パニックという言葉の由来は?

パニックという言葉は、ギリシャ神話に登場する「パン」という半獣神の名に由来する。パンは、額に角を生やし、足にはヤギの蹄がある。もともとは、ギリシャのアルカディア地方で、家畜を飼う牧人たちの神であった。途方もない色好みで、美少年や美女を手当たりしだいに漁るという精力的な神である。

彼は、パンパイプという葦笛を吹き、歌と踊りと酒が大好きな陽気な神である。その神に好きなものがもうひとつあって、それが昼寝である。牧人でも家畜でも、何かの拍子で、彼の昼寝を邪魔するようなことがあろうものなら、怒り狂ったパンは、大きな音を立てて、人や動物に言い知れぬ恐れを与えるという。

そうすると、人びとは恐怖にかられて、親は子を忘れ、子は親を忘れて、理性や判断力をかなぐり捨てて逃げまどう。一般に、非理性的で、異常な集団的な逃走行動を、パニックと呼ぶようになったのはそんな理由からである。

広瀬弘忠さん著
人はなぜ逃げおくれるのか
ー災害の心理学 より



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