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薔薇色のとき   #詩

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鋭く尖った真新しい棘に だれもが皆 色濃くて柔らかい花びらをのせていた
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薔薇色のとき

終わることのないおしゃべりの中には

夫のこと 子供のこと 朝のニュース

持ちきれないほどの愛をかかえて

だれもが皆

おだやかに疲れている

終わることのないおしゃべりの中には

ゆっくりと戻されていく あの頃の私たち

もうここにはない わがまま 涙 タバコの煙

鋭く尖った真新しい棘に

だれもが皆

色濃くて柔らかい花びらをのせていた

終わることのないおしゃべりの中で

今 ふりかえ

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今の深い静けさを

今の深い静けさを
私は神様に感謝しています

ほんの小さなハチの羽音で
ほんの小さな小鳥のさえずりで

この贅沢な孤独から
解き放たれることができるから

ぬくもり

生きているもののぬくもりを

あなたは知っていますか

心の優しい人だって

死んでしまえば冷たいけれど

どんなに醜い人だって

触れた時には温かいです

ダイヤより

雨上がりの小さな雫が

ダイヤよりもまぶしい時がある

あなたの小さな優しさが

それに似ていることがある

ほんの小さな木漏れ日が

真夏の太陽よりもまぶしい時がある

あなたを想う心の強さが

それに似ていることがある

海の雫

海の雫は どこの一粒

雨の雫は どこの一粒

海の青は どこの一粒

空の青は どこの一粒

海のにおいは どこの一粒

春のにおいは どこの一粒

私の心は どこの一粒

私の涙は どこの一粒

あの娘はいつも

誰かの胸が痛いとき

音もしないし

目に見えないし

今度は上手く気付けるように

あの娘はいつも笑うから

私もためしに笑ったら

あの娘の心が見えました

あの娘の涙が見えました

それでいい

どうしてそんなに上を向くの

どうしてそんなに手を広げるの

それでいいって知ってるの

生まれながらに知ってるの

誰も見てない花だけど

それでいいって知ってるの

それでいいって知ってるの

海が見えない

海が見えない部屋でよかった

海の色を想うことができるから

あなたがここにいなくてよかった

あなたをこんなに

想うことができるから

明日は明日の

明日は明日の風が吹く

そんなに泣くのはやめなさい

明日は明日の風が吹く

うつむかないで 空を見なさい

明日は明日の風が吹く けど

いま あなたが大好きだから

明日が来るまで泣かせてください

私が私であるために

私が私であるために

私がいつも望んでいること

あなたがあなたであるために

あなたがいつも望んでいること

ふたりがふたりであるために

大きな声で伝えたいこと

ふたりがふたりであるために

心の中でだけつぶやいていること

真赤な薔薇

決してかなわぬ想いなら

一度に散ってしまいたい

真赤なままで落ちてしまった

真赤な薔薇の花びらのように

一厘の花

道端に揺れている一厘の花が

一厘だけそこに咲いているのは

道ではなくて

誰かの胸の中にいるから

私が一人でも咲いていられるのは

あなたの愛の中にいるから

あなたが笑う日

会わないでいると嫌い

会えないから嫌い

一週間会えなければ もっと嫌い

だけど 電話の向こうであなたが笑う日は

空がこんなにきれいだし

風もこんなに気持ちよくて

だからあとで 私も笑う

すごいなぁ って思うから

本当に すごいなぁ って思うから

並木道

両側に樹が生えた並木道が好き

ひとりでいても きっとひとりじゃないから

空が狭くて小さくて

とても大事そうに見えるから

風が吹いたら葉っぱが揺れて

太陽の光はたくさんの木漏れ日になって

風や光に気づくのが

私だけじゃなくてすむから