薔薇色のとき

詩を書いています。 著書:「薔薇色のとき(2011.7)」

薔薇色のとき

詩を書いています。 著書:「薔薇色のとき(2011.7)」

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  • 薔薇色のとき   #詩

    鋭く尖った真新しい棘に だれもが皆 色濃くて柔らかい花びらをのせていた

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薔薇色のとき

終わることのないおしゃべりの中には 夫のこと 子供のこと 朝のニュース 持ちきれないほどの愛をかかえて だれもが皆 おだやかに疲れている 終わることのないおしゃべりの中には ゆっくりと戻されていく あの頃の私たち もうここにはない わがまま 涙 タバコの煙 鋭く尖った真新しい棘に だれもが皆 色濃くて柔らかい花びらをのせていた 終わることのないおしゃべりの中で 今 ふりかえる愛おしい日々 嬉しいことも 悲しいことも 笑った夜も 泣いた夜も ぜんぶ

    • 明日

      また今度、といつものように手を振って 改札をすり抜けた背中は もう昔のように 振り返ったりしない 私たちはいつから 大人になったのだろう 別々の舟に乗って 時間の川を渡っているよう 昔のように 明日は夢見るものでなく 明日は生きるためのもの 立ち止まってはいけないと 誰かがどこかでマーチをかけた #詩

      • 本当は

        君といる時 本当は 他に何も欲しくなかった けれど大人になるたびに 必要なものが増えていったね 決して満足しないことが まるで愛の証のように

        • 大人たちが言う 私はずっと夢を見ているのだと 大人になって私は言う 私ひとりがずっと覚めていたのだと そして今日も 夜のむこうで詩人たちはうたう この世界の 昼と夜のあべこべ #詩

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        • 薔薇色のとき   #詩
          19本

        記事

          夜が明けてゆくのを見ている 私が思っていたよりも 空はずっと白くって 夜と一緒に消えてゆく 昨日までのあれこれと それと一緒に消えてゆく 心の中のあれこれに サヨナラをして 嬉しくもなく 悲しくもなく ただ波の音だけがして 小鳥が一羽 もう一羽とやってきて 歌うから 何もなくなった私の心に ようやく朝が訪れました

          今の深い静けさを

          今の深い静けさを 私は神様に感謝しています ほんの小さなハチの羽音で ほんの小さな小鳥のさえずりで この贅沢な孤独から 解き放たれることができるから

          今の深い静けさを

          真白い花の花びらを ひとつ またひとつと開いてゆくと どこまでも花びらは 真綿のように 白く白く 柔らかいその蕾の中に 小さな小さな 私がいて 見上げるふたつの瞳には 何も映らず 宇宙のようにただ真っ黒で あぁそれでよかったと 私の心をなぐさめるのです

          今ここにある悲しみの 正体がわからない 涙は行き場所がわからないまま ひとつ前 もうひとつ前の悲しみへとつながっていって 私の深い悲しみは その悲しみが深すぎて なぐさめようと手を伸ばしても 届くようには思われないけれど 決して届かぬその距離を 夜空の月におきかえて その美しさにため息をついてみる

          真ん中

          思いのままに書き綴ってみるけれど まだあるのかな 心の真ん中に 私の知らない感情が 踏み込んでしまえばのしかかる 今あるすべてが立ち行かなくなる明日 あるのかな、と おどけながら 戦っている 大人として生きてゆく日々を

          あの娘は泣いた 誰にも気づかれないように あの娘は泣いた 自分の背中にのしかかった運命に あの娘は泣いた 果たせなかった約束に あの娘は泣いた ゴメンネと言い出せなかったことに ある日、気付けなかったこと全部 私のものになりました 優しい人になるために 優しい人になるために

          静かな 静かな 静かな海に 舟がゆく 舟がゆく 舟がゆく 生ぬるい風が吹く おだやかないい午後なのに ボクの心は せつなくて せつなくて 海へ乗り出してゆく あの小さな舟は まだ見ぬ世界に大きく胸をふくらませているというのに それを見ている ボクの心は せつなくて せつなくて せつなくて せつなくて まるで 夢の中にでもいるようなんだ #詩

          君とふたり 部屋にいるとき 小さな模型の街を歩くゴジラみたいで 私の心も部屋中も 君でいっぱいで 君とふたり 公園からの帰り道 前をゆく君をみて 驚いた とことこと歩くその肩が あまりにも小さくて 本物の空の下 君はまだあまりにも 小さくて小さくて ふと振り返ったその頬に そっと掌をあててみる

          ぬくもり

          生きているもののぬくもりを あなたは知っていますか 心の優しい人だって 死んでしまえば冷たいけれど どんなに醜い人だって 触れた時には温かいです

          ダイヤより

          雨上がりの小さな雫が ダイヤよりもまぶしい時がある あなたの小さな優しさが それに似ていることがある ほんの小さな木漏れ日が 真夏の太陽よりもまぶしい時がある あなたを想う心の強さが それに似ていることがある

          海の雫

          海の雫は どこの一粒 雨の雫は どこの一粒 海の青は どこの一粒 空の青は どこの一粒 海のにおいは どこの一粒 春のにおいは どこの一粒 私の心は どこの一粒 私の涙は どこの一粒

          あの娘はいつも

          誰かの胸が痛いとき 音もしないし 目に見えないし 今度は上手く気付けるように あの娘はいつも笑うから 私もためしに笑ったら あの娘の心が見えました あの娘の涙が見えました

          あの娘はいつも