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台湾の朝食、西式早餐店(台湾式洋風朝食店)
台北市、新北市などの都市では朝食のための飲食店の選択肢は非常に多く、朝食として食べる食品の種類も驚くほど多い。朝食専門店として非常に普及している形態に、台湾小吃屋台、お粥屋や豆漿店(中華式朝食店)の他に西式早餐店的(台湾式洋風朝食店)という形態も存在する。
この西式早餐店(台湾式洋風朝食店)は1980年代に始まった、洋風のハンバーガーやサンドイッチ、トーストなどをメインにし、一部中華式、台湾式の伝統的な食品も売る朝食店だ。この西式早餐店は、台湾にまだマクドナルドが進出する前から始まっている。また、この形態の店は、各地でフランチャイズ展開されている場合が多い。(似たような名称や店舗設計でフランチャイズ店やチェーン店を装っているような店も見かける)
西式早餐店は「美而美(メイアーメイ:中国語)」という三文字が付いた店名が多くて、西式早餐店の一種の総称のようにもなっている。そもそも「美而美」という名称は林坤炎さんという男性が1981年に台北市八德路で西式早餐店を始めた時に付けた店名である。
林坤炎さんは最初、アメリカの野球場で観戦客がホットドッグを食べながら試合を見る文化に影響を受け、台北市内の野球場でハンバーガーを売る商売を始めた。しかし、思うように売れず、野球場の近くにある学校の近くで移動販売車を使っての販売に転向してみた。この商売はけっこう成功し、ハンバーガーやサンドイッチの需要が多くなっていることを感じ、台北市八德路に「美而美」という店名の西式早餐店(主な商品は値段の手ごろなサンドイッチとハンバーガー)を開いたら大成功した。
林坤炎さんは「美而美」という店名の商標権保護の登録をしないまま、兄弟や親類、知人などにも西式早餐店の商売の方法を教えて、フランチャイズ化していた。そして、さらに成功していくうちに、「美而美」という名称や類似した名称を使った類似店が台湾中に登場し、お互いに商標の権利を争う訴訟沙汰になり、判決の結果、それぞれお互いの系列店を区別するために1994年、林坤炎さんの系列は「巨林美而美」に改名し、他の系列の店は「瑞麟美而美」や「弘爺漢堡」「早安美芝城」などに改名することに決まった。
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西式早餐店は、豆漿店(中華式朝食店)のように同名店や類似名店が多く、店のデザインや設備も似たような場合が多い。特にこの類の西式早餐店で共通していることは鉄板焼きの設備が店の入り口のすぐ脇にあることだ。この鉄板の上で炒めたり、焼いたりといった調理をしたり、冷凍保存されていた食材に火を通したり、作り置きしてあったものを温めたりするのに使われる。この鉄板焼きの設備は入り口の脇にあるので、客は店員の調理の様子を見ることができる。
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「美而美」の名称が付いた西式早餐店以外で目立つ存在は「呷尚宝」というフランチャイズの西式早餐店だ。呷尚宝=食上飽(chia̍h siōng pá:チアションパァ=超お腹いっぱいに食べる/台湾語)を連想させる店名に目を引かれる。台湾では西式早餐店に限らず、台湾語の漢字当て字を店名にしたり、発音を英文字に置き換えて店名にしている商店をよく見かける。台湾語を学習していない日本人、外国人には気がつかない特徴だ。
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近年では「美而美」に代表されるような従来からあるスタイルの店との差別化を図るために、おしゃれで高級感のある店舗やスターバックスのようなカフェ風の店舗も増えている。そして、この高級志向のスタイルでフランチャイズ展開しているところもある。 高級店ではハンバーガーやサンドイッチに高級な食材を使い、見た目も高級感に溢れている。もちろん、こういったスタイルの店の商品価格は、1980年代からある従来の西式早餐店よりもかなり高めである。また、従来の西式早餐店では食べた後、すぐに店を出る客やテイクアウトする客が多いが、高級志向の店だと、食べながらインターネットを見て、ゆっくりくつろいでいたり、仕事の打ち合わせや勉強をしたりしている客が多いようだ。
