日本人の中国語発音
先日、妻を通じて、ある日本人(妻の知人)から中国語の「到」の発音はカタカナで書く場合「ダオ」ですか?と聞かれたので、「日本人向けにカタカナで書くのならタオがいい。」と答え、どうしてタオがいいのかの説明を書いて送ったら、僕のことを言語学者だと思ったらしい。僕は学者でもなんでもない。言語に詳しくもない。でも最低限、僕が説明で書いたような理屈が理解できなかったり、意識しようとしないのなら、きれいな発音は身につかないと思う。
英語のThisを読む時、カタカナ音のディスで代用する日本人が圧倒的に多い。でもネイティブの人が発音するThやiやsは日本語の50音では代用できない音だということも多くの人が知っている。自分では正確に発音できなくても、また聞き取れなくても、自分の母語発音との違いを意識することは外国語を学ぶ上で非常に重要だと思う。
そして、その違いを縮める努力をするほうがいいのに、それをしないで、発音が多少変でも通じればいいと開き直っている人も多い。僕が台湾生活をしていて感じるのは、中国語を学んでいる、すでに生活上使っている日本人の中にも、この通じればいい!という態度で日本語50音発音のままで中国語を話す人がとても多いと感じている。
妻の日本人友人に高橋さんという人がいて、周りの日本人はその人のことをガオチャオさんと呼んでいる。僕はずっと何でガオチャオと呼ばれているのかわからなかった。妻に理由を聞くと中国語読みにしているからだそうだ。僕はこれに一年以上も気が付かなかった。全然中国語発音に聞こえなかったからだ。その原因は中国語の声調(トーン)を無視して、全て平らなトーンで発音しているからだし、特に問題なのは高をGAO(ガオ)と濁音(無気有声音)で発音しているからだ。高の中国語発音は濁音ではなく、吐息が漏れないように発音する清音(無気無声音)、カオだ。日本人で中国語発音を極めようと思っていない人は吐息を出さない清音の発音(無気無声音)を日本語の濁音で代用する。無気無声音が正確に発音できないから濁音で代用していると意識しているならまだいいが、本当に濁音だと勘違いしている人も多い。
勘違いする大きな原因は中国語発音を表すローマ字表記で優勢を誇っている方式(ピンイン)では吐息が漏れないように発音する清音(無気無声音)のカオはgaoと書くからだ。吐息を激しく出す清音のカオ=kaoと区別するためだ。このgaoという綴りは日本人にとっては濁音を表す。だからつい濁音で読んでしまうのだ。以前、台湾でよく使われていた中国語ローマ字表記(ウェード式)では吐息が漏れないように発音する清音(無気無声音)のカオをgaoでなく、kaoと書き、吐息を激しく出す清音のカオはk'aoと書いていた。このローマ字表記が中国語教育の中で主流になっていたら、日本人が中国語の中の吐息が漏れないように発音する清音(無気無声音)の発音を誤解することはなかったのではと感じている。
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