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ストブリの史実。ヴェルレエヌとランボオ。

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
小説STORM BRINGERのネタバレを含みます。

史実では恋人同士であり、悲劇的な別れをしたヴェルレエヌとランボオ。
そんな二人の関係性をストブリの作中で永遠の愛に昇華させたのはあまりに美しい。


二人の出会いの始まりは、ランボオがヴェルレエヌに宛てた一通の手紙。そこにはランボオの詩「酔いどれ船」が綴られていた。
ヴェルレエヌはその詩に魅了されて、ランボオをパリへ呼び彼と対面を果たす。ランボオの美しい姿と詩の才能にたちまち虜となってしまったヴェルレエヌ。
二人は必然のように恋に落ちていく。
ヴェルレエヌはその時すでに妻がいたが、ランボオへの愛情は止まることを知らなかった。

二人はしがらみから逃げるように放浪の旅に出る。
パリからベルギーへ、ベルギーから海を渡ってロンドンへ。
移り行く情景の中、二人の感性は美しく交差した。
濃密で奔放な二人だけの時間。愛を語り合う日々。
人生の絶頂と言ってもいい蜜月な関係の中で、ランボオは永遠を詠う。

「永遠」

また見付かつた、
何が、永遠が、
海と溶け合う太陽が。

アルチュールランボオ「地獄の季節」小林秀雄訳

そうしては二人は2年近くをともに過ごした。
しかし、失いたくないと思うものは必ず失われる。
妻との復縁を望み続けるヴェルレエヌに嫌気が差したランボオは、ついに別れを告げる。
ランボオから放たれる別れの言葉にヴェルレエヌは逆上し、勢いに任せて銃を撃った。
ランボオに向かって二発。
一発がランボオの左手首を撃ち抜いた。

弱さと弱さがぶつかり合い、火花を散らして彼らを引き裂いた。
お互い未熟だったのだ。これ以上、どうすることもできない。
甘美な日々は、立ち込める煙と舌を刺すような苦みを残して幕を閉じた。

その後ヴェルレエヌは逮捕され、獄中で生活を送る。
入獄中にヴェルレエヌは、ランボオと過ごした日々の記憶を辿り、詩集「言葉なき恋歌」を出版。
一方のランボオは詩集「地獄の季節」「イリュミナシオン」を世に送り出し、21歳の若さで詩の世界を去った。
旅をして語り合った時間はあまりに新鮮で刺激的だったのだろう。
二人の感性の共鳴が織りなす旋律は、その後も互いの人生の中で鳴り止むことはなかった。 
あの輝かしい日々を上書きできるほどのなにかは、その後二度と現れることはなかった。
肩を並べて海を眺めたあの時、二人は確かに永遠を見たのだ。

そしてその永遠の情景は、時を超え、世界線を超え、再びストブリで輝きを纏う。
もう今度は決して離れることはない。君は僕の中で生きる。僕は君と生きる。二人は混じり合う。
海であるヴェルレエヌと太陽であるランボオ。
彼らは穏やかな夕陽が海に沈むごとく、地平線の彼方で混じり合い、溶け合い、ひとつの輝きとなって永遠のときを進む。
吹き荒れる嵐を終え、ようやく見つけた二人の憩いの地。旅の終着駅。
時空を超えて、二人のこころは再びひとつとなる。
暖かな永遠をその胸に抱いて。


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