西式早餐店の主な商品はハンバーガー類(台湾では牛肉を食べない人が多いので、豚肉か鶏肉、イカ、エビなどの海鮮などを使っている)、サンドイッチ類、トースト類(マーガリンとジャムを塗っただけのものから、肉類、海鮮類のフライ、ツナ、玉子、生野菜などを挟んだ物まである)、鉄板焼きそば、スパゲティー類、蛋餅(タンピン:中国語)と呼ばれる中華クレープと卵を一緒に焼いた物(ツナやハムなどいろいろな具を挟んでもらうこともできる)などの食べ物とコーヒー、紅茶、ミルクティー、豆乳などの飲み物だ。店によってはフレンチトーストやワッフル、パンケーキなどを売る店もある。
この類の店のハンバーガー類に共通しているのは、キュウリの千切りが挟んであることだ。マクドナルドやモスバーガーなどのアメリカや日本のハンバーガーを基準にしているファストフード店のハンバーガーには見られない特徴である。
また、3、4年前ぐらいから、おしゃれな店や高級店ではサンドイッチやトーストに粒入りの高級なピーナツバターを使うことが増えている。元々台湾では、以前からからある西式早餐店でも、肉類や生野菜を挟んだサンドイッチにピーナツバターを塗ることは割と一般的なことであった。だから、ピーナツバターを使う文化の発展形とも言える。モスバーガーのサンドイッチにもピーナツバターが塗られているし、その他のアメリカ系ハンバーガー店などでも、期間限定商品としてピーナツバターが使われたハンバーガーが販売されたこともある。
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西式早餐店で売られる商品のほとんどは中国語の名称を使い売買されるのが一般的で、ハンバーガーは中国語で漢堡(ハンパオ)と呼ばれ、サンドイッチは三明治と書かれ、中国語発音でサンミンツー(この漢字表記を直接台湾語で読むとしたらsam-bêng-tī :サムビイェンティ)と呼ばれるが、日本語の影響を受けたsăn-tó͘ (ló͘)-it-chì:サントォイッチィやサンロォイッチィ、またはsiôk(sio̍k)-pháng-kauh:ショッパンカウッという台湾語表現もある。ショッパン(ショックゥパン)というのは食パンのことで、教会ローマ字(白話字)表記でsiôk(sio̍k)-pháng またはsiôk(sio̍k)-khú-phángと書かれる。また、sán-ūi-chì:サンウイチィという英語の影響と思われる言い方もあるようだ。
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そして、本来は豆漿店(中華式朝食店)で売られるような蘿蔔糕(台湾語では菜頭粿/chhài-thâu-kóe :ツァイタウクエ=大根もち)や韭菜盒と呼ばれる中華パイ(中にニラ、春雨、挽肉、玉子、干し豆腐などが詰めてある)、饅頭(台湾語発音でbán-thô:バントー=中華マントウ)、鍋貼(細長い形の焼き餃子)、杏仁茶(台湾語発音でhēng-jîn-tê:ヒイェンジンテェ=きょうにんのパウダーを溶いた飲み物)などの中華系食品を提供する店もある。また、豆漿店のほうでもハンバーガーやサンドイッチなどを売る店があるので、両者の商品構成が少し似かよっていたりすることもよくある。中華式朝食も洋風朝食もあることを強調したい店だと、看板に中西式早餐店と表記してある。
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商品はすべてテイクアウトができるので、会社や学校へ行く前に買って、会社や学校で食べる人も多い。自宅に持ち帰って食べる場合は自分でアレンジもできる。たとえば、自宅にある他の食材や料理とミックスしたり、商品を別の料理に変えてしまうこともできる。主に第二次大戦後に台湾へ移住した中国人の家庭では韭菜盒と呼ばれる中華パイを細かく切り分け、炒めて、別の料理にして食べる方法がよく行われてきたようだ。この類の料理は眷村(中国出身の軍人や公務員とその家族が住むコミュニティー)で生まれた料理なので、眷村菜と呼ばれたりする。筆者は中華パイのアレンジのみならず、外で買ってきたハンバーガーやサンドイッチなども自宅で細かく切り分け、炒めて、別の料理にすることがある。これらはなかなか面白い食感の炒め物料理になる。
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