見出し画像

20200916(Wed)

夫の誕生日。プレゼントはいつもいつもゴルフ用品かフットサル用品で、何が欲しいか曖昧で教えてもらえない。自分の好みがしっかりしているから買っても無駄になる私好みは選ばないようにしてる。私好みで選んだものを好んで使って欲しいのは、この年齢からしたらエゴにしかないない。好きなものが定まっているのに、どうしてパートナーからもらうという事だけで大切にしなければならないのだろう。それなら2人で選んで、笑顔になる物の方がよほど良く、気持ちの理論は歳と共に見えない崖の下にいる。

けれど、1つだけ可愛い夢を教えてもらっていたのでそれだけは叶えてしまうことにした。簡単だけど、中々経験しない事をしたかったらしい。買い物中に「ケンタッキーとピザとどちらがお好み?」と夫聞くと、迷いながら前者の商品名を絞り出す。4ピースのセットを買い、会計を済ませる間にいそいそと準備。予約した商品を手に取り向かった先にはびっくりしたような、笑顔のようなそんな表情をしたケンタッキーの袋を握り締めた人がいる。それを見て私も嬉しくなって「早く帰らなきゃね。パーティーをしよう。」と笑いかける。

猫の出迎えもさながらに買ってきたチキンを開ける。「こんなに大きなチキン食べていいの?」と少年のような笑顔を見せて「綺麗に食べるのなんて無理だけど、美味しいからいいんだよね」と口と手を油塗れにしながら呟く。もっと食べるのが下手くそな私はティッシュを何枚も使って、以前テレビで上手く食べる方法を見たなと思い、調べようとした手がベタベタだったのでやめた。そんなの無くても楽しくて美味しければいいのだ。

食べ終わった後、ソワソワする夫を横目にピンクの箱を開ける。ドライアイスがフワッと私の手を撫でる。ひんやりした空気の中取り出した大きなアイスケーキに目を輝かせる歳上の男の人は、まるで少年にしか見えない笑顔を私に向ける。

「アイスクリームケーキで誕生日を祝われてみたい」と昔から言われていたけれど、世の中には美味しいケーキがそこら中に溢れていて、どちらかというと特別に新しいものを2人で食べたいと思っていた。アイスクリームケーキなんて子供が食べるものだと私の中で凝り固まったモノが邪魔をして、何年も夢を叶えず銀座の、新宿の、人気のケーキを振る舞っていた。けれど、今年はコレだなと思い動いてみて正解だった。ドラえもんが大好きな人なので、ドラえもんモデルを購入した。可愛くて見惚れていながらどんどんアイスは溶けていく。「なんだかかわいそう。でも、本当にこれを食べてみたかったんだ。」と口いっぱい頬張り、ひと口食べるたびに「美味しいね」と笑う。

特別に高いプレゼントはいつか欲しいものが出来たら上げたいと思うけど、長年温めてきた冷たい夢を叶えられて良かったと思う。特別な日が特別になった。

お誕生日おめでとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?