見出し画像

もうひとつの入学保護者説明会

歌を聴いてください。今の1年生が歌っています。曲名は「はじめの一歩」です。皆さんのお子さんもこの4月8日に小学校での「はじめの一歩」を経験することになります。今は、期待と不安でいっぱいでしょう。

かのダーウィンが、「生き残るのは強いものではない。変化するものが生き残るのだ。」と言っています。彼の説によるならば、この4月に1年生になるお子さんには、「変化すること」が求められています。

なぜなら、遊び中心の生活から勉強中心の生活へと環境が大きく変わるからです。当然、時間割による日課など、生活のリズムも大きく変わります。

こうした諸々の変化に6才の子どもが対応し、順応して自分自身を変えて行くというのは、並大抵のことではありません。子どもにとって「はじめの一歩」は実は大変なことなのです。今の1年生は、ほぼ1年を経過して、押しも押されもせぬ立派な小学生ですが、入学当初はやはり大変だったと思います。

彼らの今があるのは保護者の皆さんの支えがあればこそです。教師にとっては、1年生を担任することは望外の喜びですが、その船出には相当な神経を使います。

入学当初は慣らし運転をします。いきなり勉強を始めるわけではありません。学校生活の仕方をあれこれ学びながら、学校に溶け込めるようにして行きます。でも、これだけでは足りません。皆さんの支えがどうしても必要です。

そこで、これから4つのお願いをします。

お願いその1

「学年だより」でお願いする学習用具の準備は確実に行ってください。入学当初は相当な緊張感の中にありますから、一つでも揃っていないと、それだけで不安になり、それがきっかけで学校嫌いになることもあります。こうしたことは周りの大人が気を付ければ容易に防げることです。

お願いその2

友達とのちょっとしたトラブルが原因で学校嫌いになることもあります。もし、お子さんに気になる変化があったら、どんなことでも担任に知らせてください。
子ども達はトラブルに遭遇した時、うまく言葉で表現できないことがあるので、言葉を補って事実を掴む必要があります。トラブルの解消は早ければ早いほどいいので、担任に遠慮は禁物です。「親と子と先生と」。これが教育の三位一体です。

この三者の関係が相思相愛の時、教育の成果を得ることができます。担任と連携してお子さんの成長を促して行きましょう。その為には、習慣化も見逃せません。

お願いその3

卒業生の保護者にお会いすると異口同音に、「小学校の段階でよく見てあげれば良かった。習慣が決め手ですね。」とおっしゃいます。受験を控えたお子さんをお持ちのお母さんはより深刻です。見るなら今です。中学生は相手してくれません。

「習慣」に関することを元楽天監督の故野村克也氏は東北のある僧侶から聞いた言葉を座右の銘にしていたそうです。
「考えが変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる。」
頭にとって良い習慣。心にとって良い習慣。体にとって良い習慣。
良い習慣で過ごす1年とそうでない1年とでは明らかに格差が生じます。お子さんの入学を機に良い習慣化にチャレンジしてみてはどうでしょうか。

お願いその4に行く前に、「考えが変わる」ということを具体的に示す逸話があるので紹介しておきます。
これは「7つの習慣」という本に書かれていました。

「ニューヨークでの出来事です。男性が電車に乗っていると、父親と男の子二人の親子連れが乗り込んで来ました。しばらくして男の子たちは動き回って騒ぎ始めました。父親は注意をしません。それを見ていた男性は、見て見ぬ振りをする父親に腹をたて、席を立って、父親に子ども達を注意するように強く求めました。すると父親が言いました。『ついさっき母親が亡くなったので、子ども達も混乱しているのだと思います』と。これを聞いた男性は、こう言いました。
『私にできることはありませんか』と。」

お願いその4

保護者の皆さん、健康でいてください。お子さんのためです。担任も同様に健康でなければなりません。そうでないと教育が曇ります。教育の要である「愛」が届きにくくなります。それでなくとも愛を伝えるのは至難の業なのですから。愛していることと愛が伝わっていることはイコールではありません。

お子さんを愛していてもその愛がちゃんと伝わっているとは限りません。以前のことですが、「きのう、お母さんにおこられた。」
「何で怒られたの?」と聞くと、「わからない。」と答えるお子さんがいました。お母さんにとっては愛の発露だったと思いますが、お子さんにとっては災難のなにものでもありません。嵐が過ぎ去るのをじっと我慢して待つのみです。そこに親の愛を感じるこはなく、ただ怒られたという嫌な思いだけが残ります。こうしたことは教師にもありがちなことです。お互い気をつけなければなりません。そうならないようにするには、共感する心が必要です。お子さんの思いを無視して自分の思いだけをお子さんにぶつけて問題の解決を図ろうとしてもうまくいきません。もし、お子さんに悲しみや怒りがある時は、共感してその悲しみや怒りを沈めてあげるのが先決です。

諭すのはその後でゆっくりやればいいのです。幼児の心の容量はとても少ないので、悲しみや怒りがあるとすぐいっぱいになって、何も受け入れられません。落ち着きを取り戻し、平常心になったら、こちらの思いを伝えるようにしましょう。

もし、心当たりのある方は、今日からあなたの愛がお子さんにちゃんと伝わるように努力して、お子さんの「はじめの一歩」の手助けをしてあげてください。私たち教師もお子さんを支えて行きます。

(See you)