暗黒自動販売機
真夜中の自動販売機の噂が、学校で流れた。
わたしの住む団地の向かい側に古ぼけたスーパーマーケットがある。
そのスーパーマーケットの前に設置されている四台の自動販売機の一つが、噂の自動販売機なのだ。
真夜中に、その自動販売機でオレンジジュースを買うと記憶喪失になるとか、廃人になって最後は自殺するという事だった。
わたしも友達も信じなかった。
ある日、仲の良い先輩が度胸試しとばかりに友達数人で、真夜中に噂の自動販売機でオレンジジュースを買いに行った。
数日間が過ぎたある日、先輩に異変が起きた。
先輩は、部活中いつものようにわたしと雑談していた。
いきなり先輩の顔が歪み、別人のような顔になったかと思うと、何やら呪文のようなものを叫びながら体育館から飛び出して行った。
その日、先輩は帰って来なかった。
先輩が見つかったのは、それから一週間が経過した頃だった。先輩は変わり果てた姿で、発見された。
先輩は、しばらく入院する事になった。
そして…先輩は数日後に死んだ。
病院のベッドの上で目をかっと見開いて、息を引き取っていた。
先輩の目は、恐怖で真っ赤に充血していたらしい。
先輩と一緒にオレンジジュースを買った人はいたのに、先輩だけが死んだ。
わたしには理由がわかっていた。
何故、先輩だけが死んだのか。
それは、先輩が人を殺した事があるからだと思う。先輩は、幼い頃にまだ一歳にも満たない弟を窒息死させていた。
それは、先輩が人を殺した事があるからだと思う。先輩は、幼い頃にまだ一歳にも満たない弟を窒息死させていた。
それを、先輩は死んだ時の顔のようではなく、笑顔でわたしに話していた。
わたしは、団地の窓から自動販売機を見る。
わたしはオレンジジュースを買わない。
何故かって?それは、わたしも人を殺した事があるから…。
わたしの、殺した人の目は、少しだけ赤かった気がする。
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