創作おとぎ話 うさかめサイコロジー リュウグウ篇<連続3日掲載:中篇>
(前回までのお話) 小惑星「リュウグウ」にはオットー姫様とその一族のオットセイたちが住んでいました。オットセイのショーを楽しんだカメの石ちゃんとハヤブサは、帰り際にお土産をもらうことになったのですが・・・
「さあ、大・中・小、どれでもお好きなカプセルをどうぞ」
オットー姫が少しひきつった笑顔で促します。
それもそのはず。石ちゃんは昨日から一晩ずっと悩んでいるのですから。
「よし、決めました!真ん中のカプセルにします。オットー姫様、どうもありがとう」
ようやくお土産も決まり、石ちゃんたちは地球へと帰ることにしました。
カプセルと石ちゃんをつかんだハヤブサが大空へと舞い上がります。
ピシッと直立したオットセイたちが敬礼をしながら石ちゃんたちを見送ります。
やがて石ちゃんたちは星の輝きより小さくなって、いつしか見えなくなりました。
「長いこと迷っていたわね。量が違うだけで中身はどれも同じだったんだけどね。変に悩ませちゃったかしら」と言うと、オットー姫はひとつあくびをして、眠たそうにお城の中へと引き上げていきました。
さて、石ちゃんとハヤブサ。
星空の宇宙を飛ぶ中、いろいろあった冒険の旅を思い返します。
「大変だったけど、楽しかったなぁ」
地球には帰りたいけど、まだ帰りたくない・・・そんな複雑な気持ちです。
【ワンポイント心理学】
時間を忘れて何かの活動に没頭すると充実感が感じられます。「熱中」は幸福感を高めてくれるキーワード。日々の生活に何か熱中できる要素が組み込めるといいですね。
さて、ようやく懐かしの地球が見えてきました。
ところが、地表にグングン近づいて見えてきたのは見慣れない未来都市。
あの懐かしい動物村の面影はどこにもありません。
どうやら小惑星への旅の間に、とてつもなく長~い時間が過ぎてしまったようです。
あまりの変貌ぶりにあわてたハヤブサのおじさんは、「ちょっと仲間を探してくる」といってどこかへ飛び去っていきました。
ひとり残された石ちゃん。
足元のオットー姫様からもらったカプセルが目にとまります。
「リュウグウの岩石でも入っているのかな?」
何の気なしにカプセルを開けてみると・・・。
中から白い煙がモクモク、モクモク・・・その煙に触れた石ちゃんはアッという間に白いひげのおじいさんになってしまいました。
びっくりした石ちゃんは腰を抜かして、長いことその場で呆然としていました。
辺りはすっかり日が暮れ、空には満月が輝いています。
「ああ、時が一気に流れ去ってしまった。年をとって未来もない。手元にも何ひとつ残っていない。そして、誰もいない・・・」
石ちゃんの目に涙が光りました。
すると、真っ暗な山の方でも何かがキラリと光りました。
「なんだろう・・・」
石ちゃんの心がざわめきました。
とりあえず、山へと向かいます。なんだか心がはやります。
実際はカメの歩みですが、気持ちはどんどん先走ります。
そして山の奥の奥に分け入り、目にしたものは・・・。
まぶしい光を放った1本の竹。
急いでその竹を割ってみると、そこには白いもふもふしたものが。
おしぼりのタオルのように入っています。
「あっ、動いた!」
石ちゃんの声が暗闇に大きく響き渡りました。
(明日へつづく)
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