほどの悲しみが流れているのか、心臓に灯り続ける蘭堂の温かみがどれほどヴェル兄の感情を突き動かすのか、そんなことを想いながらヴェルレエヌの詩に目を通してみるのも素敵かなあと思います。

と、夢を語ってきましたがここで現実のお話。
海外の作品って、ご本人の著作権は切れてても翻訳者の著作権が切れていない場合、きっと自由には使えないのですよね?あれ、違うかな?
ヴェル兄の異能名がないのは自由に使える邦訳された詩がないから、という可能性も?(以前相互さんに教えてもらった上田敏さん訳だったら使える?)
米国勢は異能名が作品名そのままの人とちょっといじってる人とが混在していてどうなのか微妙なところ...
イリュミナシオンはあれですかね、仏語の発音をカタカナにしただけだからいけたとか?そういうこともあったりするのかもしれませんね。

ランボオとヴェルレエヌについては相互さんが情報量に富んだ記事を執筆されてますのでぜひこちらもご覧ください。


楽しいお題を頂きありがとうございました!

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