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七月某日 スオミ

学部1年の秋、友人たちと北欧を訪ねた。
短い人生のなかでは、最も思い出深い旅行だった。
もちろん、旅路であったことをすべて覚えてはいない。同じ体験をしていても、友人と私とそれぞれ違うものを見ていたと思う。それでも、彼らの中にはなんらかの思い出が深く刻まれていたはずだ。

あれから3年を経たいま、あの時の仲間たちはみな違う道へと一歩踏み出そうとしている。それでも全員、北欧の旅で手に入れた「お土産」を引っ提げて人生を形作ろうとしている。

元々バラバラの人間たちが大学を起点に集い、またもとのように分かれて自分の居場所を見つけてゆく。偶然出会ったとしか言えない学友たちは、社会のあちらこちらで彼ららしく生きてゆくのだろう。
個別の道は交差こそすれど、一つに束ねられることは決してない。
ただ、運よく交差できたタイミングで、なにかしらの体験を共有して、それを胸に抱いて今を生きている仲間がいること。なんて素敵でワクワクすることなんだろうと、思う。

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