日傘をさす女

それは、僕が、江ノ島の隠れ家的な店にアルバイトとして勤めていた時の話である。

ホールを任せられた僕は、接客が好きで毎日が楽しかった。

しかし、あの女が現れてからは店の雰囲気がガラッと変化した。

その女は店の中でも日傘を指す女だった。

店長に僕が報告すると店長はただ震えるだけだった。

「お客様。日傘を閉じてはくれませんか?他のお客様のご迷惑となります。」

「あなた、新人ね。」

と女は顔を見せた。

美しい。僕は、イチコロだった。


数日後、僕は、また日傘をさ女を接客した。

「あなた、わたしが見えるの?」

「も、もちろん見えます。」

僕は、もう女の虜だった。

それからは、他に客が来なくなり店長は失踪した…。

後から聞いた話しだが日傘を指す女は店長の元恋人で数年前に死んでいた。

しかし僕は、今でもお店を続けている。

日傘を指す女は毎晩のように来てくれる。

ガラガラなお店で…。

僕は、日傘を指す女が好きで仕方なかった。

僕は、日に日に、痩せていった。


日傘を指す女は突然来なくなり店長が戻ってきた。

「お前、老人みたいだな。」

と店長に言われて鏡を見た。

確かにシミとシワだらけで髪の毛は白髪になっていた。

でも、僕は、日傘を指す女がいつか来てくれると信じている。

だって、僕は、日傘を指す女が好きだから…。

今は、奇妙な店として知られている。

もちろん、幽霊が出る店として。

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