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台湾料理、阿給 (á-geh : アゲッ)

 日本でも台湾でも馴染みのある食材だが、日本より台湾のほうがよく使うという食材は、厚揚げや春雨の類ではないかと思う。台湾には、厚揚げと春雨が使われ、日本人にも親しみやすい名称の大衆料理、阿給(á-geh :アゲッ)というものがある。
 阿給 (á-geh :アゲッ)は台湾新北市淡水区で有名な大衆料理で、淡水へ行ったら必ず食べるべきと言う人が多い(他の地域にも少ないがあるにはある)。油で揚げた豆腐を使った料理だが、1965年に楊鄭錦文さんという女性が売れ残った食材を無駄にしたくないことから思いついた調理法だそうだ。

阿給(á-geh :アゲッ)

 阿給 (á-geh :アゲッ)の作り方は、台湾ホーロー語で豆干糋(tāu-koaⁿ-chìⁿ :タウコアチィ)と呼ばれる干した豆腐を揚げたもの(日本の厚揚げのようなもの)の皮を切り、穴を空けてポケットのような空間を作り、そこへ、水でもどし、炒めておいた春雨を詰め込む(春雨を炒めない場合もある)。そしてタレに浸して、切り口を魚肉のすり身で塞いでから蒸し上げる。食べる時には、その店ごとに先人から伝わるオリジナルソースや台湾独特の甘辛い調味ソース、甜辣醬などをかける。

阿給 (á-geh :アゲッ)

 さて、この阿給 (á-geh :アゲッ)という日本人に親しみやすい名称は元々は、a-bú-lá-geh(アブゥラァゲッ)だったそうだ。淡水中学(現在の淡江中学)の学生が命名したらしいのだが、揚げた豆腐のことを台湾ホーロー語でa-bú-lá-geh(アブゥラァゲッ)とも言い、そして、そもそもこの言い方の由来が日本語の「油揚げ(あぶらあげ)」だったということも知っていたのであろう。でも多くの人が言いやすい略称のアゲッで呼ぶようになり、いつの間にかアゲッが定着してしまったようだ。昔はこの、携帯に便利で、一つ食べればお腹いっぱいになる阿給(á-geh :アゲッ)が淡水の埠頭で働く労働者たちの昼食としてずいぶん人気があったそうだ。

 阿給 (á-geh :アゲッ)の中に入れられる春雨は、台湾では冬粉(tang-hún :タンフン)と呼ばれている。日本の春雨が主にジャガイモなどの芋デンプンを原料にしているのに対して、台湾のものは主に緑豆(leꞌk-tāu :リェッタウ = りょくとう)を原料としている。

冬粉(tang-hún :タンフン)

 日本の春雨は割と脇役的な存在だと思う。日本では中華風の料理以外で春雨をメインに使用したものを見た記憶がない。しかし台湾では、レストランや食堂で春雨をメインにした料理を日頃よく見かける。多くの麺屋台や食堂では、麺料理の麺を春雨に換えてもらうこともできる。そして、脇役的な存在として使用されているケースも日本以上に多いと思う。日本のように鍋料理の脇役になるのはもちろん、その他の、大衆料理的な軽食や定食、弁当などにもよく脇役として使われている。

 また、台湾の豆干糋(tāu-koaⁿ-chìⁿ :タウコアチィ=台湾式厚揚げ)のように、日本でも豆腐を揚げて作る料理がいろいろある。例えば薄切りにした豆腐を油で揚げた「油揚げ」、豆腐を厚めに切って油で揚げた「厚揚げ」、豆腐に衣をまとわせて、油で揚げ、だし汁または醤油で味付けした“つゆ” をかける「揚げ出し豆腐」などである。

豆干糋(tāu-koaⁿ-chìⁿ : タウコアチィ)

 日本ではこれらの料理を毎日のように見かけたり、食べたりするものではないと思うが、台湾で豆干糋(tāu-koaⁿ-chìⁿ : タウコアチィ)は食堂、屋台での定番大衆料理として大活躍している。食堂や屋台で食事する時、麺類や肉料理、野菜、スープなどと一緒に豆干糋(tāu-koaⁿ-chìⁿ : タウコアチィ)を一皿必ず注文する人が多い。また春雨と同じく定食、弁当、家庭料理のおかずとして添えられていることも多い。

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